企業が気に入った学生を一本釣りする新しい就職支援サービス「OfferBox」を運営している中野智哉社長=大阪市淀川区
□i-plugの就職支援サービス「OfferBox」
就職戦線が学生の売り手市場となり、企業各社が採用に知恵を絞る中、「i-plug(アイプラグ)」(大阪市淀川区)が提供する就職支援サービス「OfferBox(オファーボックス)」が会員数を伸ばしている。専用サイトに掲示された学生のプロフィルを読んだ企業が学生に誘いを掛ける仕組み。安定志向だった学生が経営者にほれ込んで中小企業に就職するなど、従来にはない出会いも生まれ、口コミで人気が広まっている。
同社は、転職サービスなどを手掛ける大手企業に勤めていた中野智哉社長が、大阪の経営大学院を修了後、同級生らとともに起業した。
事業内容を決める際には、学生200人と企業100社の関係者にインタビューした。その結果、就職・採用活動に大きな悩みを抱えていることが分かったという。
学生側は、志望先と自身の可能性が一致しているかに不安を感じ、企業側は、なかなか希望する人材に出会えないという課題を抱えていた。
そんなミスマッチを避けようと、企業が学生のエントリーを待つ従来の受け身の方式を改めて、企業が学生に誘いを掛ける新たな仲介サービスを考案した。
学生は写真や動画も交じえて自己紹介し、興味ある業界や職種などについて書き込む。それを読んだ企業の担当者が、メッセージを送る仕組みだ。
企業が学生側に直接働きかけることで、事業への学生の理解が深まり、計画中の新規事業にも素早く必要な人材を採用できる利点がある。
学生側も、未知の企業から誘いを受けて、視野が広げるきっかけになる。
アイプラグでは、採用が決まると企業側から報酬を受ける。1人当たり30万円と、相場より安く設定している。
初年度の登録数は、企業が220社、学生が4500人だったが、3年目の今シーズンは企業950社、学生1万9000人に増えた。
登録企業は大手から中小まであり、業種もさまざま。学生側も、さまざまな経験や技術を備えており、人材は豊富だ。
既に地方銀行から内定を得ていた学生が、このサービスを利用して経営者の人柄を気に入り、その中小企業に就職を決めた例もあるという。
企業側からは「意識の高い学生を採用できる」、学生側からは「自分を必要とする企業に出合える」などと好評だ。
今後は独自の適性検査を活用し、欲しい人材をより簡単に検索できる機能を強化する方針。中野社長は「企業と学生が真面目にコミュニケーションを取ることで、ともに満足できる採用・就職をしてもらいたい」と話している。(栗井裕美子)
◇【会社情報】i-plug
▽本社=大阪市淀川区西中島1-9-20 新中島ビル4階
▽設立=2012年4月
▽資本金=3000万円
▽従業員=27人
▽事業内容=就職活動支援サービス、就職活動用サイト運営
「フジサンケイビジネスアイ」