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中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第18回

人材の確保・定着に活用できる助成金その3

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

これまでのコラムでは、雇用関連の助成金の概要と助成金を活用した具体的な人材戦略の構築方法として、「キャリアアップ助成金」の活用方法についてご紹介をして参りました。本日は、「特定求職者雇用開発助成金」について解説をします。

この助成金は、高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。本助成金の支給額は、対象労働者の類型によって1人あたり以下の金額となります。

<短時間労働者以外の者>

(1)高齢者(60歳以上)、母子家庭の母など

  60万円(助成対象期間は1年間:30万円×2期)

(2) 重度障害者等を除く身体・知的障害者

  120万円(助成対象期間は2年間:30万円×4期)

(3) 重度障害者等

  240万円(助成対象期間は3年間:40万円×6期)

<短時間労働者の場合>

(1)高齢者(60歳以上)、母子家庭の母など

  40万円(助成対象期間は1年間:20万円×2期)

(2) 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者

  80万円(助成対象期間は2年間:20万円×4期)

ただし、支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額を上限とします。


本助成金を受給するためには、次の要件のいずれも満たすことが必要です。

(1)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること

(2)雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。

また、対象となる雇用形態は、「正規雇用」「無期雇用」「有期雇用(自動更新)」として採用する方です。有期雇用の場合には、「対象労働者が望む限り更新できる契約」の場合のみ助成対象となります。勤務成績等により更新の有無を判断する場合等は助成対象となりませんのでご注意下さい。このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件がありますので、詳しくは厚生労働省のホームページや所轄のハローワークでご確認ください。


特定求職者雇用開発助成金を活用する場合の最大の注意点は、「ハローワーク等の紹介によって採用する」ということです。この助成金は事業主による就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブとしての効果を期待した制度だからです。そのため、ハローワーク、特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者等の職業紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成を行うことになっています。

以上のような制度趣旨により、求職者を直接募集(又は求人サイトを利用)し、求職者から応募があった後に形式的な職業紹介により対象労働者を受け入れた場合は助成対象となりません。また、現在のハローワークインターネットサービスでは、令和3年9月21日より求職者がハローワークの職業紹介を通してオンライン上で応募する「オンラインハローワーク紹介」と、ハローワークを介さず求職者が直接オンライン上で応募する「オンライン自主応募」の機能が追加されていますが、「オンライン自主応募」による求職者を採用した場合には、本助成金の対象とはなりませんので、こちらについてもご注意下さい。

本コラムで繰り返しお伝えしている通り、中小企業においては労働人口の減少や若者の離職率の高さなど、人材の質と量の両面での確保は非常に厳しい現状になっています。今回ご紹介した特定求職者雇用開発助成金を正しく理解して、人材確保の一助とされてみてはいかがでしょうか。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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