■今夏にも商品化
福祉用のロボットアーム。コップを使って水などを飲むといった身の回りの動作を介助者に頼ることなく実施できる
ロボットメーカーのライフロボティクスは、世界初となる肘関節のないロボットアームを開発した。肘関節がないことによって、コップをつかんで自分の口元にこぼさずに持ってくるという、従来のロボットアームが苦手としていた複雑な動きが、スムーズにできるようになった。また工場の生産ラインの作業員の近くで、安全柵不要で使用することができる。
きっかけとなったのは尹祐根(ユン・ウグン)最高技術責任者(CTO)が、難病の知人のために開発しようと思い立ったことだった。知人は腕が不自由なため、ヘルパーの介助なしでは食事もできなかった。
2006年から開発に着手する。車いすや食卓など生活の中のさまざまな場所に取り外し可能な、コンパクトで軽いロボットアームを目指した。周囲にぶつかる危険を避けて、安全を確保するために肘をなくすことも思いつく。
肘関節をなくす技術は産業技術総合研究所が開発し、「直動伸縮機能」として特許を取得し、同社に技術移転された。アームは普段はロボット本体に収納され、必要なときは亀の首のように伸びてくる。
アームを伸ばすと上下2本のばらばらのブロックが、互いにジッパーのようにかみ合うことによって、1本の固い棒になって強度を増す。縮めると2本に分かれて本体に収まる。
また世界で初めてステッピングモーターを搭載した。従来のロボットアームに使用されていたモーターは大型で本体に内蔵できなかったが、小型軽量であるため従来品に比べ約70%軽量化され、低コスト化も実現した。
福祉用としては専用アタッチメントを付ければワンタッチでどこにでも着脱することができ、飲料を飲む、家電のリモコンを操作するという動作を介助者なしで行うことができる。産業用としては作業員と隣り合ったラインで仕事をすることができるので、低コストでの生産が可能になる。両製品ともに各関節を電源不要で保持することができるセンサーを搭載しており、電源を入れるごとに初期動作を設定せずに運用することができる。
14年夏頃からの販売を予定している。尹CTOは「産業用を中心に初年度は売り上げ5000万円を目指し、年ごとに売り上げ倍増を計画している。福祉用は助成金がないため厳しいかもしれないが、商社と組んで助成金のあるオランダへ売り込む」と話している。
福祉用の重量は8キロで、産業用は9キロ。それぞれ1台500万~700万円。年間100台程度の生産規模になれば、300万~400万円に引き下げる予定だ。(佐竹一秀)
【会社概要】ライフロボティクス
▽本社=茨城県つくば市千現2-1-6 つくば創業プラザ205
▽設立=2007年12月
▽資本金=1000万円
▽従業員数=8人
▽事業内容=福祉機器および福祉システムの研究開発、ロボット機器およびロボットシステムの研究開発など
「フジサンケイビジネスアイ」