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株式会社労務研究所 代表取締役   可児 俊信

人手不足と多様性の時代に、働く人を福利厚生制度で支える「ハタラクエール法人」を表彰

福利厚生分野の専門研究機関である労務研究所が事務局を務める福利厚生表彰・認証制度実行委員会は、5月25日に「ハタラクエール2022」の表彰式を開催する。「ハタラクエール」は福利厚生の充実・活用に力を入れる企業・団体・自治体(法人)を表彰する制度。昨年度より応募法人が6割増え、全体的に水準が向上している。表彰式はオンラインで開催され、事前申込で無料視聴できる。労務研究所の可児俊信社長に、制度の狙いや最近の福利厚生の動向について伺った。

 

人手不足を反映し応募法人数が前年比1.6倍に

――「ハタラクエール(福利厚生表彰・認証制度)」への関心が高まっています
昨年度に比べて、応募法人(企業・団体・自治体)が6割ほど増えました。全体的に人手不足が続いていることが背景にありますね。応募企業にはサービス業などの人手不足が顕著な業種が多く、人材採用へのプラス効果を期待していると思います。
以前、優良福利厚生法人(部門)に認証された理容チェーンでも、「ハタラクエール」での受賞は採用面に効果があったと聞いています。受賞法人の皆さんは、自社のプレスリリースや採用ホームページなどで、「ハタラクエール」法人の認証を受けたことを、積極的に情報発信しています。
国内には、子育て支援や女性活躍推進といった部分的な取り組みを評価し認証する制度はありますが、福利厚生全般の水準を客観的に評価し認証する制度としては、「ハタラクエール」が唯一のものです。
――今年3月21日に全都道府県でまん延防止等重点措置が解除されました。これから経済活動が正常化に向かうにつれて、ますます人手不足が顕著になるかもしれません
今回応募して下さった企業さんの約6割が、従業員数300名以下です。(大手企業に比べて)より人手不足が顕著になっていることの反映かもしれません。
一般的にはこういう表彰・認証制度は、大企業が対象になることが多いのですが、「ハタラクエール」はそれとは少し違う傾向になっていることが特徴です。

 

「福利厚生制度は大企業のもの」というのは昔の話

――福利厚生制度について、どんな点が評価されるのでしょうか?
応募法人の中で、福利厚生が充実し、制度の活用に意欲のある法人を「福利厚生推進法人」として、その中でもとくに優れている法人を「優良福利厚生法人」として表彰・認証します。
■「ハタラクエール2022で76法人が表彰・認証されました」
評価軸は第1に、自社の経営課題の解決のために福利厚生制度をうまく活用しているかどうか(経営課題対応)。第2に、自社の経営課題や人事課題をしっかり吸い上げ、把握しているかどうか(現状把握)。第3に、導入している福利厚生制度の数や種類がどれだけ充実しているか、さらに今後それをどれだけ充実させていきたいか(制度充実)。第4に、制度の実際の利用状況はどうか(運用充実)。第5に、経営者や担当者がどれだけ熱意を持ち、どんなスタンスで取り組んでいるか(福利厚生への熱意)です。
その5つの軸で評価を行い、各項目に対する取り組みを数値化し、合計スコアがとくに高かった上位5法人が「優良福利厚生法人(総合)」です。また各評価軸でスコアの高かった上位2法人と、後述の「ミッドサイズ法人」と「地域法人」各1法人を合わせた12法人を、「優良福利厚生法人(部門賞)」として表彰・認証しています。
前回の「ハタラクエール2021」と比較して、全体的に平均点が向上しています。制度をしっかり構築して応募して下さる企業の福利厚生の水準が、どんどん向上しているということだと思いますね。
――「ミッドサイズ法人」や「地域法人」というカテゴリーもあるのですね。
「ミッドサイズ法人」部門は従業員数500名以下の法人で、「地域法人」は三大都市圏以外の地域に本社がある法人。それぞれの部門で最も得点が高かった法人を、表彰・認証しています。大手企業に偏らないにしたいという思いがあり、これらの部門賞を設けました。
たしかに優良福利厚生法人(総合)には、大手企業が選ばれることが多いのですが、優良福利厚生法人(部門賞)には従業員数300名未満の企業も少なくありません。
たとえば介護事業や出版・IT事業などを手がけるQOLサービス(広島県福山市)さんは従業員約300名。都市・建築・環境に関わる調査・企画・設計などを手がける昭和設計(本社・大阪市北区)さんは約200名。クリエイティブ・IT業界特化型の人材紹介・人材派遣やシステムソリューションを手がけるドリームビジョン(東京都中央区)さんは70数名です。
部門賞の受賞法人は、規模にかかわらず、特色のある福利厚生施策を進めているということですね。

 

