OneTapBUY社長CEO林和人さん
One Tap BUY社長CEO・林和人さん
スマートフォンにダウンロードしたアプリを使うことで、「1000円で株式を買える」証券会社を営んでいる。若い頃は、香港を舞台に証券ビジネスで大活躍。40歳が迫り、中国株専業の証券会社を設立するも志を遂げることはできなかった。50歳を前にして再び立ち上がり、2度目の起業。誰でも気軽に株を買えることを目指し、新たなサービスの考案に取り組む日々だ。
--One Tap BUYとはどんな会社なのか
「ひと言でいうと、『1000円で株式投資ができる、日本初のスマホ専業証券会社』。日本では株式投資に必要な最低金額が数十万円になることが多く、証券会社の顧客層も中高年が主体です。ただ、株式投資は長期投資を前提として若い頃に始めた方がメリットは大きい。初心者や働く世代に向け、株式投資のハードルを下げて利用していただくのが狙いです」
--1000円にした理由は
「2016年6月にサービスを開始した当初は、1万円で米国株を売買できるという内容でした。それはそれで画期的でしたが実際にやってみると、例えば学生などでは1万円でも株式投資は難しいという声があり、年明けに1000円に下げました。すると当社の顧客口座数が一挙に増え、足元では3万口座弱あります。今年2月からは従来の米国株に加え、日本株の上場投資信託(ETF)も扱っています」
「岡三証券に入りました。当時は、証券業界が国際化を加速させていた時期です。新入社員で国際部に配属された25人の多くが欧米志向の中、私はあえて香港を志願し、すぐにかなえられました。電話を1日70件かけることを自らに課し懸命に開拓していると、たくさんの顧客を抱えるようになりました。30歳のときに岡三を辞めましたが、その後も香港で仕事を続け、香港証券取引所の日々の売買高の3~5%を動かすまでになりました」
--挫折を味わったことも
「1998年に個人資金で台湾系の証券会社を買収して独立し、衣替えして2002年に中国株専業のユナイテッドワールド証券を設立しました。最初の5年ほどは好調で、上場も見えていましたが、システム障害を起こして08年に行政処分を受け、直後のリーマン・ショックが追い打ちとなって赤字続きとなり、瀕死(ひんし)状態に陥りました。13年には同社をフランス企業に売却して身を引きました」
--One Tap BUYは2度目の起業となる
「リベンジ(雪辱)というか、『ここで終わりたくない』との思いがあったからです。前の会社がうまくいかなかった原因は外部環境というよりも、自分自身にあったと悟りました。また、スマホが普及し、システムもクラウド化が進んだことで、証券業界に新たな波が来たと感じたことも大きな理由です。ITと金融を融合するフィンテックを活用して、日本における少額投資のハブ(中核)を担いたいです」
(森田晶宏)
【プロフィル】林和人
はやし・かずと
関西大商学部時代は焼き鳥屋のアルバイトで学費や生活費を稼いだ。卒業後は岡三証券に入社し、すぐに香港の現地法人に出向となり営業マンとして活躍。同社を退職後、複数の証券会社の香港法人をへて、2002年に中国株専業のユナイテッドワールド証券を設立。同社を退いた後、13年にアプリを手掛けるマイバンカーを設立し、社名をOne Tap BUYに変更して証券会社としてスタート。現在は社長最高経営責任者(CEO)。大阪府出身。
≪DATA≫
【多趣味】ゴルフ、サッカー、サーフィン、登山、温泉めぐりなど、アウトドア派。「常に世の中の新しい動きにアンテナを張り、ビジネスに結びつけられないかと考えてしまいます」
【アプリ開発】スマホやタブレット端末向けのアプリ「3D Body Pocket」の開発を手掛けている。「53歳になり、ヘルスケアについて考えることが多くなりました。平日の夜や土日はアプリの開発に時間を割いています」
【実は大食漢】昨年2月には某有名飲食店チェーンで、その月に食べたステーキの量が約7.9キロに達し、一時は全国8位になった。「ランチだけでこの数字だったので、ディナーでも通っていればトップ3に入れたかもしれません」
【徹底主義】ダイエットに臨んだときは約1カ月半で体重を10キロ減量。今でもジム通いと食事管理でしっかり体形維持に努めている。「たばこは吸いません。お酒も数年前にやめてから口にしていません」
【尊敬する人物】「心身統一法」を唱えた思想家の中村天風。「仕事でつらくなったときなどに、(著作の)『運命を拓(ひら)く』を何度も読み直しています。そうすると乗り越えられます」
「フジサンケイビジネスアイ」