□AGSコンサルティング・廣渡嘉秀社長
経営者が引退を考える年齢にさしかかっても後継者に引き継げず、事業の存続が危ぶまれる中小企業が増えている。
そんな中、独立系の総合会計事務所、AGSコンサルティング(東京)は、グループの税理士法人と連携して、事業の引き継ぎを成立させたうえ、その後の経営基盤づくりも支援する「経営承継サポート」の提供を始めた。
主に中小企業が対象で、事業の存続と、存続後の経営体制をまとめて支援する。廣渡嘉秀社長は「経営の承継こそ事業承継の本丸」と話す。
廣渡嘉秀社長
--新たに「経営承継サポート」を打ち出した背景は
「中小企業の事業承継問題は深刻だ。数の上で日本企業の99.7%を占めるうえ、多くのオーナー経営者が後継者への引き継ぎができずにいる。経営者の高齢化も進み、廃業も増加している。このままでは日本経済全体に打撃だ」
--その解決に名乗りを上げた
「幸いわれわれには、税務申告だけでなく、新規株式公開(IPO)、ターンアラウンド(中期的収益改善)など多角的にオーナーと向き合ってきた経験がある。グループをあげてその経験をフル活用すれば、経営の承継をフルサポートできると考えた」
--具体的にはどういったことをするのか
「項目をあげるなら、経営環境分析、資本政策、組織構築、経営計画の策定、後継者を含む教育・研修、モニタリングなどになる。ただし、これ以外にも中小企業の経営の承継に必要な要素はすべて提供する」
--「事業承継」の支援サービスは他者も出している
「他とは本質的に違う。そこを明確化するために『経営承継』と名付けた。事業承継は大きく分けて、経営そのものの承継と、自社株式や事業用資産など財産の承継とがあると考えられる。他の会計事務所などが提供しているサービスは、財産の承継の部分だ。先ほどの『資本政策』にあたる。しかし事業の存続には経営基盤の確立が欠かせない。実は事業承継では、その経営の承継が圧倒的に大事で、そこが一番難しく、かつ成功させるための本丸。われわれはそこを支援する」
--総合会計事務所のイメージを超える業務だ
「世間的には、経営の部分はコンサルタントなどの事業だ。しかし組織人事コンサルタントは税務や経理に詳しくない。他方、他の税理士などは決算申告や経理処理で手いっぱいだ。われわれにはその両方ができる」
--理由は
「仕事の方法が本質的に他とは違うからだ。一般に税理士の本業は、決算申告書を作成し税金計算をすることだが、われわれの場合、それはほんの一部だ。中心はオーナーに伴走して会社全体に目を配り、収益拡大などオーナーの目線で目的達成を支援すること。いわばCFO(最高財務責任者)のアウトソーシング(外部委託)を請け負う業務だ。経営全体を支援する姿勢は、創業以来の社風で、そこは他との最大の違いだ。依頼主に直言する覚悟をもって仕事をしている点も大きな違いだ」
--経営承継を成功に導くカギは何か
「経営者に徹底的に向き合うことだ。後継不在を訴えていても、実は現経営者が、自分と似たタイプを求め過ぎていることが本質的な原因である場合もある。承継難の原因が特定できれば、AGSの専門知識をより有効に使える」
--事業の拡大余地は
「加速度的に増えるとみている。国内では後継者難で悩む企業が増え、社長の平均年齢も上昇していて、状況は危機的だ」
--目指すのは
「日本中の中小企業の経営がインテグレート(必要な要素の統合)されること。経営承継サポートを通じて実践していく」(村山繁)
◇【プロフィル】廣渡嘉秀
ひろわたり・よしひで 早大商卒。1990年10月、公認会計士試験に合格し、センチュリー監査法人(現・新日本有限責任監査法人)入所。94年、AGSコンサルティンググループに参加。取締役、専務、副社長を経て2008年から現職。AGS税理士法人統括代表社員も兼務。48歳。福岡県出身。
◇【会社概要】AGSコンサルティング
▽本社=東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー24階
▽創業=1970年
▽設立=1988年
▽資本金=3500万円
▽従業員=253人
▽事業内容=税務、事業承継、IPO、マネジメントサービス、相続・贈与、M&A、企業再生など
「フジサンケイビジネスアイ」