マレーシア・マラッカ市で実施した「くりんかロード」の試験施工の記念標識をもつ楳木真一くりんか副社長(右)とザイナル・マラッカ市長=7月14日、マラッカ市
くりんか(旧環境緑化保全コンサルタント、福岡県宗像市)は石炭灰(クリンカアッシュ)を使用し、雨水を透水して保水する環境創造型多機能舗装「くりんかロード工法舗装」の海外市場開拓に本格的に乗り出した。第1弾として来春にもマレーシアの現地パートナーと技術移転に伴うライセンス契約を結び、同国でくりんかロードを普及させる。石炭火力発電所から排出される石炭灰のリサイクルに加え、保水の気化熱作用によるヒートアイランド抑制効果に注目が集まっているからで、「マレーシアを皮切りに進出先を増やす」と意気込む楳木真一副社長に今後の展開などを聞いた。
◆石炭灰を再利用
--くりんかロードとは
「石炭灰の高吸水性に着目、産業廃棄物として埋め立て処理されてきた石炭灰を原料にセメントと配合、雨水を透水する層と保水する層で構成される工法を開発した。『大地と呼吸する環境舗装』と売り込んでいる」
--舗装が呼吸するのか
「表面層は雨水を透過して保水層に誘導。ここで雨水を貯(た)めるが、保水量は保水層の体積の50%と潤沢なので雨水を瞬く間に吸い多量に保水する。ゲリラ豪雨による浸水被害も軽減できる。一方、晴天になると貯めた雨水が蒸発、気化熱によって表面温度が低下しヒートアイランド現象を抑える。国内では公園などの遊歩道や広場、中央分離帯など幅広く施工されており、地元・九州では施工面積が10万平方メートル、石炭灰リサイクル量で6000トンに達した」
--呼吸機能が海外でも注目を集めている
「熱帯モンスーン気候で高温多湿の東南アジアにとって、くりんかロードの圧倒的な保水力は魅力的なはずだ。このため九州環境エネルギー産業推進機構(K-RIP)と組んでマレーシアで技術移転事業を推進している。マレーシアではマラッカ市が管理する総合運動公園で7月9~15日、環境に配慮した舗道をつくるためのパイロットプロジェクト(試験施工)を実施した。見学会には市長とナンバー2の秘書長が出席、関心の高さを改めて知った」
--その理由は
「マレーシアは石炭火力発電への電力依存度が50%と高く、排出される石炭灰はコストを払って埋め立て処理してきた。これをリサイクルして有価物として利用できる。またマラッカ州は環境技術をマラッカからマレーシア、さらに東南アジアに普及させる計画を持っており、くりんかロードがその一翼を担えると期待しているからだ」
◆“地産地消”モデル
--今後の展開は
「6カ月程度の観察期間を経て環境局(DOE)が正式にビジネスとして認めるかどうか判断する。今回のプロジェクトを通じ現地資材・人材による施工を経験したので、DOEから商用ライセンスの認可が下りてから、くりんかロードの技術移転で覚書を交わした現地パートナーのメンシリン・グリーン・エナジーと来年3~5月にライセンス契約を締結。石炭灰の調達から施工まで現地で完結できる“地産地消”のビジネスモデルを構築したい。実現すれば石炭灰の有効利用に加え、リサイクル産業の振興と雇用創出も果たせる」
--他国の現状は
「モンゴルではウランバートル市で事業化調査を終え、同国で発生する石炭灰が使えることが分かった。今はライセンス契約を前提とした協議の開始待ちの状態だ。ベトナム、台湾でも商談を開始した。くりんかロードのマーケットになりうる中国やインドネシア、タイなどにも進出機会を求めていく」(松岡健夫)
【プロフィル】
楳木真一 うめき・しんいち
北九州市立大経済学部卒。1992年日立製作所入社。ITベンチャー企業を経て2012年環境緑化保全コンサルタント(現くりんか)。13年取締役、15年常務、17年5月から現職。48歳。福岡県出身。
「フジサンケイビジネスアイ」