株式会社aubeBiz 代表取締役 酒井 晶子
フルリモートで働くリモートワーカーを結集。人手不足で悩む企業とつなぐ

全員がフルリモートで働くaubeBiz(オーブ・ビズ)は、人材不足で悩む企業からの秘書、経理、制作などの業務依頼にワンストップで応えるビジネスを展開する。様々なスキルを持つ選りすぐりのメンバーがオンラインでサポートする。地方のリモートワーカーと企業をつなげる「地方創生テレワーク事業」にも力を入れる。酒井晶子代表取締役は「育児や介護などで出社できない人は少なくない。リモートワークで労働力不足という社会課題を解決する」と意気込みを見せる。
- ――リモートワークでの働き方にこだわる理由は
- 出社して働くことは素晴らしいが、できない人も驚くほど多い。外で働けないがリモートワークなら大丈夫という人に着目した。出社不要で好きな場所で働けるリモートワークなら小さな子供がいても、看病や介護をしながらでも、また地方や海外在住でも仕事を行える。人手不足で困っている企業と、自由に働きたいワーカーの双方の課題を解決できるのがリモートワークといえる。そこで2011年に全員がフルリモートの組織を構築し、オンラインで企業や経営者を支援する秘書代行サービスを開始。企業の間接部門を請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などに業務を広げていき、22年8月にオーブ・ビズを立ち上げた。
- ――11年当時、リモートワークへの理解を得るのは難しかったのでは
- 「やっぱりリアル(対面)で会わないと」「ちゃんと仕事してくれるのか不安だ。信頼できない」といわれることがたびたびあった。しかし、リアルで行われる業務の多くがリモートワークでも実現できると考え、働く場所が会社以外というだけで、他はリアルと変わらない組織を作ることにこだわった。リモートワークに特化した仕組みや、採用・育成・マネジメント手法を構築してきた。新型コロナウイルス感染拡大によりオンライン会議「Zoom」などが増え、リモートワークという働き方が受け入れられるようになった。
- ――提供している事業は
- My Back Office(マイ・バックオフィス)サービス事業といって、事務や秘書、経理など必要とする業務の依頼に対しワンストップで対応する。様々なスキルを持つメンバーを厳選しビジネスをサポートするので、企業は組織を持たなくても頼もしいバックオフィスを持てる。しかも自分で採用・育成しなくてもいいので人件費を抑制でき、離職の心配もない。また業務内容や状況に応じてメンバーを追加したり、入れ替えたりすることもできる。
- ――リモートワーカーは地方在住者にとって使いやすい働き方だ。石破茂首相の「地方創生2.0」も事業の追い風になっているのでは
- 昨年から地方創生テレワーク事業を始めた。狙いは地方に住むリモートワーカーの育成だ。同時に、地方はリモートワークが普及しておらず、それだけ警戒心が強い中で、地域企業に導入を促すことを目指す。すでに宮城県加美町、山口県下関市と萩市、千葉市などで講座を開いた。自治体以外では、神奈川県小田原市の湘南ベルマーレフットサルクラブとパソナJOBHUBとのコラボでテレワーク講座を開講した。入門講座からスキルアップ講座、フリーランサー向けビジネススキルアップ講座、テレワーカー希望者とのビジネスマッチングイベントなどを実施した。
- ――成果は出ているのか
- 24年に開催した下関市豊北地区の講座では8人のリモートワーカーが誕生した。下関市では同12月にも菊川町で2人が誕生し、エントリー準備中が約10人いる。このほかにも萩市、千葉県などで総勢約20人のリモートワーカーが地方創生事業から生まれた。
- ――こうした事業を支える在籍メンバーについて
- 在籍メンバーは約100人、このうち常時稼働が約70人で、研修中・待機中が約20人、休職中が約10人。子育て中の人が多く、30~50代の女性がほぼ8割を占める。スキルやコミュニケーション能力はもちろん、エンゲージメントも高いメンバーが次々と加わる。ついつい深夜まで頑張って働くメンバーも多く、健康管理に気を使うほどだ。一方で、離職率は5%未満という非常に仲が良い組織となっており、メンバー同士が情報交換するための交流も盛んだ。
- ――それだけ採用も厳しいのでは
- 採用に関するポリシーとして「面接はしない」。リモートワーカーの中にはリアルが苦手な人がいる。しかし必要なのは黙々とミスなく仕事をこなすことに尽きる。つまりアウトプットの質、言い換えると顧客が求める質に応えることができるかどうかだ。それは応募書類を見れば分かる。本気で働きたい人しか書けないほどきっちりと書いてもらう。人手不足でワーカーへの需要があるとはいえ、入り口(採用)を低くすると入りやすくなり辞めやすくなる。100人採用より本気の1人にこだわる。採用されなかった人は、メンバーの勉強会・交流会であるオンラインコミュニティー「ONE with」で学べる。250人が参加しており、必要なスキルやコミュニケーション能力などを高めながら採用機会を求めて待っている感じだ。
- ――業績は
- 人手不足で困っている企業からの依頼も多く、売り上げは順調に増えている。コロナ禍以降は同業他社が「雨後の筍」のように参入し、フリーのリモートワーカーも増えたが、我々はオンライン化が進んでいない中小企業にリモートワークの有効性を訴えていく。リモートワークなら働ける人は多いので、その人に適したクライアントを増やす。ワンストップでリモートワーカーと人手不足企業をつなぐプラットフォーマーになる。
酒井晶子(さかい あきこ)
株式会社aubeBiz 代表取締役
兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。
2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。
2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。
著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。