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株式会社コムデザイン 代表取締役社長   寺尾 憲二

ユーザーの”思い”を実現する「これからのコールセンタープラットフォーム」を提案

コムデザインは、市場規模約1兆円のコールセンタービジネスを支える「コールセンタープラットフォーム」を手がける。同社が提供しているクラウド型のCTI(コンピュータテレフォニーインテグレーション)サービス「CT-e1/SaaS」の導入数は、2021年6月現在、テナント数1200、ブース席2万4000に達した。同社のコロナ禍への対応とコロナ後の戦略・展望について、寺尾憲二社長に聞いた。

感染対策に努めながら、24時間365日のクラウドサービスを維持

――新型コロナウイルス感染症が国内で流行し始めた頃、率直にどう思いましたか?
あれこれ考えるよりもまず、社員の感染リスクを減らすことが大切だと思いました。その一方で、クラウド型のCTIサービスである「CT-e1/SaaS」の稼働を、24時間365日止めずに提供していかなければなりません。
そこで、テレワーク環境を整えるため、昨年の緊急事態宣言の発出直後にノートパソコンをできるだけ備えました。また、ネットワーク環境のコンフィギュレーション(設定)を少々変更し、リモートデスクトップを利用して社内のパソコンを動かすなど、クラウドサービスを止めずに社員の感染リスクを低減することに一生懸命取り組みました。
もともと、私たちの業務内容がテレワークに向いていたこともあり、いったん指示を出したあと、テレワークへの移行は非常にスムーズでした。現在は、ほぼ会社全体がテレワークで動いており、50名の社員のうち、管理部門を除くと数名が出社する程度で業務を回しています。

コロナ禍でも顧客は離れなかった。テレワーク需要で「CTe1-SaaS」の新規受注が増加

――その間、社員の皆さんとはどうコミュニケーションを取られたのですか?
社員とのコミュニケーションはチャットで行っています。昨年4月頃の内容を読み返してみると、緊急事態宣言が発出された約10日後に、コロナ禍によって求められる行動変容によって、旅行業や飲食業の皆さんは非常に大きな影響を受けている。でも、行動変容がすべて悪い方向に向かうのではなく、良い面もあるというメッセージを、社員に送っていましたね。
実際、その頃から、アンテナ感度の高い取引先の経営者とのオンラインミーティングなどで、「これから頑張っていこう。今後はやはりSaaSだね」という話題がよく出るようになりました。
幸いなことに、既存のお客様のサービス解約はほとんどなかったのですが、営業的には新規のお客様を獲得することができず、昨年4月までは数字がまったく動かない状況。ところが4月末から大型の商談が急に動き出し、5月になってから受注が増加。それ以降は、きわめて順調に進んでいます。

オペレーターが自宅の固定電話や携帯電話を利用しテレワークが可能に

――「CTe1-SaaS」の長所が、より生かされる社会情勢になってきたのではないでしょうか。最近はどんなニーズが多いですか?
 一番大きいのがテレワークですね。
――やはりそうですか。簡単にテレワーク環境を構築できることも「CTe1-SaaS」の大きな特徴ですね。
テレワークは合理性のある働き方で、これからテレワークの時代が来ると、ずいぶん前からいわれていました。ところが、テレワークに移行できない理由ばかりが先に立ち、なかなか踏み出せずにいた中で、コロナ禍により、社員が1箇所に集まって働くこと自体がリスクに。そのため、コミュニケーター(オペレーター)が自宅なりサテライトで働ける環境をどう構築するかが大きな課題になったのです。
そこで注目され始めたのが「CTe1-SaaS」の「2Leg方式」という機能。オフィス専用のIP電話機だけでなく、自宅の固定電話や携帯電話でもコールセンター業務が可能になります。
「2Leg方式」で、IP電話機はもちろん公衆電話網を用いて既設PBXやモバイルでの利用も可能。テレワーク対応も容易なクラウドCTIサービス「CT-e1/SaaS」
――非常に柔軟ですね。
そうなんです。特別な環境を要求せずに、自宅でのテレワークだけでなく、オフィスでも業務を行うことが可能です。コミュニケーターさんがシステムにログインする際、今日はオフィスの専用IP電話で受けるか、携帯電話で受けるかなどを切り替えるだけで、簡単に業務を行うことができます。
このように柔軟な運用が可能だという点が大きく評価され、昨年5月から「CTe1-SaaS」の導入企業が増えたというのが実情です。

