表彰を受けたベンチャースピリット部門の
受賞者
テクノロジー部門受賞者
埼玉県が主催する「第5回渋沢栄一ビジネス大賞」の表彰式が先月4日、さいたま市大宮区のソニックシティ国際会議室で行われた。同賞は日本における資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の偉業をたたえ、独創性などにあふれる新たな事業展開や革新的で将来性のある新技術開発に取り組む県内に事業拠点を有する中小企業を表彰する制度。「ベンチャースピリット部門」と「テクノロジー部門」から計10社が選ばれ、上田清司埼玉県知事から表彰された。
幅広い産業から選出
渋沢栄一ビジネス大賞は今年で5回目。「渋沢栄一ベンチャードリーム賞」と「彩の国産業技術大賞」を統合し、2011年から開催している。同賞は新規性・独創性にあふれる新たな事業展開に取り組む企業を表彰する「ベンチャースピリット部門」と革新的で将来性のある優れた技術・製品開発に取り組む企業を表彰する「テクノロジー部門」に分けられ、書類での一次審査、プレゼンテーションによる二次審査を経て10社が選ばれた。
今年の「ベンチャースピリット部門」大賞を受賞したサイ(さいたま市中央区)は介護予防に役立つゲーム機器を企画・販売するメーカー。「楽しく遊んでリハビリ」を合言葉に、楽しみながら身体機能や脳機能の活性化を図るゲーム機器を製作している。全国の高齢者施設など約250施設で導入されており、要介護者からアクティブシニアまで幅広く利用されている。同社は今後も全国の高齢者に寄り添った商品を展開し、健康長寿に貢献するという。
「ベンチャースピリット部門」奨励賞の増幸産業(川口市)は、同社が長年培ってきた石臼式磨砕技術を生かし「セルロースナノファイバー(CNF)」の量産を可能にした高速粉砕機の開発が評価された。植物から作られるCNFは夢の素材といわれており、環境負荷が少ないうえ、鉄よりも軽くて強いといった、さまざまな特長を持つため、幅広い分野で活用が見込まれている。30年には関連市場が1兆円に達するとの予測もあり、低コストでの量産が見込める同粉砕機は各業界から注目されている。
将来性が見込める新技術が登場
「テクノロジー部門」大賞のテクシアマシナリー(新座市)はノンスリップローラーや精密シャフトを製作している金属加工を専業にしているメーカー。ビジネス大賞ではカッティングマシーンの紙送りローラーに鋭利なスパイク上の突起を加工する技術が評価された。同技術により滑りやすいフィルム上のクラフト用紙を確実にグリップし、台紙が正確に往復できる搬送性、きれいにカットできる操作性を実現した。
「テクノロジー部門」奨励賞を受賞したアグリクラスター(さいたま市中央区)は高効率な地中熱交換システムの開発が評価された。同技術は水井戸の中に熱交換管を入れ、常時、井戸内の温度を最適化することにより高効率な熱交換を実現させた。熱と水の両方を利用できるため農業利用だけでなく、防災用インフラとしても活用ができる。既設の井戸を利用すれば、ボーリングが不要で、高効率のため小型化も可能。環境にも良く、初期投資も軽減されるので、今後の都市開発における注目技術として期待が集まっている。
「フジサンケイビジネスアイ」