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中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第11回

Z世代から選ばれる会社だけが生き残る

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

いつの時代も「新人類」「バブル世代」「ゆとり世代」「ミレニアル世代」といった「〇〇世代」という呼び方が存在しますが、昨今では「Z世代」という言葉を聞くことが多いです。「Z世代」はアメリカから伝わってきた言葉で、一般的には「1990年半ばから2010年代生まれの世代」とされています。

もちろん個人差はありますが、傾向として次のような特徴があると言われています。

・マスメディア離れが顕著で、インターネット環境、とくにX(旧Twitter)、YouTube、Instagram、TikTokから情報収集を行う

・社会問題への関心が高い傾向がある

・ブランドに対するこだわりが薄く、「自分の価値観に合うかどうか」を重視する傾向がある

また、働くことに対するZ世代の大きな特徴として、自身が属する職場へのこだわりが少ないことが挙げられます。ある新卒採用系の大手企業が調査した、就活生を対象としたアンケート結果でも明らかですが、彼らは終身雇用を前提とはしません。将来の転職を視野に入れている就活生の割合はじつに55%で、売り手市場の昨今、最初から「転職」を視野に入れる傾向が強いのです。

Z世代の価値観や考え方として押さえるべきは、「多様性を大事にすること」です。「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」を大切にする世代であり、「みんな違って当たり前」という教育を受けてきたことが背景にあるのでしょう。働き方やキャリアについてもこの価値観に沿っていて、たとえばワークライフバランスを重視する、副業やマルチワークといったパラレルキャリアへの関心が高いと言われているのです。ひとつの会社に固執せず、柔軟な働き方がしたいと考える人が多いのは、このような価値観が背景にあると考えられます。

また、自分がしたいことのために転職するのは、Z世代にとってもはや常識と言っていいでしょう。ですから、「転職したくない」「転職先としてぜひお世話になりたい」といった職場環境をつくることは、人手不足を解消するために不可欠です。日本の全人口の約14%を占めるとされるZ世代は、年代的にこれからの日本を支えていく存在でもあります。「デジタルネイティブ」と呼ばれ、SNSを使いこなしていることから、情報発信力が高く、口コミにも大きな影響力を持っているため、企業の採用やマーケティングのうえで非常に注目すべき世代でもあります。

このZ世代の価値観にマッチする会社の大きな特徴のひとつは、多様な人が働きやすい職場づくりに取り組んでいることです。仕事ばかりに注力せず、家庭や趣味との両立を重んじるZ世代は、働き方に対する価値観も多様です。ですから、Z世代が評価するのは、在宅勤務や副業、マルチワークなど、多様な働き方に合わせた働き方を認める企業なのです。結婚・出産後に女性が働き続けることを当然と考える傾向もあるため、子どものいる女性社員が働きやすい職場環境の整備、ライフイベントに合わせた柔軟な働き方を選択できる会社が求められています。

昨今の有効求人倍率を見ても、10年ほど前から売り手市場が続いています。今後の労働力人口減少を考えれば、すでに採用・転職市場の主導権は企業から労働者へ移っていて、その傾向はしばらく変わらないものととらえるべきでしょう。すなわち、これからの企業というのはZ世代から選ばれる会社にならないと、生き残ることが難しいということになります。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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