「多様性への配慮」がこれからの福利厚生のキーワード

――特色のある取り組みをしている法人には、どんな傾向がみられますか?
やはり、経営者の福利厚生に対する熱意が強いですね。実際に取材をしても、福利厚生を充実させることで、良い人材に来てもらいたい、あるいは生産性を向上させたい。その手段として、経営者が福利厚生に期待している部分が大きいと、強く感じます。
たとえば部門賞(地域法人)を受賞した総合情報処理サービス業の電算(本社・長野市)さんでは、イスラム圏出身の従業員のために応接室を礼拝室に改装し、社員食堂でハラル食も食べられるようにしています。
「ハタラクエール」に継続して応募して下さっている法人が半数、ソフトバンクさんのように、今回初めて応募された法人が半数ぐらいの割合ですね。
――継続して応募することで、福利厚生施策のレベルアップを図ろうということなのでしょうか?
そうですね。たとえばジャックスさんや電算さんは初年度の「ハタラクエール2020」からずっと応募して下さっています。応募企業の福利厚生レベルが年々向上している中で、両社とも優良福利厚生法人として毎年表彰され続けていますので、日々相当な努力を重ねられているのだと思います。
――「ハタラクエール」で重視しているポイントは何ですか?
先ほど述べた5つの評価軸のほかに、多様性への対応を重視しています。外国人、女性、高齢者、障がい者といった、さまざまな人材を受け入れ、働きやすい環境を構築しているということですね。
たとえば「ハタラクエール2022」では、携帯電話の卸売・販売および携帯電話を利用したソリューションサービスを提供しているコネクシオ(東京都港区)さんが、優良福利厚生法人(総合)の1社に選ばれました。同社では障がい者に配慮し、カードキーを通常よりも低い位置に設置しています。
人手不足の今、昔のように、男性の世帯主が定年まで会社で働くという前提で設計された福利厚生制度は時代遅れです。当然ながら、多様な人材が働ける環境を整えなければなりません。多様性への対応がきちんとできているかどうかが、これからの福利厚生の大きなポイントになると思います。

 

「ハタラクエール2022」表彰式の模様をオンラインで配信

――「ハタラクエール2022」の表彰式が開催されます
5月25日(水)15:00~16:00に、Zoomによるオンライン表彰式を開催し、表彰・認証、ロゴマークの付与を行います。表彰式には一般企業も多数参加されます。学生の皆さんにも「ハタラクエール」についてもっと知っていただきたいと思いますので、各大学のキャリアセンターにも広く参加を呼びかけているところです。
表彰式には、今回認証された優良福利厚生法人の人事部長などにも参加いただき、コメントをいただく予定です。表彰式終了後、YouTubeに動画をアップしますが、Zoomでのオンライン視聴(無料)も可能。下記リンク先で詳細をご確認のうえ、お申し込み下さい。
■「ハタラクエール2022」表彰式の参加申込サイト
――来年度の「ハタラクエール2023」も、さらに盛り上がりそうですね
今年も10月1日から来年の1月末までの4カ月間にわたり、募集を行う予定です。「ハタラクエール」のHP(https://fukurikosei-hyosyo.com/)にも、9月下旬頃には「ハタラクエール2023」に関する情報が掲載されます。

 

福利厚生制度のレベルアップを目指す法人のチャレンジを求める

――改めて、「ハタラクエール」にチャレンジすることにはどんな意義がありますか?
第1に、応募法人からみると、受賞すれば採用に有利であることはもちろんです。第2に、受賞法人の従業員の皆さんが、「自分たちが働く職場の福利厚生制度は、世間一般の水準からみても高い」と、改めて感じてくれるようになります。
第3に、ソフトバンクさんのように、賞を取るというよりも、自社の福利厚生制度は世間的にみてどれだけの水準にあるのかという、客観的な立ち位置を知りたいという動機で応募して下さる法人もあります。
応募法人の皆さんには審査結果についての講評を送付していますので、それも参考にしていただけるということですね。
――講評を具体的なアドバイスとして、福利厚生制度のレベルアップに役立てることができますね
はい。応募や認証などに一切費用はかかりませんし、選考に漏れてしまっても、それが外部に公表されることはありません。応募法人にとってデメリットは基本的にないと思います。
表彰・認証法人が決定した時点で、「旬刊福利厚生」誌面や日本経済新聞への広告記事、人事系専門紙、Web媒体などのニュース記事で法人名が発表されます。また「旬刊福利厚生」では、毎号1社ずつ受賞法人を取材し、福利厚生制度充実に向けた取り組みや担当者の思いなどを紹介しています。
「ハタラクエール」は、福利厚生関連サービス事業者9社で構成する福利厚生表彰・認証制度実行委員会会(事務局:株式会社労務研究所)で運営されている民間資格。今後、福利厚生関連サービスに携わる、より多くの事業者や金融機関などに参加していただき、この制度をさらに盛り上げていきたいと考えています。

 

「ハタラクエール(福利厚生表彰・認証制度)」のHP https://fukurikosei-hyosyo.com/

 

表彰・認定企業に付与される「ハタラクエール」のロゴマーク。人々が丸くつながり、自律しながらも一体感を持って働いている姿をイメージしている

 

 

「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」
可児 俊信(かに・としのぶ)
代表取締役 千葉商科大学会計大学院 教授
1983年東京大学卒業。1983年、明治生命保険相互会社(現・明治安田生命)入社。1988年、エクイタブル生命(ニューヨーク市)派遣。1991年、明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田総合研究所)。2005年、千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授に就任。2018年、労務研究所代表取締役に就任。
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングに携わる。
主著に、「新しい!日本の福利厚生」、「共済会の実践的グランドデザイン」、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」(いずれも労務研究所)、「実践!福利厚生改革」「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」(ともに日本法令)、「元気の出る生活設計」「賢い女はこう生きる」「あなたのマネープラン」(いずれもダイヤモンド社、共著)等。

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