株式会社M&Aコンサルティング 代表取締役 髙野 健二

公開日:2022年2月9日

M&Aセカンドオピニオンサービスを充実させ、中小企業が安心してM&Aを利用できる基盤作りの一翼を担う

経営を引き継ぐ後継者の不足やコロナ禍を受け、中小企業にもM&Aが浸透しつつある一方、トラブルも絶えない。中小企業庁では昨年、「M&A支援機関登録制度」を創設しM&Aの基盤およびルールの整備に乗り出した。こうした中、M&Aのアドバイザリー業務を15年以上手がけてきたM&Aコンサルティングでは、M&Aの交渉過程で生じるさまざまな疑問や悩みに応え、リスクの正確な理解や意思決定に役立つ助言を行う「M&Aセカンドオピニオンサービス」を一昨年12月に開始し、好評を得ている。同社の髙野健二社長に最近のM&Aの動向や、セカンドオピニオンサービスによく寄せられる相談内容などについて、話を聞いた

M&A市場は、コロナ禍の影響で圧倒的な買い手市場に

――最近のM&A市場をどう見ていますか?
今までなんとか回ってきた会社の経営が、コロナ禍の影響で突然立ち行かなくなり、M&Aという選択肢を含めて、会社の存続を全方向で検討しなければならないケースが増えています。その中で、売り手側企業(被買収企業)のM&Aニーズは相当高まりました。
そうした圧倒的な買い手市場の中で、買い手側企業(買収企業)がM&Aを控えたり、M&Aを検討してもその「物差し」がかなり厳しくなりました。その結果、市場はいったん収縮したというのが、2020年の状況だったと思います。
今でも買い手側が圧倒的に有利な業種業界は多いのですが、買い手側のM&Aに対する意欲が回復し、急増した売り手側企業の買収につながっています。そういう中で、M&A市場は2021年以降、堅調に推移していると思います。
――その中で、中小企業のM&Aニーズに変化はありますか?
以前から、財務的な理由から会社を売却するケースは多かったのですが、コロナ禍で急激な売上減少に見舞われ、売却を検討するケースが急増しました。
10年前に、後継者難で会社の売却を希望していた当時60代の経営者が70歳を越えるようになり、いよいよ待ったなしの状況になっています。売却希望は依然として多く、この状況はしばらく続くでしょう。
その一方で、若い世代の経営者を中心に、株式上場を目標にせず、当初からM&Aを会社経営のゴールに設定しているケースも多く、最近ではそういう動きが50代の経営者にまで広がっています。

国の「M&A支援機関登録制度」がスタート

――2021年に中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」が創設されましたが、その背景を教えて下さい
「中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するため」と、中小企業庁のホームページに制度創設の意義が記載されています。
従来からM&Aにおける「仲介」の問題が指摘されてきました。仲介とは、M&Aアドバイザーが売り手側の企業と買い手側の企業の間に入り、M&Aの成立をサポートする業態です。ところが、売り手側と買い手側の双方に助言し、双方から報酬を得ることは利益相反につながるのではないかといわれていたのです。
現在でも仲介そのものは禁止されていませんが、契約時に仲介にともなうリスクを含む重要事項を明示することが求められるようになりました。
――御社も登録している国の「登録ファイナンシャルアドバイザー」には、どんな対応が求められているのですか?
登録ファイナンシャルアドバイザーは、同庁が定めた「中小M&Aガイドライン」を遵守しなければなりません。たとえば契約時に下記などについてきちんと説明し、同意を得ることが求められます。
①仲介、FA(ファイナンシャルアドバイザー)といった形態のそれぞれの特徴を説明すること。とくに仲介の場合は、利益相反の恐れがあることを契約時に明示すること
②セカンドオピニオンを認めるかどうか
③M&Aが成立しないまま、仲介・FA契約が終了したあと、一定期間(テール期間)内に売り手側がM&Aを行った場合、仲介者・FAが手数料を請求できる「テール条項」を結ぶ場合、テール期間はいつからいつまでで、どんなM&Aがその対象になるのか

