合同会社ジーフロッグ 代表社員   木村 賢嗣

日本語学校を運営、日本への留学・就労を目指すミャンマー人材を育成

ミャンマーに特化して日本語教育に取り組む合同会社ジーフロッグが事業を本格始動する。新型コロナウイルスの世界的流行が収まりウィズコロナ時代に移行したことを受け、学習機会を失った学校での授業再開に加え、新たな拠点整備にも乗り出した。これにより日本への留学・就職を目指すミャンマー人材の育成事業を軌道に乗せる。木村賢嗣代表社員は「日本語を学べる機会を増やすことで、多くの若者を安全な日本に送り出す」と意気込む。

――親日国ミャンマーでは日本語教育が盛んと聞く
ヤンゴン市には民間の日本語学校が約300あるという。2年前の2021年1月に起こった軍事クーデターで危険を感じたり、仕事や学校を失ったりした多くのミャンマー人が日本行きを希望している。このため日本語を勉強したい人は増えており、日本語学校はどこも大忙しだ。
――ジーフロッグが運営する日本語学校も新型コロナ禍やクーデターの影響を受けたのでは
ヤンゴン市に20年4月の開校を目指して準備していたが、新型コロナの流行が始まり延期を余儀なくされた。夏まで我慢して8月にいったん開校したが、直後に新型コロナ感染が急拡大して休校(その後に廃校)に追い込まれた。22年3月から日本への入国規制が緩和され、来日が止められていた留学生や技能実習生らが動き出したので、それを見極めたうえで5月から学校を再開し、11月には2校目を開設した。
――運営する日本語学校の特徴は
1校目は22年5月に開校した『琴丸教育センター』(ヤンゴン)で、留学を目的とする教育を行う。2校目は『日の丸教育センター』(同)で、特定技能や技能実習生らを育てるのが目的だ。政府機関のYCDCから学校としての営業ライセンスを取得して運営している。現地ではライセンスを取得していない学校が多いが、ライセンスがないと学習証明を公式に発行できず、留学に必要なCOE(在留資格認定証明書)申請で不交付になる可能性が高い。
――日本語を話せるレベルはどのくらいになるのか
特定技能を取得するには日本語試験のJLPTかJFT-Basicで、生活に必要とされる基本的な日本語を理解できるN4レベルが求められる。日本で留学、就職を目指すならミャンマーで日本語教育を受けることが重要であり、それがスタートとなる。労働人口が減る日本にとってもうれしいことで、人手不足を補完できる。日本で働いてミャンマーに戻り起業すれば、技術移転になり母国の産業発展に寄与する。働いていた企業のミャンマー進出を手助けすることにもなり、現地の雇用創出や失業率減少、所得増加につながる。親の成功を見た子供も日本を目指すという好循環が生まれればいい。
――そのためにも日本語を学べる場を増やす必要がある
現地の日本語学校を連携パートナーとして迎えている。17年6月開講の『イチバン』(ヤンゴン)を皮切りに19年1月の『SAN』(マンダレー)、20年3月の『ツバサ』(バコック)、22年4月の『ファミリー』(ミンジャン)と増やしてきた。我々が運営する日の丸教育センターは分校として23年4月にタンピュザヤ、9月にヘンザダに開校する予定だ。さらにパートナーとしてヤンゴンに6月、『イチバン』の分校が開校する。日の丸教育センター、連携パートナーともに今後も開校を進める。また、それぞれの学校は日本への送り出し機関と連携しており、年間200~300人のミャンマー人を日本に送り出せる。
――来日してからの面倒も見るのか
ミャンマーの法人(HINOMARU HOLDINGS COMPANY LIMITED)ではコンサルティング業務も手掛けており、求人票のミャンマー語への翻訳や求職者の選定、履歴書の日本語への翻訳、面接時の通訳、求人者と求職者の日程調整などの面倒を見る。COE申請や在留資格といったサポートも行う。クーデター後は、それまで日本行きを考えていなかった富裕層も安全な日本を希望するようになった。優秀な人材は多いので、日本に行ってほしい。
――今後の展開は
連携パートナーを含めて日本語学校も増えるので、それだけ優秀な人材を安全な日本に送り出せる。現地での知名度も上昇しており今年は特定技能で約120人を計画、来年は2倍を目指す。日本での受け入れ先も探す。現地の日本語学校は日本語教育だけだが、我々はその先(就職)も面倒を見る。ミャンマー人材の育成と就労支援により日本とミャンマーのかけ橋になる。
木村 賢嗣(きむら・けんじ)
合同会社ジーフロッグ 代表社員
富士通株式会社へ新卒入社後、日本初の銀行ATM搭載タッチパネル設計に従事(スマホのタッチパネルなど現代に欠かせない礎を築く)、世界初となるプラズマディスプレイ設計に従事。その後、セイコーエプソンにおいて、USB2.0規格に準拠したスキャナーの組み込みソフトウェア開発に従事。リーマンショックの影響により建築業界へ転職、飛び込み営業として営業スキルを習得。
日本の人口減少という課題にミャンマー人材と共に解決に取り組み、ミャンマー発展のために寄与することを経営理念として、2018年3月に合同会社ジーフロッグを設立、CEOに就任。
30年以上のエンジニア経験と過去の実績を活かしたイノベーターとして、ミャンマーと日本の新しい未来を創造するため活動している。

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