コールセンターの対応力強化の動きにカスタマイズで応える

――テレワーク需要もそうですが、BtoCやECを手がける企業を中心に顧客対応を強化する動きが生じたという背景もあるのでは?
本当にそうでして、コールセンターの方は非常に意識が高く、「お客様のためにここをこうすれば、サービスがもっとよくなるのではないか」といつも考えておられます。そういうご要望に応えるため、カスタマイズを追加費用なしで行っている点も、非常に評価をいただいている点ですね。
――どんなカスタマイズを行うのですか?
コールセンターでは、たとえば「5秒以内に電話に出よう」とか「呼損(こそん/途中で電話を切られてしまうこと)をなくそう」といったKPI(重要業績評価指標)を設定したうえで、コミュニケーターが日々対応にあたっています。
そこで、各センターごとに異なるKPIを、コミュニケーターが見ている画面にリアルタイムで表示できるようにカスタマイズしています。KPIを見ながら業務を行うことで、組織の中で決められた数字をしっかりキープしようというモチベーションにつながります。
あるいは、呼損を起こしてしまったコミュニケーターに対し、フォローコールを自動的に入れられる仕組みを設けたいというご要望など、求めるサービスレベルは各社によって異なりますが、可能な限り対応させていただいています。

「『いい人』であることを価値にする」を軸足に置いて経営

――要望にきめ細かく対応できるのも、自社開発を20年積み重ねてきたからでしょうか。
技術面ではもちろんそうですが、社員たちが、会社方針そのままに、お客様に喜んでいただくことを一番の励みにすることができるメンバー揃いだからだと思います。
お客様に何か困ったことがあれば、「こうすれば少しでもお役に立つのではないか」と、こちらからも提案させていただき、それがうまくいったという話を聞くことを、営業はもちろん技術担当の社員も喜びにしてくれています。社内的にも、こうした部分を意気に感じるところがあり、「『いい人』であることを価値にする」(Good People Charter)ということに軸足を置いて経営しておりますので。
その意味で、何かをさせていただき、お客様に喜んでもらう、喜んでいただき「ありがとう」といってもらうことを素直に喜ぶ。そういう会社の方針、もしくは社風がかなり醸成されてきたのではないかと思っています。 お客様に対しては、コロナ禍であろうがテレワークになろうが「『いい人』であることを価値にする」という方針は、ぶれないところではありますね。

オンでもオフでも「サークル」を設けてコミュニケーションを活発に

――テレワークの中でも社内の「一体感」を高めるために意識していることはありますか?
当社ではもともと、仕事のオフでのコニュニケーションが非常に活発でした。近い年代同士だけでなく、わりと年齢の離れたメンバーも含めて、「オフ会」のような形で飲みに行くような機会もかなりあったのです。ところが、コロナ禍でそれを自粛せざるを得なくなりました。
オンライン(仕事、以下同様)の活動はテレワークでストレスなく回っていた一方、会社の文化醸成という面では弱くなった部分があることを、私自身かなり懸念していたのです。そのため、仕事を離れたオフライン(仕事外、以下同様)でのコミュニケーションを強化する必要があると考えました。
ここ最近、当社が取り組んでいる組織運営手法は「ホラクラシー」(役職などの上下関係のないフラットな組織)に近いものです。ホラクラシー組織では営業や技術などの大きな役割を「サークル」と定義しますが、そういうオンラインのサークル以外に、オフラインのサークルを作りました。
――どんなサークルが活動しているのですか?
たとえば社長とコミュニケーションをするサークルがいくつかあったり、オフラインにゴルフに行くとか、おいしいものを食べに行くといった趣味のサークルがあります。社員間のコミュニケーションの密度を向上させることを目的に、業務に支障がない範囲内で、就業時間中にWebミーティングを行うことも認めました。こうした活動が活発に行われるようになり、良い手応えを感じているところです。