M&Aのリスクとメリット

――最近よくあるM&Aの問題として、どんなことが挙げられますか?
以前に比べて、M&Aを手がけるプレーヤーは圧倒的に増えたのですが、サービスの質が追いついていないのではないかと懸念しています。たとえば士業でも多くの方がM&Aに携わっていますが、自分の専門領域のほかに、M&Aについてきちんと理解し助言を行うには、勉強と経験をかなり積む必要があります。
また最近、ネットを介して買収または被買収候補先と直接コンタクトが取れるサービスも増えています。ところが、M&Aの経験のない利用者の場合、「何かおかしい」と思っているうちに交渉が進行してしまい、その結果トラブルが生じることが多々あります。
――逆に、M&Aをうまく活用し、よい結果をもたらした例にはどんなものがありますか?
被買収企業にとっては、買収企業からの受注を得たり、買収企業の得意先にアプローチする道が開けるといったメリットがあります。売却によって資金を得ることもできます。
一方、買収企業は、被買収企業の得意先を取り込むことができたり、これまで自社にいなかったタイプの人材を活用することができるようになります。さらに、被買収企業の良い点や優れたノウハウを取り込み、買収企業が業績を大きく向上させたケースも実際にあります。
ただし、買収企業が被買収企業に対して、自社の意向や方針を一方的に押しつけるようなケースでは、M&A後の統合はほぼ失敗します。異なる文化が1つになるので、確かに変化は生じますが、買収企業も被買収企業もお互いの良い点を取り込んで進化しようという心構えが重要です。
最近では、被買収企業の文化を尊重しようという、買収企業の意識はかなり高まっていると思います。ところが逆に被買収企業を気遣うあまり、買収企業の担当者が「御用聞き」のように対応しているケースも見られます。M&Aの統合を成功に導き、シナジーを発揮させるため、買収企業の側も言うべきことはきちんと言える関係を構築することが望ましいと思います。

