電池屋・奥田勝社長
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の影響で株式市場は急速に活性化したが、ここへ来て消費税増税の影響による景気の腰折れが懸念されている。東京商工リサーチによると増税後、新たな経費削減に取り組んだ企業は過半数を占める。こうした背景を追い風に、電球や防災用品などをインターネットで販売する電池屋は、割安な価格と丁寧な対応で経費節減ニーズを取り込み、売り上げを伸ばしている。奥田勝社長は「取扱商品を増やし、より幅広いニーズを開拓する」と意気込む。
--事業内容は
「社名のとおり業務用の誘導灯・非常灯バッテリーのほか、LED(発光ダイオード)蛍光灯、防災用品などのネット販売をしている。親会社のヨコモリは1946年の創業以来、電設資材の業務用卸と電気工事請負を事業としてきた。長引く不況による売り上げ減のため、2006年にネット販売会社である当社が設立された。当初は顧客を防災関連会社と想定していたが、実際はさまざまな業種の会社の総務部から注文を受けた。経費節減が厳しくなっていたことで、定価の60~70%ほどの値段で購入できるのが注目されたようだ。今ではマンション管理組合、病院、ホテル・旅館など幅広い顧客を抱えている」
--サービスの特徴は
「単に安いだけ、売りっぱなしだけではない。もともとヨコモリは電設資材の卸を長年経営していたので、従業員の多くは商品の取り扱いに精通している。このため機器の取り付け方法や、どの機種がどの用途に適合するかなどの顧客からの質問に懇切丁寧に答えている」
--製造中止になったバッテリーを作っている
「ニッケル・カドミウム電池は高出力用途に適しているため、かつてはエレベーターや大型警報装置など重電製品向けの主流だった。のちに環境問題が重視されるようになり、有害物質のカドミウムが原料だったため、国内ではほとんど製造が中止されている。当社では同電池を輸入して、顧客の持つ製品の形状に合わせて加工している。純正品とほぼ同等の高性能で1年保証も付けている。他社は100個以上の大口からしか受注しないが、当社は1個でも製造する」
--今後の事業計画は
「現在取り扱っている商品は8万6000点だが、工具などもそろえて20万点まで増やし、幅広いニーズを取り込みたい。いまは、LEDの販売と取り付け工事需要に注目している。オフィスの引っ越しやリフォームでは蛍光灯からの交換需要が多い。東京五輪までは都心部の再開発を中心にオフィスの供給が過熱する一方、多様な業種の企業の移転需要も高まっている。18年には売上高を10億円に、20年には15億円に伸ばしたい」(佐竹一秀)
【プロフィル】奥田勝 おくだ・まさる 近大商経卒。1988年ヨコモリ電気商会(現ヨコモリ)入社。2006年7月電池屋の社長に就任。50歳。大阪府出身。【会社概要】電池屋
▽本社=東京都渋谷区笹塚3-33-4
▽設立=2006年7月
▽資本金=1000万円
▽従業員=18人
▽売上高=6億5000万円(15年3月期)
▽事業内容=防災器具、業務用音響機器、電材の卸・販売
「フジサンケイビジネスアイ」