ABC FARM 合同会社 代表   小林太志

フィリピン・ダバオでバナメイエビの陸上養殖 ~ブランド化で日本進出・世界展開目指す~

食料不足が懸念されるなか、注目を集めるのが高タンパク・低カロリーのバナメイエビの養殖だ。フィリピン・ダバオで持続可能な陸上養殖を始めたABC FARMは成魚まで2か月という世界最速を武器に、フィリピンを皮切りに日本進出、世界展開を視野に入れる。この一環として、フランチャイズ事業に加盟する日本企業の募集も始めた。25年9月に代表に就任した小林太志氏は「安全・安心でおいしい。品質もそん色ないのでブランド化を図る」とエビ養殖事業の成功を疑わない。

――エビの陸上養殖に取り組む理由は
世界的な人口増加や食生活の変化によりタンパク質の需要は高まるばかりで、従来の畜産システムでは持続可能な供給が追いつかなくなるといわれている。いわゆるタンパク質クライシスだ。解消するには植物性タンパク質や培養肉、昆虫食といった新たなタンパク資源の開発が欠かせないが、我々は高タンパク・低カロリーのエビ養殖に注目。2017年にファウンダーの丸山聖司が琉球大学にタンパク質クライシス対応に最適なエビ養殖の共同研究を持ち掛けた。同大が持つ世界最高水準の技術を生かしてローコスト・最短スピード・高品質のエビ養殖を実現するためだ。同大発技術でイノベーションを起こして世界に養殖エビを届ける。
――ダバオ事業の現状は
産学連携により開発したノウハウをミンダナオ島ダバオに移転して18年からエビの実証実験を開始。4.5ヘクタールの実験場に直径30メートルの円形養殖場を20池(プール)整備し生産実験を繰り返した。ダバオは海水温・水質がエビ養殖に適しており育てやすい。ウルトラファインバブルのノズルを研究開発することで海水の完全循環と抗ウイルス効果に加え、最適な養殖密度と年6回収穫という生産効率を実現した。さらにエビの排泄物を飼料化することで農薬や化学肥料を使わずに育てることができる。循環式のため病気になりにくいからだ。ダバオでの陸上養殖は思い描いたアプローチに最適と判断、25年1月から本格稼働を開始、フィリピン国内への出荷を始めた。
――日本進出が待ち遠しいが
1年を通して安定供給できるのが強みで、能力的には20池で年産36トンが可能だ。ただ供給力が少ないうえ、現在日本で流通している一般的なバナメイエビと同じ土俵で勝負するのは価格的に難しい。味や品質では戦っていける勝算があるので、ブランド戦略を策定しながら生産能力を引き上げていき27年春には日本に進出したい。そのためにもフランチャイズ事業に乗り出すことを決めた。
――募集を始めたフランチャイズ事業とは
一緒に歩む仲間を集めたいので私の代表就任を機に募集を始めた。加盟するとフィリピンに現地法人を設立し、現地人材を採用しダバオで養殖事業を行う。法人開設や人材の確保・教育・指導は我々が支援し、生産したエビはすべて買い取るので日本に居ながら安心して高収益事業を実現できる。サステナブルな養殖事業であり、現地雇用も生むのでSDGs(持続可能な開発目標)経営に取り組んでいることをアピールでき、企業イメージの向上、新たなビジネスチャンスの獲得につなげられる。初期投資は1800万円(税抜き)と開業後のコスト(約200万円)がかかるが、初期投資は3.5年で回収できるとみている。
――募集する企業数は
現在の養殖池に隣接する形で24ヘクタールの土地を購入した。日本進出に備えて80池を増設中で、第1期として40池限定で募集している。1社あたり2池だと20社になる。その後に残り40池を対象に第2期を始める。エビ養殖に対する期待は大きく、評価も高い。問い合わせもあり、手応えを感じている。元スノーボード選手で06年開催のトリノオリンピックに出場した成田童夢氏が同事業への加盟を決めてくれた。同氏は「ABC FARMの技術と理念に共感し、質の高いエビを育て地域社会の発展に貢献できれば」とコメントしてくれた。私も大変心強く感じている。
握手をする小林代表と成田童夢氏

握手をする小林代表と成田童夢氏

――海外展開については
ダバオ以外の土地での陸上養殖の可能性について調査している。その一つがモンゴルで、25年3月にモンゴル生命科学大学と琉球大学との間で共同研究協定を締結。冬は寒く、海もないモンゴルでの共同研究では餌のローコスト化(食肉残差の活用など)のほか、「一番過酷な環境で陸上養殖を成功させる」という意図から冬の寒さに対応するため火力発電所の廃熱利用などに取り組んでいる。モンゴルでの陸上養殖にめどが立てば、灼熱のドバイでも可能性は開けるとみている。
――小林代表は異色のキャリアの持ち主だ
立教大学からJR東日本を経て、07年にドラフト1位でプロ野球「横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)」に入団した。7年間のプロ生活を終えた後、タカラレーベン勤務、沖縄の野球独立リーグ球団社長を歴任した。このときに丸山と出会いエビ養殖事業に掛けることにした。子供たちもエビは大好きで、タンパク質を摂取するのに安全・安心なエビを食べさせたい。おいしくて安全・安心には自信をもっている。品質もそん色ないというより上回ると自負しており、ぜひともブランドエビに育てる。

小林 太志(こばやし・ふとし)

立教大学を卒業後、東日本旅客鉄道株式会社に入社。

都市対抗に2年連続で出場し、ベスト4、準優勝に貢献。その後、2007年大学社会人ドラフトにて1位指名で横浜ベイスターズに入団。現役通算13勝。

2014年に戦力外通告を受ける。2015年にプロ野球選手会のセカンドキャリアサポートを利用し、株式会社タカラレーベンに入社。経営企画室に配属になり、IR、PR業務に従事。その後、沖縄の独立球団琉球ブルーオーシャンズの立ち上げ、経営に参画。

2019年から株式会社TREASURYに入社し、人材事業、管理部門を担当。2024年オーナーの丸山氏と出会い、その理念に共感して事業構想に参加。

2025年ABC FARM合同会社の立ち上げに参画。

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