リアリックス宍戸秀光社長
発注側の大企業が優位であることから、受注側の中小企業は立場が弱い。しかし独自の技術力と発想でリーマン・ショックの後にも毎年増収を続ける受託切削加工会社がある。リアリックスは多品種少量生産で差別化を図り、自社ブランド商品も販売している。宍戸秀光社長は「自社商品を通じて、新たな顧客を開拓したい」と意気込んでいる。
--同業と比べて強みは
「主に数値制御(NC)自動旋盤を用いて、産業用の空気バルブや音響センサー、タッチセンサーなどの部品の金属加工を手掛けている。数千~数万個単位の受注が普通だが、数十個程度の少量生産に対応している。NC旋盤は刃の付いた切削工具で加工するが、少量生産だと工具を頻繁に取り換える必要がありコスト高になってしまう。工具は購入するのが一般的だが、当社は内製する技術がある。このため素早く安定的に、顧客の求める製品を生産できる」
--技術者の平均年齢が若い
「生産者が高齢化していると、数年後にも対応できるか分からない。当社の技術者は平均32歳で他社と比べて若い。これは顧客側の安心感にもつながっている。リーマン・ショックの影響で売上高が前年比20%減になった2009年以外は、毎年賃上げをしている。待遇を良くすることで、生産性が上がって増収に直結すると考える。実際、当社の技術者は高い職人スキルとプログラミング技能を兼ね備えている」
--発注側の目線に立った対応をしている
「発注元の要望以上に製品をきれいに仕上げている。見た目の問題ではあるが、生産現場はきれいな部品を喜ぶ。実際に『現場が使いたがる』という理由でリピーターを獲得している。またこれまでに作ったことのない製品を受注した場合、無料でサンプルを試作している。通常は作らないが、当社は技術があることを示すために取り組んでいる」
--一般消費者向け商品も販売している
「当社の技術を見える化して、ブランド化を目指す。08年に初の一般消費者向け商品として、チタン製のはしとダーツ用品を発売した。運良くブームに乗ってダーツ用品がヒット商品となった。リーマン・ショック後の大幅な売り上げ減を、翌10年には急回復させて危機を乗り切る要因となった」
--展示会を計画している
「従来の産業展示会に参加しないデザイナーやクリエーター、職人などのものづくりに携わる10社ほどを集める。場所についても、表参道のギャラリーなどでアート系の個展のような雰囲気にする。既存と違う客層とのマッチングが目的だ。また有望な起業家を発掘する場にもしたい。今年度はアベノミクスの影響で受注額が前年比で30%増えた。20年の東京五輪までに毎年数%ずつの増収を計画している」(佐竹一秀)
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【会社概要】リアリックス
▽本社=東京都瑞穂町石畑421-10
▽設立=1967年6月
▽資本金=1000万円
▽従業員=14人
▽売上高=非公開
▽事業内容=金属・樹脂の受託切削加工など
ししど・ひでみつ ゲーム製作会社勤務ののち、1993年リアリックス入社。2012年4月から現職。47歳。東京都出身。
「フジサンケイビジネスアイ」