インフォコムの映像伝送システムを装備した救急車の車内。天井に設置した小型カメラで搬送患者を真上から撮影し、
データセンター経由で受け入れ先の病院などに配信する
■IT化で売上高2倍目指す
IT(情報技術)システムの開発販売を手がけるインフォコムは、ヘルスケア事業を強化する。これまでは放射線科の画像管理システム関連や医薬品情報データベースなどソフトウエア販売が主力だったが、救急医療や手術部門などに相次いで参入した。今後も事業領域の拡大を続け、2017年3月期のヘルスケア事業の売上高で現在の約2倍にあたる100億円を目指す。
医療機関のIT化の進展を踏まえ、重点事業として掲げているのがヘルスケア事業。最高人事責任者でヘルスケア事業本部の大垣喜久雄本部長は「将来性がある分野については、企業や事業の買収なども積極的に行う」と語る。
新規事業の一つが、昨年12月に販売を開始した救急車車内映像伝送システムだ。救急車にカメラを設置し、搬送中の患者の映像を撮影。心拍や血圧などの生体情報も含め、3G携帯電話回線(ナローバンド)経由で消防センターや救急病院などのパソコンに即時配信する。10年度に実証実験を行った宮崎県日向市では、配信情報に基づき患者の容体を判断して搬送先を変更し、救命につながった事例もあった。大垣本部長は「搬送中の状況を映像で病院側が把握できることに評価が集まっている」という。
システムを開発したのはITベンチャーのB.b.design(神戸市中央区)。データの大量配信には不向きなナローバンド配信ながらも、アナログテレビ映像並みの鮮明な画質と色の再現力を確保した点に強みがあると判断、事業買収した。
導入費用は救急車1台当たり最低500万円で、このうち15%程度を年間運用費と想定する。販売先は消防本部を管理する地方自治体や連携先の病院で、すでに計90台の引き合いがあるという。全国で約7000台の救急車が稼働しているが、5年後には700台以上への納入をねらう。また、同システムは遠隔医療や在宅医療にも転用可能とみて、システム開発を進める方針だ。
このほか、他社製の手術室での映像記録・共有システムの販売を手がける一方、手術部門の運用管理システムなどを自社開発した。
手術に関する情報が一元管理できることを武器に13年度から3カ年で100機関での採用を目指す。
大垣本部長は「手術部門関連は競合も多いが、医療機器メーカー製のITシステムは電子カルテと連携しにくいため、多くの医療機関からの要望を受けて事業化に踏み切った」と事業拡大に自信を示す。(日野稚子)
「フジサンケイビジネスアイ」