一般社団法人フィンテックガーデン 事務局長(DX診断士協会事務局長を兼務) 井上 達也

公開日:2021年5月7日

企業のDX推進を支援する「DX診断士」試験を実施

FinTech市場の活性化に寄与することを目的に、国内のフィンテックのデータの一元化や共通APIの開発を支援しているフィンテックガーデン。同法人が運営事務局を務めるDX診断士協会が、6月に実施される第2回DX診断士認定試験の募集を4月にも開始する。DX診断士協会理事長を兼務するフィンテックガーデンの井上達也事務局長にDX診断士の役割や意義、認定試験の概要などについて話を聞いた。
「トランスフォーメーション」の仕組みを作るスペシャリスト
――「DX診断士」とはどんな資格ですか?
井上 最近急ピッチで進んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)を支え、DXの導入を指導できる人材を育成するため、2020年12月に誕生したのがDX診断士です。
国内ではまだ、DXで何ができるのかわからない、DXを活用したいが専門人材がいないという企業が大多数を占めています。こうした企業を指導し、会社経営にDXを活かして国内産業を活性化させることを目的としています。
DX診断士というと、プログラマーやSEのようにITやコンピュータに詳しい人を連想するかもしれませんが、必ずしもそうではありません。DX診断士はプログラムを作成するのではなく、ITに関する知識もそれほど高度なものは求められません。DX(Digital Transformation)の「トランスフォーメーション」の部分こそ、DX診断士が重視している部分であり、プログラムの作成はプログラマーに任せ、DXで最も重要な、トランスフォーメーション」のロジックや、具体的に課題をどう解決するかの仕組みを考えることが、DX診断士の仕事です。
DX診断士になるには、年に2回実施される試験に合格する必要があります。80点以上が合格で、90点以上の合格者は「DX診断士上席」の呼称を使用可能。資格を継続するためには2年に1回、診断士継続セミナーの受講が義務付けられています。
――DX診断士には、どんな能力が問われますか?
井上 DX診断士試験はオンラインで実施され(第1回試験はリアル会場で実施)、ネットを検索しながら答えられる問題もありますが、ポイントは、ある具体的な課題をDXでどう解決するかを答える論述問題です。
課題解決の方法は1つだけでなく、さまざまな解が存在するので、答えがAかBかではなく、それが実現可能なものになっているかどうかを評価。解答例も書かれていて、あなたならDXで課題をどう解決しますかという趣旨の問題が出題されます。
――どんな問題が出題されましたか?
井上 前回の試験で出たのは、食肉の冷凍倉庫を運営している会社に、どんなDXシステムを提案するかという問題です。
その会社は小売も行なっており、肉を100kg、200kgと買いに来るお客様がいるので、倉庫の中にいつ仕入れた肉が、あと何kg残っているかを管理したいという設定です。実際、倉庫の奥にいつ仕入れたのかわからない肉が、端切れ担った状態で残っているということも少なくありません。
問題のケースでは食肉の総トン数はわかっているので、300トンを仕入れて190トン売ったのであれば、在庫は単純に引き算をすれば出てきます。ところが問題は、それだけではどの肉がどれだけ残っているかがわからないということなのです。
それを、こんなシステムの流れを作るとか、DXを通じてこのデータをこんな形でクラウドに上げ、こう処理するという解答もあるでしょう。システム開発に唯一の解答はなく、JAVAでなければシステムは作れないとか、C言語でなければ作れないということもありません。
――解答例は?
井上 たとえば、今仕入れた肉の登録番号を1番とすれば、切った瞬間に1がなくなり、2番と3番に分けて管理が可能。2番が売れれば、登録番号2番の商品として請求書を発行できます。残りの3番がそのまま売れればいいのですが、さらに500gの注文が入った場合、切り分けた肉を4番にし、残りを5番にするわけです。そうすれば最終的に、たとえば今倉庫には管理番号175番の肉が3kg残っていることがわかる、ということが解答例に載っています。
――DX診断士のスキルは企業のDX導入にどう役立ちますか?
