国内初の医療診断機器の車載型レンタル事業会社として1992年に創業したフリールは、大型車両にCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などを搭載し、医療機関や検診機関に貸し出す「メディカルモバイルサービス」というユニークな事業を展開している。吉野弘之社長は「予防医療のニーズが高まれば極めて大きなマーケットになる」とし、2013年5月のオリックスグループ入りを機に一段の飛躍を図る。
--事業内容は
「一つは、診断機器を保有していない診療所や小中規模な医療機関向けに貸し出す『一般レンタル』で、現在200~250機関と取引がある。医療機関向けにはもう一つ、『代替レンタル』と呼ぶサービスを提供している。既に機器を保有している機関が機器を更新したり増設する場合、通常でも1カ月はかかり、その間の代役を務める」
--現在、注力しているのは
「検診機関による自治体や企業向けの巡回検診は近年、オプション検診が増えており、今後、拡大する可能性が高い。車両が工場やオフィスに出向き、その場で検診できれば、社員は時間を割いて医療機関を訪れる必要がなくなる。企業にとっては社員が病気になる因子を早期に発見したり、それを取り除くことが大事で、検診機関に新たなニーズとして提案したい」
--予防医療の広がりが今後の鍵になる
「企業の健康保険組合は医療費が膨らみ、財政事情が悪化しており、医療費抑制が課題だ。その意味で、予防医療の重要性が増し、検診サービスの需要が拡大するとみている。山口県のあるオーナー企業は、会社が費用負担する福利厚生として社員に脳ドック、肺ドックを実施している。人材は簡単に代えが利かないと危機感を抱く中小の企業に予防医療のニーズは高い。自治体が実施する住民検診も、肺がん検診は国のガイドラインに沿ったX線検診でなく、CTを使う自治体が増えている。X線は結核の時代の検診であり、CTは早期がんの発見につながる。国の方針転換でCT検診が拡大することを期待したい」
--現在の保有車両数は
「CT搭載車は11台で、全車両に16列CTを備えている。MRI搭載車は12台で、日本の道路規制をクリアした世界最小のMRI搭載車とした。このほか、世界初の3Dトモシンセシスデジタルマンモグラフィー搭載車を1台保有している。MRI搭載車は当社以外に保有する企業はなく、その意味でライバルはいない」
--今後の事業展開は
「まずは現在の保有車両について稼働実績を増やし、さらに、新しい診断装置に対するニーズを捉え、当社の事業と組み合わせたサービスの開発にも取り組みたい」(鈴木伸男)
◇【プロフィル】吉野弘之
よしの・ひろゆき 学習院大経済卒。1988年オリエント・リース(現オリックス)入社。四谷、千葉、広島の各支店長を経て、2013年港第二ブロック・ブロック長。同年5月から現職。50歳。埼玉県出身。
◇【会社概要】フリール ▽本社=群馬県高崎市旭町46-2 ▽設立=1992年6月 ▽資本金=3億2980万円 ▽従業員=40人 ▽事業内容=CT、MRI、マンモグラフィー搭載車などの貸与、巡回サービス
「フジサンケイビジネスアイ」