出口 グラウシオ社長
引っ越しの一括見積もりサイトを運営するグランドツーが、機能強化に乗り出した。業者との交渉をスマートフォン(高機能携帯電話)などのチャットで行える機能を16日に追加した。複数の業者と同時並行で交渉できるうえ、個人情報漏れも防げるのが特徴。出口グラウシオ社長は「個人情報保護がおろそかになっている業界の常識を変えたい」と意気込んでいる。
チャット機能を加えるサイトは「タダで運ぶゾウ」。利用者は現在の部屋の間取りと移動距離、希望日を入力するだけですぐに料金が表示されるほか、無料で複数の業者から見積もりをとれる仕組み。インターネット回線やウオーターサーバーの契約を結ぶと一定額がキャッシュバックされ、引っ越し代が無料になるなどの独自サービスも提供している。
引っ越しの際に見積もりサイトを使う人は年々増えているが、個人情報が業者側に漏れ、電話による営業攻勢にさらされる場合が少なくない。追加するチャット機能では「業者側に個人名などが明かされないため電話攻勢の心配がまったくない」(出口社長)という。
同社は今回の機能強化を機に見積もりサイトの名称を「タダゾウ」へ変更する予定だ。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、日本国内では2012年に延べ500万人が移動。そのうち都道府県をまたいで移動した人は230万人にのぼった。もっとも、ピークだった1973年(853万人)以降は年々減少しており、引っ越しサービスの市場も縮小傾向にある。このため業者ではコスト削減を進める一方、掃除や不要品引き取りなどのオプションサービスを提供し、顧客満足度の向上に努めている。
ただ、同社が利用者の声を集めたところでは、「サービス内容の詳細について話したいが、仕事の忙しい時間に電話が来て困る」といった不満の声が依然として多かった。また、引っ越し以外を含めた見積もりサイトで個人情報漏れへのクレームが急増していることも、機能追加の理由という。
同社が一括見積もりサイトの運営を始めたのは1年半前。現状の利用者数は月100人程度にとどまっているが、今回のチャット機能追加により今年12月には3000人まで増やしたい考えだ。出口社長は「チャット機能だけをカスタマーサポートセンター向けに提供することも視野に入れている」と事業拡大に意欲をみせる。(井田通人)
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【会社概要】グランドツー
▽本社=東京都渋谷区南平台町3-13新掘ビル3階A
▽設立=2009年1月
▽資本金=300万円
▽従業員=10人
▽事業内容=引っ越し一括見積もりサイトの運営など
「フジサンケイビジネスアイ」