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株式会社M&Aコンサルティング 代表取締役   髙野 健二

顧客に寄り添うアドバイス徹底

M&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務を手掛けるM&Aコンサルティングは創業以来、クライアント(顧客)の立場にたったコンサルティングにこだわってきた。このため、売り手と買い手の双方の企業の間に入ってM&Aの成立をサポートする仲介には手を出さず、どちらか一方のアドバイザーとして顧客に寄り添うスタンスでサービスを提供してきた。髙野健二代表取締役は「徹底した顧客ファーストで企業成長をサポートする」と言い切る。

――最近のM&A動向について
世代交代は多いが、後継者難による事業承継ニーズは山を越えつつある。すでに次の世代に替わった企業は多いことに加え、若い創業者は(投資資本を回収する)出口戦略としてM&Aによる売却を考える傾向にあるためだ。IPO(新規株式公開)より多くなっている。また最近は外資からの依頼も増えている。円安で日本企業は買い時と判断しているからだ。
――M&Aのアドバイザリー業務を手掛ける同業は多いが、他社との違いは
キャッチフレーズとして『M&Aを中心とした企業戦略のパートナー』を掲げている。M&Aを検討している企業から相談や依頼を受けても無理に応えるつもりはない。企業を右から左に持っていけばいいわけではなく、例えば文化が合わないと判断したら『(顧客の)企業成長につながらない』とはっきり伝える。顧客ファーストを徹底することで顧客の信頼を獲得し、長く付き合うことが第一と考えているからで、我々のビジネススタンスといえる。
――だから売り手と買い手の双方につく仲介はやらない
仲介とは、売り手側と買い手側の双方に入ってM&Aの成立を支援するわけだが、売り手は高く売りたいし、買い手は安く買いたいわけで、利益相反の恐れがある。双方の仲介を手掛けるというのは日本独特で、欧米では手掛けないのが常識だ。
――(M&A 成立後の統合プロセスを意味する)PMIも重視する
M&Aの成立がゴールで、仕事は終わったとするアドバイザーは少なくない。しかし、契約が結ばれて『おめでとう』といって請求書を渡しておしまいではない。特に買い手にとって、M&A成立後が本番であり企業成長に向けたスタートだ。我々は逃げずに継続的に手伝う。私はもともと、売って買ってのディールを手伝って成功報酬をもらうより、M&Aが成立してから成長軌道にうまく乗るまでのサポート事業、すなわちPMIに興味があった。企業は失敗リスクを減らせるので信頼を得られる。言い換えると顧客獲得につながるわけだ。
――創業は2016年7月。顧客は順調に増えているのか
顧客に寄り添う戦略が支持されており、顧客から紹介されるケースも少なくない。長く付き合えば付き合うほど顧客企業の内部状況が分かり、それだけ適切な提案も行える。それが認められているからで、例えば家電量販大手のノジマとは経営戦略担当の執行役、監査役としてM&A(PMIを含む)を任された。今でも非常勤として関係が続いている。
――長く付き合う秘訣は
継続的にアドバイザリーを務めるため、4年前から固定報酬制度を導入している。今では顧客のおよそ半数が固定報酬制を受け入れている。腰を据えて長く付き合いできるからで、M&A以外の例えば経営戦略についてコンサルを求めるのに有効といえる。もちろん、従来通りの成功報酬を望む企業もあるが、完全な固定報酬のほか、成功報酬とのハイブリッド型も用意した。このハイブリッド型を選ぶ企業が多い。
――成功報酬のほうが魅力的なのでは
現状の報酬体系では、契約1年後にM&Aがまとまった場合、確かに成功報酬型のほうが高い。私の煩悩との戦いでもあるが、成功報酬型が頭にちらつくし、成立をせかしたくもなる。お金儲けを考えるなら、大手コンサルティング会社のように、人を雇いM&A仲介件数を増やすやり方が正解だ。しかし『顧客のためなのか』と自問自答。顧客ファーストの考えから、結果的には顧客に納得いくまで考えてもらうようにしている。
――M&Aを成功に導くために必要なことは
M&Aは、タネ(付き合い開始)をまいて芽が出て刈り取る(買収成立)まで2~3年かかる。M&Aを成功に導くため、社長が大切にしていることを聞く。価格が基本(ベース)となるが、異なる文化を持つ企業と統合するので、被買収企業の従業員の活用など条件が大切になる。買収企業が被買収企業に対して、自社の意向や方針を一方的に押し付けたりすると統合は失敗する。シナジー効果を発揮するため、互いにきちんと言い合える関係づくりが欠かせない。
――M&Aの成功を信じて疑わない企業も多いのでは
その企業にとってM&Aの目的にふさわしくないと判断したら、躊躇なく交渉途中で中断したり、他のスキームを勧めたりする。また最初は小規模の案件を勧める。失敗しても経営に与える影響が少ないからで、異文化の企業をマネジメントできるのは、買い手の経営トップでも初めての経験になるので難しい。
――今後の事業展開については
M&A業務は面白いし、楽しい。目標は長く続けることで、75歳(今は53歳)までやりたい。そのために引き出しを増やす。顧客企業のトップに会って、お手伝いすることが大切になる。同時に、M&Aに興味、関心を持つ人が増えてきたので、業界発展のために貢献したい。この業界は参入障壁は低いが、継続して仕事を続けるのは難しい。慣れずに1年もたたずに辞める人も多い。このため培ってきたノウハウを教えるし、私と同じ志を持った若者なら正社員として雇いたい。将来独立しても構わない。仲間たちと緩いネットワークを構築し、情報交換の機会が増えればいい。M&Aアドバイザリーに必要なのは情報であり、ネットワークを生かして仕事をする世界だ。
――そもそも、M&Aアドバイザリーの仕事を始めた理由は
メーカー勤務として社会人生活を始めたが、入社1年目から出向だった。しかも入社した企業が買収した企業で、おかしいと思いながら断るわけにもいかずサラリーマンの弱みを痛感した。手に職をつけるべきだと思い、公認会計士の資格を取得した。その後、監査法人で経験を積み、専門商社に移った。右から左に会社を売り買いする仕事のイメージがわかなかったためだが、ここではM&Aプロジェクトを任され、デューデリジェンス(目利き)から契約、PMIまで経験を積んだ。
――出向経験がビジネスモデルづくりに生かされている
右から左のM&A案件を選ばず、腰を落ち着けて取り組むM&Aに舵を切ったのは、そんな経験があったからかもしれない。実際、「こんな会社を買うの?」といった事例も少なくなく、これが原因でおかしくなった企業もある。長く付き合って、顧客にとって最適なM&Aを手伝いたいとの思いは強い。
髙野 健二(たかの・けんじ)
株式会社M&Aコンサルティング 代表取締役
BIG4メンバーファームで上場企業グループ等の会計監査、株式公開準備、買収監査(デューデリジェンス)、株価評価等のプロジェクトに参画。
その後、東証一部上場の専門商社やJASDAQ上場流通企業などのM&A担当・役員・顧問としてM&Aの最前線での経験を積み重ね、2016年に株式会社M&Aコンサルティングを設立。細くとも長く現役を続けることが目標。

【主な役職】
日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長(2009年度)、同委員会副委員長(2010年度)および同会M&A業務支援プロジェクトチーム構成員長
ゲンダイエージェンシー株式会社(東証スタンダード)監査役(現任)、株式会社ノジマ(東証プライム)執行役経営戦略グループ長(2007.6~2008.6)

Webサイト: https://ma-consulting-japan.com/

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