株式会社NEXT81 CEO 田中ブラッドリー
YAICHIで日本ブランドを世界に届ける
「日本と世界を、ひとつの商圏に。」をミッションに掲げるNEXT81は、正真正銘の日本製品のみを提供する日本特化型越境EC(電子商取引)を中核に、海外進出を目指す企業をトータルで支援する。日本の地域企業、訪日外国人客(インバウンド)、海外消費者が抱える課題をYAICHIというプラットフォームで解決する。田中ブラッドリーCEOは「高品質な日本製品への信頼は高い。日本ブランドのみを扱うYAICHIの認知度を高め、日本の魅力を世界に届ける」と意欲を見せる。
- ――どんなビジネスモデルを構築したのか
- 創業者兼社長のエルマス・ローは2019年にNEXT81を日本と香港に設立し、20年に日本製品を香港の大手小売りチェーンに販売する卸売業務を始めた。香港人なので香港での売り方を熟知している。香港人は製品を買うとき、「本物か偽物か」を確認する。しかも日本ブランドを非常に好むので、YAICHIは「本物の日本製しか扱わない」という立ち位置を明確にした。これが奏功し、買い手も売り手も、そして我々も大喜びできるビジネスモデルを確立、「安心して買える」という信頼を得るようになった。
- ――日本経済は停滞が続く。再び成長軌道に乗るためには何が必要か
- 人口減少で内需は低迷する。このため日本ブランドを歓迎する海外需要を取り込む必要があるが、日本は世界で最も海外消費者にモノを売りにくい国になっている。言語、物流、決済、法規制の壁があって海外進出できない。特に地域に根差す企業は労働力減少や販路不足で世界につながる手段すら持たない。この課題をYAICHIで解決する。これにより海外マネーを呼び込むことができる。
- ――具体的には
- YAICHIは越境EC×手ぶら観光×越境店舗展開の統合インフラだ。越境ECの「YAICHIマーケットプレイス」は、30万点超の日本製品を海外消費者に提供している。「日本と同価格」をコンセプトに展開しており、25年3月期のGMV(流通取引総額)は20億円弱を達成した。現状は香港と英国だけだが、近く台湾にも進出する。
- ――気になるのが手ぶら観光だ
- インバウンドが購入した雑貨や土産などを海外の自宅に届ける配送サービスで、「YAICHIトラベル」と呼んでいる。全国ネットワークをもつヤマト運輸と組んでおり、日本語がわからない、送り方もわからないというインバウンドがヤマトの営業所やセブン-イレブン、ファミリーマートの店舗に荷物を持って行くと、ヤマトが集荷して香港、英国向けにドアツードアで配送してくれる。インバウンドは飛行機内への持ち込み規制があるため、スーツケースに入る量しか買えない。このサービスを使えば、その制限がなくなり、欲しいモノを好きなだけ買える。しかも手ぶらで観光やショッピングを楽しめるし、帰国時に大きな荷物を抱えなくてすむ。
- ――越境店舗展開は
- 海外へ実店舗を出すには多くのハードルがある。「YAICHI実店舗」は店舗探しからディベロッパーとの交渉、店舗スタッフの確保、顧客対応まで出店にかかる業務をワンストップで代行する。これにより進出する企業は、現地で支持される高品質な製品開発に集中できる。25年7月に香港に進出した3COINS(スリーコインズ)の出店を手伝った。かつて自力で中国・上海に店舗をオープンしたが、失敗した経験を持つ。今回は我々がスリーコインズから製品を買って売るという仕組みを取ったが、香港の法規制や商習慣、消費者の嗜好を知る我々とタッグを組んだことで大成功を収めた。日本にいながら海外展開できるので、海外進出への悩みや興味を持つ小売業者の関心は高いはずだ。これを機にパートナーを増やしていく。
- ――業績は伸びているのか
- 24年3月期(前々期)から25年3月期(前期)は約2.5倍のGMVの成長を達成し、20億円弱規模のGMVに到達。26年3月期(今期)以降も、同等以上の成長を見込む。前期は香港のみでの事業展開だったが、今期は英国が加わり、台湾も立ち上がることから売り上げは急増する。さらにシンガポールのほか、ドバイや英国、カナダにも参入していく。
- ――越境EC市場は競争も激しいが、勝算は
- 日本ブランドへの需要は旺盛だ。しかし購入できる販売チャンネルがなかったり、チャンネルがあっても価格が数倍に膨らんだりする。消費者に届けるまでに中間マージンが重なるためだ。我々は卸売業務で使うコンテナの空きスペースを利用して運ぶので価格を抑えられる。競合するEC業者は多様な製品を扱っているが、品質保証が不十分で偽物・非正規品が含まれるリスクがある。我々は100%日本正規品のみを取り扱っており、本物を日本価格と同等で届けられるという圧倒的な優位性をもつ。YAICHIは価値ある日本ブランドをそろえる越境ECという認知度を高めることで世界進出を目指す。
- ――どのようにしてNEXT81にかかわるようになったのか
- CEOに就任したのは25年8月。米国での投資銀行や投資ファンドを経て米国スタートアップの事業責任者、国内AIスタートアップのCFO兼CSOなどに就いた。こうした経験を積む中で、深く経営に携わりたいと思うようになった。ゼロからスタートの起業家なのか、事業承継により経営者になるのか模索していたとき、NEXT81のエルマスに出会った。ゼロイチは自分のスタイルではなく、攻めの経営を通して会社を大きくするほうが得意なのでCEOを引き受けた。エルマスの「高品質な日本製品を海外で売る」というビジネスモデルは面白いと思ったのも就任の決め手となった。
田中 ブラッドリー(たなか・ぶらっどりー)
株式会社NEXT81 CEO
日本発の越境EC/海外進出プラットフォーム「YAICHI」を通じ、日本の高品質な製品と文化を世界へ届ける事業を推進。前職のストックマーク株式会社では、CFO兼CSOとして、大手PEファンドから45億円のシリーズD資金調達を主導。キャリア初期は米Citigroupパロアルト支店の投資銀行部門に所属し、米国テック企業のM&AやNASDAQ上場支援に従事。その後、米系投資ファンドの太洋パシフィックパートナーズ(シアトル本社)にて上場株投資、バイアウト、アクティビスト投資を投資家として実行。シリコンバレーでの起業経験を経て、日米のスタートアップで経営戦略や資金調達を統括後、2025年8月より現職。コーネル大学MBA、チュレーン大学卒。MIT xProにてプログラミング講座受講。京都市出身。