■“心の回復力”を高める研修事業に力
ピースマインド・イープ 荻原国啓社長
仕事や生活上の困難に柔軟に対応して心理的な痛手から回復する「レジリエンス(精神的回復力)」が、産業界で注目を集めている。東日本大震災や欧州債務危機など、苦難が相次いでいるからだ。メンタルヘルス(心の健康)対策支援のピースマインド・イープの荻原国啓社長は、心の回復力を高める企業向け研修事業「レジリエンスビルディング」の拡大を狙う。
--レジリエンスとは
「竹のように曲げても元に戻る『しなやかな心の強さ』を意味する心理学用語だ。2008年秋のリーマン・ショックを機に世界同時不況に陥った際、欧米企業の間ではレジリエンスによる精神的な回復・成長の必要性を思い知らされた」
--日本ではどうか
「昨年7月に行われたサッカー女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会決勝で、(日本代表の)なでしこジャパンは、先取点を取られながらも接戦の末に米国を下し初優勝を決めた。その際に米紙ニューヨーク・タイムズが一面で『なでしこはレジリエンスを発揮した』との見出しを掲げ、他の海外メディアもたたえた。一方、国内企業の間でも、東日本大震災を機にレジリエンスを意識し始めた。震災後に約50社を訪問し従業員の心のケアを行う中でそう感じた」
--研修事業の目的は
「経営環境の変化に適応する力を高めることだ。この分野で実績をもつ英メンタルヘルス対策会社『イー・ジェー・ティー・アソシエイト』との間で昨年、日本にレジリエンス研修を独占提供する契約を結んだ。英社は、ロンドン五輪の受け入れ態勢を整えた消防庁や交通局などの従業員ストレス対策を支援し、効果をあげた」
--研修対象と仕組みは
「対象は役員や管理職、若手社員らだ。仮に『環境変化への適応に消極的な執行役員・部長クラスを変えたい』というメーカーから依頼を受けた場合、まず研修参加者にレジリエンスの自己評価に挑んでもらう。そこで『柔軟な思考がない』という弱みに気づいた参加者は『反対意見を吸収し冷静に考える』という目標を掲げ、1カ月間取り組む。これにより、変化に適応する意識を醸成していく。研修1回当たりの価格は、20人程度の場合で約50万円だ」
--レジリエンスが高い人材の需要とビジネス目標は
「これだけ経済のグローバル化が進み、予測困難な苦境が増えてきただけに、需要は増える。レジリエンスビルディングの導入企業は、100社の獲得を目指す」(臼井慎太郎)
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【プロフィル】
荻原国啓
おぎわら・くにひろ 慶大経済学部卒。在学中に人事コンサルティング会社などに従事後、1998年にメンタルヘルス対策事業のピースマインドを起業。2011年4月に同業のイープと経営統合し、ピースマインド・イープ社長に就任。34歳。東京都出身。
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【会社概要】
ピースマインド・イープ
▽本社=東京都中央区銀座3-10-6 マルイト銀座第3ビル
((電)03・3541・8660)
▽創業=1998年
▽資本金=9025万円
▽従業員=65人
▽事業内容=企業・組織向けメンタルヘルス対策支援事業など
「フジサンケイビジネスアイ」