全国中小企業団体中央会 常務理事 及川 勝

公開日:2021年11月17日

危機的状況の企業、ピンチをチャンスに変えると意気込む企業、双方を後押し

全国約3万の中小企業組合とそこに所属する約231万の中小企業・小規模事業者を支援する全国中小企業団体中央会(全国中央会)が今年、創立65周年を迎えた。新型コロナウイルス禍が完全に収束しない中で開催された11月5日の記念式典で、森洋会長は「緊急事態宣言は解除されたものの、飲食や宿泊など対面サービスを中心に中小企業・小規模事業者の経営は大変な苦境に陥っており、企業間連携の一層の強化、生産性向上に向けた取り組みを積極的に支援していく」とあいさつ。第73回中小企業団体全国大会に先立つ特別委員会では、地域経済や雇用を支える中小企業がウィズコロナ・アフターコロナに向けて明るい展望を見出せるよう大会決議案を取りまとめた。及川勝常務理事は「多くの中小企業はコロナ禍で危機的状況に追い込まれている。一方でピンチをチャンスに変えると意気込む企業も少なくない。双方の企業を後押しする」と強調、資金繰り対策、経営強靭化や成長促進支援に注力する。

――全国中央会の役割とコロナ禍への対応は
われわれ全国中央会は、都道府県中小企業団体中央会および中小企業組合等連携組織の支援連絡機関として1956年4月に創立。以来65年にわたり中小企業組合等の振興を図るため、各種事業を推進し中小企業の発展に大きな役割を果たすことができた。しかしコロナ禍で飲食、宿泊、運送、観光などの事業者の経営環境は非常に厳しい。国の感染防止対策を必死に受け止め、耐え忍んできたわけだが、昨年から今まで度重なる緊急事態宣言の発令で営業自粛などを強いられたことから経営は追い込まれている。都道府県中央会や全国団体も今年は大丈夫でも、数年後には真綿で絞められるようにその影響が出てくるのは間違いなく、中小企業を支えるインフラである組合等連携組織の機能が低下しかねない。
――11月5日の特別委員会で決議したことは
記念式典には約170人が参加。懇談会もフェースシートを置いて着座で実施するなどコロナ対策をしっかり行ったうえで集まった。2年越しのリアル対面とあって各県中央会の会長同士の話が弾んでいた。しかしコロナ禍で経営に苦しむ中手企業にとって第6波が来るとたまらない。政府はデジタル化やグリーン化といった成長戦略にかじを切ろうとしているが、今は米びつの底が見えている状況。効果的なコロナ対策、医療体制の整備を引き続き要望するとともに、地域経済を支える中小企業が景気回復を実感できるような政策の執行を求めていきたい。特別委員会で、11月25日に横浜市で開催される第73回中小企業団体全国大会の決議、宣言、スローガンを決定した。今年の全国大会はコロナで困っている中小企業のいわば総決起大会都の位置付けだ。
――その内容は
大会決議は中小企業の①経営強靭化・成長促進支援等の拡充、②労働・雇用・社会保険料対策の推進、③事業活動を支える環境整備―を重点事項に決めた。コロナ禍に加え、度重なる自然災害への対応で中小企業の経営は事業継続や雇用維持において危機的状況にあるからだ。このため国にはコロナの早期収束と困窮する中小企業が安心して事業を継続できる環境整備のほか、ポストコロナ時代を踏まえ新分野に事業展開できる再構築支援の拡充強化を求めていきたい。具体的には、①については成長促進投資への支援強化や持続的発展に向けた事業承継・事業継続に関する対策の強化、地方創生に向けた対策の拡充を求める。②ではコロナ感染状況に応じた雇用調整助成金等の助成措置の拡充、雇用保険料率の引き上げ回避と国庫負担の本則4分の1への復帰が欠かせない。③ではものづくり補助金の継続・拡充、事業再構築補助金の要件緩和と対象範囲の拡大などで持続的発展の推進、エネルギー・環境対応への支援拡充などを挙げている。
――コロナ感染対策として人流を抑えるため営業自粛要請が続き、資金繰りが厳しい事業者は少なくないと思われる。この要望については
コロナによる売り上げ減少など一定条件を満たせば実質無担保・無利子のいわゆる『ゼロゼロ融資』が20年3月から始まり今年末まで延長されたが、あくまでも融資であり、元本返済据え置き期間が1年の企業は返済が始まる。しかしコロナ前の通常営業に戻っていない事業者は返済が大変だ。事業継続意欲を失い、事業をやめる企業が出かねない。戦後に起業して今も社長を務める事業者は、これを機に廃業するかもしれない。特に黒字で廃業は雇用や財政面からも影響が大きく、継続的な支援が必要である。
一方で、事業再構築についての問い合わせが増えている。ピンチをチャンスに変える動きは大歓迎だ。自動車がガソリン車から電気自動車に代わるとどうなるのか。飲食業はデリバリーやネット販売を始めたり、海外進出を考えたりと関係する事業に出ていく。向き、不向きはあるが、経営課題は何かを伴走的に見極める支援していきたい。
――このところの石油価格の高騰も中小企業の経営にとって痛手だ
コロナ禍に加え、ガソリン価格の高騰という新たな悩みの種も生まれた。運送業は大変だ。そこで、全国大会のスローガンに、『万全な資金繰り対策・消費喚起対策により早期景気回復』『実態を踏まえた労働・雇用・社会保険料対策の推進』などと並んで、『安価・安定なエネルギー・原料供給体制の確立』を盛り込んだ。中小企業にとってプライオリティーが高まったからだ。
――最低賃金引き上げの影響は
生産性が向上し、儲かっているなら構わないが、コロナ禍でダメージが大きい今は苦しい。価格転嫁できない中での賃上げは無理としかいいようがない、賃上げと共に社会保険料も上がるので雇用確保も難しくなる。全国平均は28円増の930円で、東京は1041円だ。コロナ収束前に上げてほしくなかった。人流を抑えておきながら賃上げの強制はたまらないといった声が寄せられている。
――ところで政府が唱える女性活躍推進だが、女性経営者の活動については
女性ならではの『しなやか経営』の事例を紹介し意見交換する『レディース中央会2021 全国フォーラムin宮崎』を10月7日に宮崎市で開催した。リアル100人に加え、オンラインでも初めて参加者を募ったところ120人もの方が参加された。地方からも気軽に参加できるとあって平均以上の女性経営者等が集まった。今回は基調講演で、女性の働き方やアフターコロナをテーマに、国内外の着ぐるみ製作を行っているKIGURUMI.BIZ(キグルミビズ)の加納ひろみ代表取締役が『向こう側の笑顔とこちら側の笑顔~あたたかいキャラクターを産み続ける女子力の現場~』について話した。パネルディスカッションでは『地方の魅力を再発見~アフターコロナを見据えて』をテーマに開催。『コロナ禍を乗り越えるのに大変役立った』とたいへん好評だった。

全国中小企業団体中央会 常務理事 及川 勝(おいかわ・まさる)
1983年全国中小企業団体中央会。2009年政策推進部長、15年事務局次長、19年事務局長、21年7月から常務理事。62歳。東京都出身。

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