「CCPコンセプト」のもとで、コールセンターとAIサービスをつなぐプラットフォーマーを目指す

――8月末に、「デジタルクローンP.A.I.(パーソナル人工知能)」の開発を手がけるオルツ社、総合アウトソーシング事業を手がけるマスターピース・グループと共同で「AIコールセンターシステム」の開発に取り組むという発表がありました。コールセンターでのAI活用について、どんなビジョンをお持ちですか?
オルツさん、マスターピースさんとは、そういう形で積極的に動いていきます。AIの活用領域としては、自然言語処理の利用を進めていくと、FAQをもとにして自動応答が可能になります。もう少し進めれば、コールセンターでの会話内容の分析などをAI技術で省力化することもできます。
そういうAIソリューションやAIの活用事例は、今後かなり増えていくでしょう。ところが従来のケースでは、AIを利用しようとする場合、コールセンターとAIソリューションをつなぐ専用の装置が必要です。音声認識なら、AIソリューションに音声データを渡す装置などを初期投資で導入して初めて、クラウドベースのAIソリューションも利用できるようになるわけです。
その点、当社の「CTe1-SaaS」は、もともと音声のハンドリングに強いプラットフォーム。今回の「AIコールセンター」の場合でも、会話中の音声データをリアルタイムでオルツさん側に送ったり、音声認識の結果をテキストデータで受け取り、それを音声変換にかけて自動音声対応を行うといった一連の処理を、スムーズに進めるうえで大きな役割を果たします。
このように、コールセンターとAIソリューションをつなぐ「ハブ」としての機能を、無料で提供していくのが「CCP(Converged Communications Platform)」コンセプト。当社の「CTe1-SaaS」のご契約をいただいていれば、これから続々登場してくるであろう、さまざまなベンダーさんのAIソリューションとの橋渡し役になることを、私たちは目指しています。
――AIベンダーとコールセンターをシームレスにつなぐプラットフォーマーという立ち位置を、コロナ後の戦略に位置付けているのはなぜですか?
AIソリューションはマネタイズが難しく、ユーザー企業が費用対効果を考えたうえで、継続して利用しようというモチベーションになかなかつながらないものです。
AIソリューションのゴールは、開発することにあるのではありません。ソリューションを使い続けてコールセンターの品質を向上させたり、省力化につなぐことが本来のゴールであるはずです。その意味で、POC(概念実証)なり、開発されたソリューションを実際に利用していただく中で、それを継続して使えるようにするにはどうしたらいいのかを、AIベンダーさんとお客様に一緒に考えていただける環境が必要だと思うのです。
AIは夢のある分野ですので、ベンダーさんがお客様と切磋琢磨していく中で、成功のイメージを作り上げていける環境を、当社としては「CTe1-SaaS」とAIソリューションとの接続までは無料という形で提供していきたいと考えました。
――開発されたAIソリューションを使用していただきながら、お客様に効果や使い勝手を確認してもらい、継続利用につなぐ場を提供していくということですね。
そういう環境が整い、費用対効果が可視化され、本来あるべきAIの活用というものが見えてくるようになれば、コールセンターはもっとよくなっていくでしょう。実際にAIを導入することで、効果が確実に現れる分野も数多く出てくるはずです。たとえば今回のコロナ禍における受電状況をみていても、在宅療養をしている患者さんに保健所の方が直接電話をかけるなど、対応に追われていました。
連絡業務をまずAI・ロボットで行い、担当者が直接会話を聞き取る必要があると判断されたケースのみを保健所につなぐことができれば、対応をより効率化することができます。また、相談窓口となる自治体などのコールセンターにAI・ロボットを導入することで、人手ではカバーしきれなかった部分について、お助けできる機会もかなりあったと思います。
そういう施策や政策を検討するにあたり、システム導入の予算をどう捻出するかで右往左往することなく、まずAIソリューションを試行的に動かしてみて、狙った効果を出せるかどうかを検証できる。そういうプラットフォームを、誰かが担う世の中になれば、日本も捨てたものではないという雰囲気になっていくのではないでしょうか。
そこに費用を取らないというところが、大事なポイントですね。

「CPaaS(シーパース)」を超える「CXaaS(シーザース)」という新たな価値を提案

――今後の新たな取り組みは?
技術面では今述べたように「CCPコンセプト」を推進していきます。また、もう1つ大きな軸として、「『いい人』であることを価値にする」という表現を進化させ、「CXaaS(シーザース/Customer Experience as a Service)」と、時代に合わせて格好良くブランド化していく取り組みを進めているところです。
その元になっているのが、米シスコシステムズも使用している「CPaaS(シーパース/Communication Platform as a Service)」という造語。これはクラウドベースのコンタクトセンター「Amazon Connect」でもよく登場するキーワード。その「CPaaS」との差別化を図るために、私たちは「CXaaS」というコンセプトを提唱し、広めていこうとしているわけです。
どんな違いがあるかというと、「CPaaS」は「このプラットフォームを利用すればコールセンターを安価で簡単に構築できます」というものであるのに対し、「CXaaS」には、ユーザーが理想とする顧客体験の実現のために必要となる機能だけでなく、サービス活用に向けた人的なサポートも含めて、すべてを提供するところです。つまり、コミュニケーションプラットフォームを提供するだけでなく、プラットフォームを活用し、理想的な顧客体験をしていただけるところまでお連れする。そこまでを含めて、当社では「CXaaS」と呼んでいるわけです。
その根本部分にあるのは、お客様に当社のサービスを利用し、喜んでいただきたいという思い。これまで、「私たちは『いい人』であることを大切にしています。お客様に喜んでいただくことが好きだから、こんな取り組みをしています」という表現をしていましたが、この先数年間は「CXaaS」に対して「CXaaS」という言葉を用い、未知数の「X」で表される、さまざまな価値をお客様に提供していきたいですね。
「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」
株式会社コムデザイン 代表取締役社長 寺尾 憲二(てらお けんじ)
1982年 国立鈴鹿工業高等専門学校 電気工学科 卒
1982年 日本電信電話公社(現NTT) 入社
株式会社イメージパートナーを経て1997年6月 コムデザインを設立し、現職。

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