山縣秀司理事長
■医療機器 地域引っ張る原動力に
成長を続ける医療機器関連市場の開拓を目指す、さいたま市内のものづくり企業。これを後押しするのが、市内中小企業の支援機関「公益財団法人さいたま市産業創造財団」だ。初の民間企業出身理事長として7月に就任した山縣秀司氏は、市内の有望技術を成長市場に結びつけたいと意気込む。
--日産自動車を経て、中小企業を支援する側に立ったが、製造業をどうみているのか
「日本にしかできない技術はいくらでもある。精密加工で独特の形状や性能を持つ小さな部品を作ることができる。一方、試行錯誤を重ねて技術間の相互調整を行い、一番良い答えを割り出す『すり合わせ』も強みだ。ローテクだが、部材を論理的に組み立てれば目的の機能を出せるハイテクとは異なり、まねが難しい。グローバル競争下では、時代の先を読み、強みを追求するしかない」
--市内製造業の状況は
「約3000社のものづくり企業がある。その1%の約30社について、市は独創性や革新性に優れた研究開発型企業を『さいたま市テクニカルブランド企業』として認証し、財団と共同で支援している。どの企業もリーマン・ショックなどの苦境の波にさらされながらも生き延び、成長意欲がある。約20社を回り、そう実感した」
--その力を、医療機器関連市場の開拓にどうつなげるのか
「金属やセラミックを微細加工する企業もあれば、光学ガラスやめっき技術などが得意な会社もある。これらを集積し力を合わせれば、新しい分野に挑戦できる。現在、テクニカルブランド企業を含む14社で構成される『さいたま市医療機器研究会』が、医療機器のニーズを探るため、医師ら医療従事者と情報交換している。そうした場を作るパイプ役が財団の役割だ」
--国際連携も模索している
「独バイエルン州にある医療と機械工学関連の企業クラスター(集積)と昨年から技術交流しており、日本の試作品をドイツに売り込む案件もある」
--当面、解決すべき課題と目標は
「すでに、エンジン部品の日本ピストンリング(さいたま市中央区)が歯並びの改善に使う『歯列矯正器具用部品』の商品化を目指すなど、新技術の芽が育ちつつある。まずは、多様な新芽が次から次へ“自生”し、開花する流れを作る。その次には、開発品を試作するラボ(実験室)を考えたい。財団の目標は、どの医療機関でも日常的に使う技術を数多く生みだし『地域を引っ張る原動力』となることだ」(臼井慎太郎)
【プロフィル】
山縣秀司 やまがた・しゅうじ
東大工学部卒。1969年日産自動車入社。91年技術開発センター次長、99年常務。カルソニックカンセイ副社長などを経て、2012年7月から現職。65歳。広島県出身。
【財団概要】
▽本社=さいたま市中央区下落合5-4-3 さいたま市産業文化センター
▽設立=2004年
▽基本財産=2億円
▽職員=39人
▽事業内容=市内中小企業の経営・創業支援や市融資制度の相談・受け付けなど
「フジサンケイビジネスアイ」