EC studioスペース・大崎弘子社長 起業家交流の場、低料金で提供

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オオサカンスペースでは、会員同士の交流を通じて新しい事業などが生み出されている=大阪市中央区

 起業家や起業を目指す人が仕事場を共有するコワーキングスペース。米国発だが、事務所を構えるよりも低料金でデスク付きフロアを確保し、利用者同士の交流で商機の広がりが期待できるため、日本でも数年前から広がってきた。「EC studio(イーシー・スタジオ)スペース」は2012年から、大阪市中央区で「オオサカンスペース」を運営している。会員約120人と関西最大規模。社長の大崎弘子さんは「会社に代わる新しい人の集合体として機能している」と説明する。会員らの技術やノウハウからビジネスも始まっているという。

 ◆秘書時代の経験契機

 オオサカンスペースは、大阪のオフィス街、本町のビルにある約100平方メートルのフロアで運営。仕事のためのデスクや食事用のダイニングテーブルなどのあるフリースペース。コピー機や電源、公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」を備えている。会員は1カ月9800円から利用でき、1日限りのビジター利用(2000円)もある。ウェブデザイナーやプログラマーらIT系個人事業主のほか、カメラマンやライター、会社員も利用している。パソコンさえあれば仕事ができる職種の人たちが、一人でいる自由さを失うことなく、一人では思いつかないアイデアから予想外のビジネスが誕生する場として会員数を増やしている。

 きっかけは、ITベンチャー「ChatWork(チャットワーク、大阪府吹田市)」の山本敏行社長の秘書をしていた11年、北海道でオープン直前のコワーキングスペースを見学したことだった。過去に米シリコンバレーのカフェで知らない人同士が普通に話したり、議論している光景を見たことがあり、「自分が運営したらあんなふうに…」とイメージが浮かんだのだという。

 当時、山本社長が米国法人の立ち上げのため渡米を決意していた。秘書として同行するかを悩んでいたが、「多様化する働き方を応援する場を作りたい」とコワーキングスペースの開設を提案すると、山本社長は子会社として「EC studioスペース」を立ち上げることを即決し、その社長に大崎さんを抜擢(ばってき)した。

◆新ビジネス創出に力

 オープン時の会員は約40人。最初は経営から雑務まで一人でこなしていた。アットホームな雰囲気づくりに腐心したが、会員の増加とともに目が行き届かなくなってきた。このため14年にスタッフを雇うと、会員それぞれをケアする余裕ができ、新ビジネスの創出にも力を入れている。

 「∞books(ムゲンブックス)」という無料の書籍出版サービスもその一つ。利用者が専用サイトに文章を入力すると、インターネット通販大手のアマゾンを通じて注文のあった分だけ印刷、印税は著者に入る仕組みだ。スペースで知り合った2人が考案、KDDIのベンチャー育成プロジェクトの支援を受けて今春に事業化した。

 このほか広告代理店を経営する会員の協力でブログなどに広告を掲載して収入を得るアフィリエイト広告のノウハウを指南する教室を開校すると、効率よく学べると評判となっている。

 関西企業の女性広報が集まる広報ウーマンネットや、IT関係者を中心とした交流会の世話人を務めるなど幅広い人脈を駆使し、会員のスキルやアイデアを生かしたビジネス展開を目指す。

 大崎さんは「異業種が手を組むと新しいものができる。小回りが利くコワーキングスペースの優位性を生かして時代が求めるビジネスを創出したい」と話した。(栗井裕美子)

 ≪Q&A≫

 ■会社員や外国人も利用

 --コワーキングスペースの魅力は

 パソコンがあれば仕事ができる業種では、自宅をオフィスにしたり、カフェで仕事をするケースが目立つが、一人ができる仕事には限界がある。そこで一人の自由さとみんなの便利さを併せ持つのがコワーキングスペースだ。一緒に働くことで、規模の大きい案件や専門外の知識が必要な案件を受注できたり、自分では思いつかないアイデアから予想外のサービスが誕生したりという効果がある。

 --どんな人が利用している

 IT系などの個人事業主が中心だが、会社員もいて、コミュニケーションが好きな大阪の風土に合っている。最近はパソコンを携えて世界を旅しながら仕事をする外国人の利用が増えている。

 --初めての社長業で悩んだことは

 もともと人を使うのが下手で自分がやったほうが早いと思うタイプ。経営を通して自分の考えを他人に伝えられない欠点に気づいた。そこで、沖縄に1週間滞在して事業や自分の思いを整理して言語化した。とても有意義な時間だったので「リラックスしたオンの時間」と名付けて習慣にしている。

                   ◇

【プロフィル】大崎弘子

 おおさき・ひろこ 高校卒業後、作業服卸会社勤務、専業主婦を経て、2006年に「ChatWork」にアルバイトとして入社、広報、社長秘書を務め、11年設立の「EC studioスペース」の社長に就任。12年からオオサカンスペースを運営している。38歳。大阪市出身。

                   ◇

【会社概要】EC studioスペース
 ▽本社=大阪市中央区備後町3-6-2 大雅ビル10階
 ▽創立=2011年11月
 ▽資本金=400万円
 ▽従業員=4人(アルバイト含む)
 ▽事業内容=コワーキングスペースの運営

「フジサンケイビジネスアイ」

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