グラフィコ・長谷川純代社長
女性をターゲットにした生活用品や化粧品を開発・販売するグラフィコ。率いるのは女性起業家の長谷川純代社長だ。女性目線に加えて、「徹底した他社との差別化」を信条に、数々のヒット商品を世に送り出してきた。
「企画から販売」一貫
体を温めることで冷え性や生理痛の改善につなげることを目指す「温活」。「就活」や「婚活」とともに知られたこの言葉を考えたのがグラフィコだ。
「よもぎ蒸し」から着想を得た女性向けの携帯カイロ「優月美人 よもぎ温座パット」を7年前に発売。女性社員から成る「温活女子会」を昨年組織するなど、啓発活動にも取り組む。よもぎ温座パットは爆発的に売れ始めており、近く入浴剤なども加えるという。
グラフィコには、他にも足専用のせっけん「フットメジ」やダイエットサプリメント「なかったことに!」など、ユニークな商品が少なくない。
こうした商品は、企画からプロモーション、販売まで一貫して自社で行い、決して人任せにはしない。長谷川さんは「だからこそ高確率でヒット商品を生み出せる」と秘訣(ひけつ)を語る。
差別化の徹底が信条
東京家政大の研究所で美術を学んだ後、モデルとして活動。やがて並行して広告デザインの仕事を始めたところ、独自の発想力を買った大手化粧品会社から仕事を任された。そのとき、「経験ゼロでも圧倒的な内容と結果があれば必然的に仕事は入る」と悟り、差別化の徹底が信条になった。その考えは、2004年にメーカーへ転じて以降も変わっていない。
生活用品や化粧品は、新商品を発売しても0.1%しかヒットしないとされるシビアな世界だ。
1000以上の商品を抱える大手に対し、中小企業のグラフィコには12ブランド・57商品しかない。にもかかわらず、そのうち累計100万個以上売れている大ヒット商品が4つもある。「2年後にはOTC(一般向け医薬品)にも進出したい」と夢は膨らむ。
この20年の人生は順風満帆だったわけではない。4年前には乳がんが発覚、1年半ほど闘病生活を強いられた。だが、決してへこたれることはなかった。「心を鍛える場だと解釈した。それに自分は社員の人生を背負っている」
現在は回復し、以前通り仕事をこなす。一方で「人を助けられる人間に」と、ビジネスを通じ開発途上国で産業基盤を整える「フィール・ピース・プロジェクト」に従事する。「モノ創りで、笑顔をつなぐ」という会社のビジョン通り、世界を舞台に笑顔を生み出しつつある。(井田通人)
≪Q&A≫
消費者の立場で最大限の創意工夫
--起業した経緯は
「東京家政大の研究所で2年ほど美術を学んだ後、知人の紹介でモデルをした。でも向いていないと感じ、(広告を)制作する側に興味を持ち始めた。やがてデジタル化の時代が来ると考え、独学でグラフィックデザインを学んだ。海外製デザインソフトの操作法を、辞書を引きつつ猛勉強して学んだ」
--独立後は順調だったのか
「順調なのが逆に怖かった。すぐに大手の化粧品会社や百貨店から仕事が舞い込んだ。化粧品会社からは『君みたいな大胆で柔軟な発想を持つ人を探していた、商品企画も合わせてやってくれ』と頼まれた。それがきっかけで、商品企画のノウハウも蓄積していった」
--メーカーに転じた理由は
「化粧品会社と百貨店の仕事がひと段落したとき、ある人から『商品企画も含めて全て自分でできるのだから、メーカーになるべきでは』といわれた。さらに成長したいという気持ちも手伝い、思い切って業態転換することにした。最初は海外商品を日本市場向けにプロデュースし、段階的に自社で企画開発した商品を増やしていった」
--ヒットの秘密は
「目新しさは大事だ。たとえば足専用せっけん『フットメジ』。足は一番汚れるのに、こうした専用商品はなかった」
--卓抜なネーミングでも知られる
「インパクトも重要で、ダイエットサプリメント『なかったコトに!』は自分で名付けた商品だが、広告費に制約がある中で浸透させることができた。一方、奇をてらうだけなら誰でもできる。消費者が何を求めているか熟知しておかなければならない。社員には消費者の立場で考え、最大限の創意工夫を心がけるよう徹底している」
【プロフィル】長谷川純代
はせがわ・すみよ 東京家政大短期学部卒。モデル活動を経て、1996年11月スタジオグラフィコ(現グラフィコ)設立。48歳。群馬県出身。
◇【会社概要】グラフィコ
▽本社=東京都品川区大崎1-6-1 TOC大崎16F
▽設立=1996年11月
▽資本金=1000万円
▽売上高=約17億9000万円(2015年6月期)
▽従業員=約40人
▽事業内容=化粧品や美容雑貨、健康食品の企画・開発・発売
「フジサンケイビジネスアイ」