スパイダー・イニシアティブ 森辺一樹社長
少子高齢化で国内市場の先行きが見通せない中、アジアなど海外に活路を見いだそうとする企業が増えている。こうした中、主に中小企業の海外販売支援を手がけるスパイダー・イニシアティブの森辺一樹社長は「多くの製品がコモディティー化して価値の源泉が(日本企業が得意とする)『作る力』から(不得手な)『売る力』に移行している」と指摘、マーケティングの重要性を説く。その上で、アジア進出を成功に導くには国内市場で0.5%のシェア獲得が最低ラインとの認識を示した。
売る力が弱い理由は
「日本は高い技術力で高付加価値製品を市場に送り出してきた。1P(プロダクト=製品)戦略でグローバル化に成功したわけだが、(メード・イン・ジャパン)プレミアムが通る時代は終わった。アジアで日本向けのハイスペック製品を売るのはおかしいし、中国や韓国勢の台頭で製品がコモディティー化し『日本製だから』『高品質だから』で売れる時代ではなくなった」
にもかかわらず技術に固執している
「過去の成功物語にとらわれ、日本人が大好きな技術神話にとりつかれている。ビジネスより技術力を競い合っている。経営的には(製品を生み出す)技術をカネにかえて美になるわけだが、日本は技術が美。企業経営の中心はマーケティングではない。『作る』から『売る』へのトランスファー(移転)ができていない。海外は4P(プロダクト、プライス=価格、プレイス=地域、プロモーション=販売促進)戦略で高いシェアを獲得している」
これから海外進出に乗り出す中小企業に求められる戦略は
「進出しやすいと感じている中小企業は少なくないが、やみくもに出ていっても勝算はない。自分たちは何がやりたいのか分かっておらず、グローバル人材など経営資源も持っていない。特に零細企業はグローバル化を目指す段階ではない。その前に日本でやることがある。それはシェアで、まずは0.5%を目指すべきだ。それだけ知名度は高まり、アジアでも売りやすくなる。このチャンスを逃すのはもったいない」
戦略を持つべきだ
「海外進出の目標を明確化し、戦略を提示し、実行する人材をアウトソーシングでも構わないが派遣することができれば市場獲得につながる。ただ投資対効果を示すROI(投資利益率)で成果を出すには10~20年の長期的視野が必要。リーダーシップを持つオーナー企業は戦略を最適化できればチャンスだ。戦略性がないといずれ天井にぶつかる。足りないところはアウトソーシングを活用して埋めればいい」
中小企業の海外進出に当たりスパイダーの役割は
「企業の海外販売そのものを請け負う事業と、参入戦略と販売チャンネル構築支援のコンサルティング事業を展開。製品の品質はいいが、マーケティングは苦手で売ることが弱い日本企業に対する“実務”、つまり顧客と一緒にやったり、代わってやったりすることに徹する。支援する際に『投資にカネがかかるので1年間腹をくくってやれるか』を聞き、リスクを取る覚悟があるなら最大限応援する。目利き力を持っているので、失敗確率が20%あるなら応援しない。こうした中小企業支援の姿勢がぶれることはない」
【プロフィル】
森辺一樹 もりべ・かずき
法政大学経営学部卒。1999年大手医療機器メーカーに入社。2002年香港で新興国に特化した市場調査会社ストラテジック・デシジョン・イニシアティブを創業し社長就任。13年スパイダー・イニシアティブを設立し社長就任。44歳。神奈川県出身。
【会社概要】
スパイダー・イニシアティブ
▽本社=東京都港区芝3-8-2-2502
▽設立=2013年1月15日
▽資本金=3000万円
▽従業員数=20人(海外含む)
▽事業内容=日本企業の海外進出支援。
「フジサンケイビジネスアイ」