経営戦略的な目線で制度設計必要、企業に迫られる「働き方改革」

与野党間における激しい論争を経て、いわゆる「働き方改革関連法案」が成立した。少子高齢化は生産年齢人口の減少をもたらす。のみならず、高齢化した親を持つ働き盛りの世代は、しばしば長期間にわたる介護をする立場になるが、わが国の従来型の労使慣行の下では、親の介護と仕事を両立することは難しい。(弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士・古田利雄)

介護や育児のためにフルタイムで働くことが難しい人に働いてもらうためには、働くモチベーションが必要だから、正規・非正規の待遇格差を解消しなければならない。

このような背景によって、働き方改革関連法案は長時間労働の是正、多様な働き方の実現、正規雇用か否かに関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金の原則)と、これらの継続的推進を骨子とするものとなった。

バブル崩壊(1991~93年)以降、日本企業は新卒および正規雇用を絞ることによってコストを削減してきた。バブル崩壊前は2割未満だった非正規雇用者は増加傾向をたどり、現在ではその2倍となっている。

正規雇用か否かに関わらない公正な待遇の確保の要請によって、同一労働であれば、原則として、同様の賃金水準の支払いや昇給をすることになる。通勤、住宅、精勤などの各種手当も差別的取り扱いは許されないし、社員食堂や保養施設の利用などの福利厚生も不合理な差別は許されない。

このため人件費が増大し、それに伴って営業利益も悪化することになりかねない。この法律では、企業は2020年4月(中小企業は21年4月)までに、有期雇用労働者の均等待遇に関する規定を整備しなければならないことになっているが、最近、最高裁は、同一労働であれば同一待遇であるべきだという趣旨の判断をした(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)。

同一労働を差別的に取り扱うのは労働法制との抵触関係だけでなく、法の下の平等を定める憲法14条の趣旨からも非合理だからである。最高裁がこのような判断をしたことによって、法律の施行期間前であっても労働者から不公平待遇について、訴訟を提起されると企業側が敗訴するリスクがある。企業は早めに給与体系を含む待遇の全体像について、法令違反にならないように準備をする必要がある。

厚生労働省は「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表し、同一労働であっても、待遇格差が非合理でないとされるケースも紹介している。これは最低ラインを知るための参考になる。

多くの企業は、就業規則、給与・福利厚生規定の変更を迫られるが、その実施には経営戦略的な目線が欠かせない。「給与」「福利厚生」とは何か。企業が継続的に発展するための労働分配率はどうあるべきか。これらは労使間および個々の労働者によって、同じではないのが一般だ。当該企業で、どのように解釈すべきかを十分に話し合って労使双方にとって建設的な制度設計となるようにすべきだ。

【プロフィル】
古田利雄ふるた・としお
弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士。1991年弁護士登録。ベンチャー起業支援をテーマに活動を続けている。東証1部のトランザクションなど上場企業の社外役員も兼務。56歳。東京都出身。

「フジサンケイビジネスアイ」

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