井上 大手企業では社内SEが、ベンダー(売り手)側と仕様を詰めて、システム発注のための仕様書を作成し、合意のもとに開発に着手することもあるでしょう。ところが一部の大手企業以外では、システムのベンダー側が仕様書を作成することが大半。しかも、ベンダーが作った仕様書が、自社のDXのニーズに合っているのかを見極められる人が、発注側にいないことがほとんどです。
そのため、開発に着手する前に詳細な仕様を詰め切れず、言った言わないの話になったり、あとからお客様の要望が出てきて、さまざまな機能追加への対応を迫られることが少なくありません。
SIer(システムインテグレーター)やソフト開発会社のDX提案が、発注企業のニーズにマッチしたものかどうかを見極め、トラブルを防ぎ、DXの導入をスムーズに進められるようにすることが、DX診断士の役割です。
DXを支える人材の育成に貢献
――どんな人たちに資格取得をお勧めしますか?
井上 最近DXへの関心が急速に高まる中で、SIerや人材派遣会社などの主催で関連セミナーが多数開催されています。企業との関わりが多い税理士や中小企業診断士に加え、ITコーディネーターや「P(プライバシー)マーク」関連業務を担当している情報感度の高い人などに受験していただきたいですね。
――試験でも実務でも、かなり応用力が求められそうです。
井上 2020年12月に行われた第1回試験では121名が受験し、DX診断士19名、DX診断士上席9名を認定。合格率は23%でした。今後、動画による「DX診断士講座」(講座内容参照)も行う予定で、DX診断士を目指す方はもちろん、社内でDXを担当している方、IT系の派遣会社に登録している方にも学んでいただけます。資格取得のための学習に役立つ書籍も出版する予定です。
――次回のDX診断士試験の予定は?
井上 2回目の試験は9月9日にオンラインで実施予定(受験時にネットでの検索可)、8月31日まで応募が可能です。詳細はDX診断士の公式ホームページ(https://fintech-garden.com/dx.html?2021042801)を参照して下さい。
――今後の展開は?
井上 DXシステムの導入による企業の課題解決には、決まった答えはありません。その意味で、いかに多くの事例を研究し、知見を集めるかが、DXを推進していくうえでの鍵になると思います。そのためにも、今後より多くのDX診断士が育っていく中で、お互いが学び合えるようになるといいですね。
DX診断士を、社会に広く認知されている「ITコーディネーター」と肩を並べる規模に普及させていくことを目標にしています。
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「DX診断士」試験合格者に授与されるプレート
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「フィンテックガーデン」公式ホームページ
(公式講座の内容)
【オンライン公式「DX診断士講座」の内容(予定)】
1.DXとは何か
2.経産省のDX推進指標の理解
3.DXの導入準備
・第1段階 社員とのコミュニケーション
・第2段階 社長がやりたいことの確認
・第3段階 各部署の担当者が今やっていることの確認
・第4段階 作業担当者が今やっていることの確認
・第5段階 社長への説明と代表担当者の任命
・第6段階 社員への説明会の開催
・第7段階 社長から社員へのDX導入の指示
4.DXの導入
・第1段階 適切なシステムの選定
・第2段階 システムの確認
・第3段階 要件定義の作成
・第4段階 各部署の担当者への説明
・第5段階 社長から各部署の担当者へDX導入の指示
5.DXの利用
・DXは永遠に完成しない
・セキュリティの確保
「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」

いのうえ たつや
1985年 法政大学経営学部卒
1985年 株式会社日本デジタル研究所 入所
1991年 株式会社フリーウェイジャパンを設立し代表取締役に就任
2019年 一般社団法人フィンテックガーデン 事務局長に就任
2020年 DX診断士協会 事務局長に就任 

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