オンライン旅行販売を軸に、インバウンド(訪日外国人観光客)向けの旅行販売、海外でソフトウエアを製作するITオフショア開発の3事業を手掛けるエボラブルアジアは創業以来、売上高で約35倍の急成長を遂げている。3月には東証マザーズに上場したことに加え、政府がインバウンドの2020年目標を4000万人に引き上げたことで、事業に対する追い風が強まっている。吉村英毅社長は「『国内航空券のことならエボラブルアジア』というブランド力を身に付けたい」と意気込む。
エボラブルアジア・吉村英毅社長
--オンライン旅行会社(OTA)の大手だが事業規模は
「オンライン旅行事業で営業利益の80%以上を稼ぎ出している。国内オンライン旅行の市場規模約2兆5000億円のうち国内航空券は約2300億円を占め、当社は取扱高200億円と業界首位だ」
--多様な販路を持っている
「格安航空会社(LCC)を含めた国内線運航14社すべてと、OTAとしては唯一直接契約している。顧客は全航空会社の全券種を比較して購入できる。使う側にとって検索しやすく最も利便性が高い。今後、外資系LCCなどの就航が増えていくと、さらにニーズが高まるだろう。個人向けだけでなく法人向けにも販売している。例えばオフィス用品販売のアスクルに対しては、同社のブランドイメージに合わせたホームページを作成し、運営している。法人の出張向けにも各種チケットを販売することで、事務手続きの手間とコスト削減に貢献する」
--インバウンド対応にも力を入れている
「訪日旅行サイトに商品を提供し、多言語化にも対応している。英語はもちろん、中国語、韓国語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語といったニーズの高い言語を網羅している。海外の旅行代理店は日本までの航空券は販売しているが、日本国内の交通機関のチケットは販売していない。今後はホテルや現地ツアーなどの商材を増やしていく」
--ITオフショア開発事業も好調だ
「ベトナムのハノイ、ホーチミン、ダナンで約500人を雇用している。東南アジアでは日系で業界最大規模となっている。日本の2~4割の給与水準の労働力を活用してコスト削減を図る。日本のシステム開発市場規模は10兆円とされるが、オフショア比率は1%の1000億円にすぎない。米国では10%以上なので、日本も1兆円以上に拡大する余地があるとみている」
--民泊ビジネスにも参入した
「民泊の規制緩和による今後の市場拡大を見込み、事業者に対して旅行商品を販売するサイトを運営している。また多言語予約受付も開始した。これから業務提携を加速させてオンライン旅行事業の取扱高を、現在の200億円から20年までに1000億円に成長させたい」(佐竹一秀)
◇【プロフィル】吉村英毅
よしむら・ひでき 東大経卒。2003年Valcomを起業。07年5月に旅キャピタル(現・エボラブルアジア)を設立し、現職。34歳。大阪府出身。
◇【会社概要】エボラブルアジア
▽本社=東京都港区芝3-5-5 芝公園ビル6階
▽設立=2007年5月
▽資本金=10億1813万円(払込資本18億4126万円)
▽従業員=552人(16年4月末時点)
▽売上高=27億5400万円(15年9月期)
▽事業内容=オンライン旅行販売、訪日旅行販売、ITオフショア開発
「フジサンケイビジネスアイ」