高齢化や人手不足に直面する日本の農業。農業の盛んな北海道も例外でないどころか、地域経済に深刻な影響を与えかねない状況に追い込まれている。そんな中、人材派遣会社のアスクゲートは収穫はじめ多忙な時期に東京などから働き手を送り込む事業を展開、人手不足の解消に貢献している。
アスクゲートは、北海道で農業を対象にした人材派遣サービスを2002年から展開。4年前には北海道以外で集めた人材の派遣に乗り出した。一般的な派遣と同じく、登録スタッフを現地に送り、農作物の種まきや収穫、選別に加え、漁業でも工場での加工作業などに従事してもらっている。
大根の種まきに従事するアスクゲートの登録スタッフ=北海道上川町
斉藤三寛社長は「仕事内容などによるが、農協などの顧客から月21万円程度を当社が受け取ったとすれば、17万~18万円が(登録スタッフの)収入になる」と話す。
一定期間だけ働くといっても出稼ぎとは一線を画している。「むしろワーキングホリデーに近い感覚。北海道の生活を体験できる楽しさがある」(斉藤社長)。同社は独自に寮を確保。大半が個室で家具などを完備しているほか、食事付きの物件も用意している。「タコ部屋」のイメージは皆無で、女性も気軽に働ける。
このため単に収入を得るだけでなく、「北海道での生活を体験してみたい」「働きながら涼しい夏を過ごしたい」といった目的で現地に赴く人も少なくない。その顔ぶれは、時間に比較的余裕のあるフリーターや、ツーリングを兼ねて働きたい人などさまざまだ。
地方の農村や漁村は、人手不足解消のために外国人実習生の受け入れを拡大しているが、対症療法的な側面はぬぐえない。そもそもこうした外国人は「3年は働く決まりになっていて、繁忙期だけ雇うことはできない」と斉藤社長。一方で、北海道だけでは人を集めきれないため、「人口の多い東京や大阪で集める意味は大きい」と強調する。同社は東京と大阪、福岡に拠点を構え、人材を確保できる態勢を整えており、今後は名古屋や広島にも進出したい考えだ。
斉藤社長はもともと故郷の北海道旭川市で運送業向け人材派遣を行っていたが「独自性のある事業がしたい」と、農業分野に進出した。同様の事業を展開する派遣会社はほとんどなく、当初は営業で農協などを訪れても「利用するわけないという否定的な態度だった」という。
しかし、寮などへの先行投資が一段落し、赤字だった事業が2年前に黒字化。昨年は常時700人ほどが北海道以外から派遣され、現地で働いた。これは北海道内から派遣された人の約3分の1に当たる。
「今は(顧客から)すごく必要とされているように感じる。北海道といえば農業と観光。地元の盛り上げに貢献していきたい」。斉藤社長はそう意欲をみせる。(井田通人)
【会社概要】アスクゲート
▽本社=札幌市豊平区豊平3条3-1-24
▽設立=2000年12月
▽資本金=5625万円
▽従業員=約130人
▽売上高=約52億円(15年3月期見通し)
▽事業内容=人材派遣など
「フジサンケイビジネスアイ」