脳梗塞や脳卒中などといった脳・神経疾患後のリハビリに照準をあてた新ビジネスが続々と立ち上がっている。2018年度の医療・介護報酬の同時改定を機に、病院内のリハビリ施設をなくし、外来の通所型リハビリ施設に一本化される動きがみられるとの見方が広がっていることが背景だ。各社とも潜在的な需要があるとして、新規顧客の獲得などに力を入れる。
ワイズ(東京都中央区)は、脳梗塞の後遺症に特化した通所型リハビリ施設「脳梗塞リハビリセンター」を首都圏で展開する。個々の症状や目的にあわせたリハビリのプログラムを提供している。
ワイズのリハビリ。個々の利用者のニーズに合わせてプログラムを組む(同社提供)
通常のリハビリは原則、トレーナー(指導者)1人に対し、数人の利用者が訓練を行うグループワークが基本だが「例えば、職場復帰やスポーツをしたいなど、具体的な目標を持っている人にとっては、グループワークでは物足りなさを感じる」(早見泰弘会長兼CEO)という。
同社では、まず利用者と相談しながらリハビリの目標を設定。123項目のチェックシートで身体の状況を詳細に把握し、必要なリハビリのプログラムを組む。プログラムは個人差があるものの、45分のはり・きゅう、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による施術を60分受けた後、トレーニングマシンを使った運動を30分行う。これを週2回のペースで、3~6カ月ほど続ける。
現在、東京都文京区など関東地方に5カ所の脳梗塞リハビリセンターを展開しているが、来年3月までにはさいたま市や横浜市にも出店を計画している。
一方、異業種からの参入もみられる。いずれも脳梗塞や認知症などの高齢者が入所する介護施設などがターゲットだ。生花向け保水剤の製造販売を手掛ける栄和プランニング(さいたま市南区)は、介護施設用フラワーアレンジメント(生け花)セット「小さな花畑」を昨夏から発売し、これまで約3000セットを出荷した。秋はススキや菊など、季節ごとに6種類の切り花をそろえた。準備から片付けまで1時間程度でできる。
専用の透明カップに特殊保水剤を入れた後、穴が空いたふたをかぶせる。あとは好きな切り花を5~12センチの長さにカットしてカップに差す。完成後は2、3日に一度、スポイトで水やりをするだけで、20日~1カ月は鮮度が保つ。
小山和之社長は「好きな色の花を選ぶことそのものが、自己決定や自己責任を伴い、頭を使う行為にあたるようだ」と話す。1度申し込みのあった施設から、再度申し込みが寄せられることも少なくないという。
特殊ねじ開発などを手掛ける橋本螺子(浜松市東区)の立体造形玩具「ねじブロック」を昨年7月に発売、これまで約2000セットが売れた。複数のねじをはめたり、つなげたりすることで、動物などの造形物を作る。リスやザリガニなど30種類以上は作れるという。
介護への用途拡大を図る橋本螺子の「ねじブロック」
もともとは「多くの人にものづくりの楽しさを味わってほしい」(橋本秀比呂社長)との思いから開発されたが、ねじを扱う際に指先や手首をひねったり、動かしたりすることで脳の機能の活性化を促す可能性があることから、地元の浜松医科大学や医療機関などと共同で、ねじブロックを使ったときの脳波を調べる実験を近く実施する。
厚生労働省によると、介護産業を左右する介護給付費の総額は2013年度に9兆4000億円だったが、25年度には約20兆円に膨らむ見込みで、電力業界の市場規模に匹敵する。介護ニーズの多様化がさらに進むことも考えられ、リハビリ関連ビジネスが続々と誕生しそうだ。
「フジサンケイビジネスアイ」