「M&Aセカンドオピニオンサービス」を強化

――御社は登録ファイナンシャルアドバイザーとして、どんな役割を果たしていきたいと考えていますか?
当社は仲介は行っていません。可能な限り依頼者に寄り添うというスタンスでFA業務を手がけてきました。今回のM&A支援機関登録制度が目指す趣旨に沿った業務や運営を、従来から行ってきたという自負はあります。
同制度で、情報管理に配慮したうえで許容が求められているセカンドオピニオンサービスも、当社がサービスを開始してから1年が経ちます。FA業務はもちろん、セカンドオピニオンサービスの担い手としても、M&Aを取り巻く基盤整備の一翼を担いたいと考えています。
――M&Aでセカンドオピニオンが重要なのはなぜですか? セカンドオピニオンサービスを活用することで、どんな悩みや問題が、どう解決しますか
交渉の中で「何かおかしい」と感じ、ご相談をいただくことがほとんどですね。
たとえば、渡された契約書を見て「何となくおかしい」と感じてご相談をいただいたあるケースでは、合併を前提に話が進んでいたのに、株式譲渡の内容の契約書になっていました。
また、相手から提案されたスキームが難解で不安に思い、相談に訪れた方もいらっしゃいます。改めてスキームを確認したところ、相手側に一方的に有利な内容になっていたので、そのリスクをわかりやすく解説しました。結局その相談者は、セカンドオピニオンを参考に、その案件を見合わせました。
買収企業からもご相談がよくあります。ある仲介者から持ち込まれた案件について、「何かおかしい」と感じ、当社のセカンドオピニオンサービスを利用されたケースがあります。仲介者に提出を求めている資料や情報が一向に出てこないというのです。こういうケースでは、相手側が何かを隠そうとしていることが少なくありません。
――御社のM&Aセカンドオピニオンサービスの特徴は?
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M&Aセカンドオピニオンサービスを開始し約1年が経つ。交渉途中で「何かおかしい」と感じたとき、すぐに相談できる手段を確保することが重要だ
M&Aの契約締結だけでなく、締結後の展開も予測したアドバイスを行っています。たとえば先のケースで、もともと合併で話が進んでいたのに、それとは異なる内容の契約で相手側が話を進めようとしているのは、何かしらの理由があるのでしょう。相談者がよく理解できていない今の状況をわかりやすく解説し、今後こういう展開が考えられる。そこにはこういうリスクなり、メリットがあるということを説明し、判断材料を提供するというスタンスで臨んでいます。
――依頼者または相談者にとって、M&Aがどんな結果をもたらすのかを客観的に分析し、判断材料を提供しようというプロの目線でアドバイスを行っているのですね
M&Aの成立自体を目的化していない、ということに尽きると思います。M&Aのプロは、その契約を成立させることが、お客様にとって望ましくない結果につながる可能性が高い場合には、契約を止めることを勧めるのをためらってはなりません。
セカンドオピニオンサービスで、客観的にみてディールをやめたほうが良いと思われるケースでは、やめるべきだとお話するケースも出てきます。ただし、お客様にとって、現在の状況の中では、ほかに選択肢がない場合もあり得ます。そういうケースでは、今後起こり得るリスクについて説明したうえで、前に進むかどうかを判断していただくことになります。
その結果、思い通りの展開にならないケースもありますが、M&A実行後に生じる結果についての保証はできません。しかし、リスクを理解していただいたうえで、どんなことに気をつけながら話を進めていくべきかについて、注意点をお伝えすることは可能です。
時間の制約を取り払い、気軽にご相談いただけるように、2021年12月から、セカンドオピニオンサービスの料金を月額5万円の定額制に変更しました。

M&Aに対するイメージを向上させ、安心して利用できる基盤作りに貢献する

――M&Aのプロとしてコンサルティングに取り組む中で、どんなことを目指していますか?
正直な話、M&AコンサルタントやM&A全般に対して、良いイメージをお持ちではない方が今でもいらっしゃると思います。「M&Aコンサルタントにはお世話になりたくない」と、はっきり言われることもあります。実際、これまで規制がほとんどなく、事実上、野放しの状態にあったこの業界で、コンサルティングを手がける側が、お客様に寄り添う姿勢を十分に持てていなかったことを真剣に反省する必要があります。
もちろん、必ずしもM&Aを行う必要はありません。後継者がどうしても見つからない場合、廃業することも、それはそれで1つの道ではあります。
ただし、会社の存続や事業承継を考える場合、M&Aは有力な1つの手段になり得ます。ですからM&Aを、選択肢の中から外していただきたくないという思いがあります。
今回創設された「M&A支援機関登録制度」の趣旨も、中小企業の皆さんが安心して取り組める、健全なM&Aを実施していくための基盤が社会に必要だというところにあると思います。私たちもその一翼を担っていくために、誠実なサービスを、細くても長く提供していくことを目標にしています。


「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」

株式会社M&Aコンサルティング 代表取締役 髙野 健二
BIG4メンバーファーム(現・新日本有限責任監査法人)で上場企業グループ等の会計監査、株式公開準備、買収監査(デューデリジェンス)、株価評価等のプロジェクトに参画。
その後、東証一部上場の専門商社やJASDAQ上場流通企業などのM&A担当・役員・顧問として、企業戦略立案・遂行の最前線で活躍した経験を持つ。

【主な役職】
ゲンダイエージェンシー株式会社(JASDAQ上場) 監査役(現任)、日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長(2009年度、同委員会副委員長(2010年度)および同会M&A業務支援プロジェクトチーム構成員長、株式会社ノジマ執行役経営戦略グループ長(2007.6~2008.6)、東京都事業引継ぎ支援センター登録民間支援機関(現任)

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