昨年の台風15号などで大きな被害を受けた千葉県の被災地を支援しようと、信用金庫が連携して企画した県産落花生を使った焼酎が5日、販売される。この焼酎を作った熊本県人吉市の酒造会社も今年7月の豪雨に見舞われており、「被災地をつなぐ焼酎」となった。
千葉県の森田健作知事(右から2人目)に「絆華(きのはな)」を贈呈する城南信用金庫の川本恭治理事長(同3人目)ら=10月19日、県庁
「絆華(きのはな)」と名付けられたこの焼酎は、千葉県上総地方産の「千葉半立(はんだち)」と呼ばれる落花生が原料。アルコール度数は25度で、口に含むと落花生の香りや味が広がる。焼酎の企画や開発を手掛けた落花生工房かずさ屋(木更津市)の鈴木久登志社長は「おつまみがいらないほどだ」と話す。
落花生は同社が契約している袖ケ浦市の農園から仕入れた。焼酎に使うために従業員4人がかりで2週間かけて薄い皮を全て手でむいた。3月には、むいた豆約200キロを、「球磨焼酎」で有名な熊本県人吉市の深野酒造に運んだ。
蒸留が始まって約4カ月となる7月、突然の豪雨災害に見舞われた。人吉市とその周辺にある球磨焼酎27蔵のうち、4蔵は土砂が流れ込んだ影響で再開できないという。その中で、落花生焼酎を蒸留していた深野酒造は奇跡的に難を逃れた。
焼酎の企画には、複数の信金も関わっている。全国の信金が参加する販路開拓支援組織「よい仕事おこしネットワーク」の事務局を務める城南信用金庫(東京都品川区)と館山信用金庫(千葉県館山市)が、「地域の復興支援でできることはないか」(城南信金の川本恭治理事長)と考えたのが始まり。
全国の生産量の8割を占める千葉県産の落花生を使った商品というコンセプトはすぐに決まったが、なかなか引き受けてくれるところが見つからなかった。鈴木社長も「正直、できるのかなと思った」と話す。でも「千葉が元気だということを全国に知ってもらえるのであれば」と引き受けた。
販売に先立ち、千葉県庁を訪れた川本理事長から瓶を受け取った森田健作知事は「被災地を助けようとの厚情に改めて感謝したい。飲みたいと思っており、楽しみにしている」と話した。
絆華は720ミリリットル入りの瓶計1000本が製造され、5、6日に東京都大田区の複合施設「羽田イノベーションシティ」で開かれる「よい仕事おこしフェア」で、1本3000円で販売される。売上高の一部は千葉、熊本両県の被災地に寄付される。(松村信仁)
千葉県産落花生を使った焼酎「絆華(きのはな)」
「フジサンケイビジネスアイ掲載」