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アイザワ証券株式会社 ソリューション本部 引受部 部長   右島 学

地方企業のIPO支援に注力 地方創生にも一役買う

顧客に親身に寄り添う「超リテール証券」を標榜するアイザワ証券が法人向けビジネスを強化している。その一環として、中小・ベンチャー企業のIPO(新規株式公開)支援に力を入れる。ソリューション本部引受部の右島学部長は「大手証券会社が手を出さない(地方で創業し成長力を秘めた企業など)ブルーオーシャンが我々のビジネス領域」としたうえで「携わった企業が上場して成長するのが楽しみ。地方創生にも一役買える」と意気込む。

――IPOに注力するようになったきっかけは
2018年7月に日本アジア証券を吸収合併したこと。東京証券取引所の主幹事資格を持っており、アイザワ証券の法人顧客に上場案内など新たにソリューションビジネスを提供できると判断し、アイザワ証券が引き継ぎ主幹事証券業務を手掛けるようになった。それまでは個人客向けのリテールビジネスの一環としてIPO株を集めて提供していた。合併メリットを生かしたというわけだ。
――IPO市場の現状については
新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、足元の資金調達は減っている。マクロ経済的にはロシアのウクライナ侵攻や米中摩擦なども気になる。しかし、我々の法人顧客をみると上場意欲は一向に衰えていない。コロナ禍で上場時期を逸する企業もあったが、IPO熱は変わっていない。コロナの収束で外食など内需を中心に立ち直りつつあり、上場の可能性も高まるとみている。
――アイザワ証券にとって追い風となっている
21年10月に東証が運営するプロ投資家向け市場『TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)』に係る『J-Adviser』資格を取得した。東京プロマーケットは多くの投資家が参加する各証券取引所の従来市場と違って、上場時に求められる数値基準が設けられていないので上場に向けたハードルが低い。このため東京プロマーケットを入り口に、東証グロース、スタンダードへとステップアップを目指す企業に対し一気通貫で上場支援サービスを提供できる。これまでは地方の新興企業向け市場である札幌証券取引所アンビシャス、名古屋証券取引所ネクスト(旧セントレックス)、福岡証券取引所Qボードから東証へのステップアップを応援するだけだった。
――これまでのIPO実績は
日本アジア証券時代の12年5月に札証アンビシャスに上場した『北の達人コーポレーション』の主幹事を務めた。その後、札証、東証2部、1部(現プライム)に昇格、時価総額は当初の約6億円からピーク時には約1000億円に達した。北海道では上場を果たしたということでニトリと並ぶ有名企業だ。それまで札幌のベンチャー企業は札幌市内でビジネスを完結できるところが多かったが、アンビシャスから東証に昇格する企業を目の当たりにして上場を目指す企業が増えた。
――アイザワ証券としては
実績は2社。両社とも日本アジア証券からの付き合いだが、上場は合併後。1社は18年12月に上場した『FUJIジャパン』、もう1社は19年6月に上場した『日本グランデ』で、ともにアンビシャスだ。このため札幌では地元企業にとって『アイザワはアンビシャス上場に導いてくれる』と名が通るようになった。札証も地元企業から上場について相談されると我々に紹介してくれる。アイザワとしても、沖縄企業が福証Qボード上場の動きがあったが、うまくサポートできなかった。ただ福証とは信頼関係を構築しており、九州経済圏の拡大に向け上場意欲を持つ企業を紹介してくれる。主幹事を務める企業も出ており、我々は地方創生に一役買っているといえる。
東証の再編で東証上場の敷居が高くなっていることも我々に有利で、地方企業は上場の選択肢として地元証取を選ぶところも出てくる。地方証取から東証へのステップアップをサポートするアイザワに追い風だ。大手証券はこうした案件の獲得に動かないので我々が主幹事を務める機会が増えるはずだ。問い合わせも増えており、近いうちに主幹事を務める企業の上場案件が出てくる。主幹事証券として付き合ってから上場まで最短でも約3年かかる。撒いてきた種が花開いて実るころだ。
――アイザワが主幹事証券に選ばれる強みとは
バー(条件)を設けていない。上場の蓋然性が高い、低いにかかわらず親身になって話を聞くことから始める。上場して企業成長が加速できるかどうかを見ている。その可能性を見出すのが我々の役目だ。というのも顧客の課題を解決するソリューション事業の一環ととらえているので、顧客に寄り添ってサポートする。これが他社との差別化といえる。IPO支援要請の話も多くなる。この期待に応えるためにも、また我々のビジネスとしてもポテンシャルが高いので担当者を増やしたい。引受部はまだ少数だが、今後は人材の増員が必要。優秀な人材を採用できれば業績も拡大できる。
――ところで上場意欲の高い企業とは
業種もさまざまで、社歴も創業10年くらいが多いがまちまちだ。ただ資金調達というより社会的認知度向上を狙っている企業が多い。地方企業は口をそろえて『優秀な人材の確保が課題』という。実際に上場すると翌年の採用数は相当増える。上場と未上場の差は大きく、就学生がネットで検索するとき、上場企業をクリックすると未上場企業はそれだけで外されてしまう。親が子供に求めるのも上場企業だ。このため上場する市場は関係ない。さらに、海外企業と取引するにも上場で相手の信頼を得られる。このように上場メリットを享受したい企業はごまんといる。上場意欲はなくならないので、上場までサポートするのが我々の役目といえる。
右島 学(みぎしま・がく)
ソリューション本部 引受部 部長
大学卒業後、平成7年4月に証券会社に入社。
リテール営業ののち、大阪引受部、引受審査部に配属。
主に店頭登録案件の主幹事審査に携わる。平成15年9月に他の証券会社に入社し、主に新興市場案件の主幹事審査に携わる。
平成17年5月に日本アジア証券㈱に入社。
平成30年に藍澤證券㈱(現:アイザワ証券㈱)に入社。
現在に至る。

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