株式会社ANGEWORK 代表取締役   桐生雄洋氏

積み重ねたAI開発の知識と実績を生かす 試作品を汎用化してサービス展開

進化が著しいAIとの付き合い方に悩む企業は少なくない中、これを好機ととらえるのがANGEWORK(エンジェワーク)だ。2019年から積み重ねてきたAI開発の知見と実績を生かして、ソフトウェアの受託開発にとどまらず、試作品を汎用化(量産化)しサービス展開に乗り出す。創業者でエンジニアの桐生雄洋代表取締役は「我々は設計屋。AIを使いこなすことで、顧客からの『できないか』という相談に『できる』で応える。AIと我々との正しい役割分担で攻めに転じる」と意気込む。

――培ったAI開発で生まれた商品・サービスは
最近ではスマホで動作する完全オフラインAI「LocaPhone(ロカフォン)」の提供を開始した。iPhone上で生成AIの完全オフライン稼働を可能にするもので、ネット環境がなくても、音声で入力して音声で返答するといった会話と履歴をiPhoneで完結できる。電波が届かない病院や工場、地下施設といった閉鎖環境で会話できるのが強みだ。外部に漏れては困る機密情報を守ることもできる。例えば病院。エッセンシャルワーカーとして欠かせない看護師が不足している。患者は頼みごとがあってナースコールを鳴らすが、看護師は何を求めているか分からずに部屋に向かう。この負担が大きい。これをAIに任せることで業務を省ける。いわばAIが一次対応し、看護師の負担を軽減できるわけだ。
――このほかには
鉄塔などの目視点検のために現場に出向く人的コストの大幅削減をカメラ付きドローンで実現した。ドローンの撮影航路を事前設定し最適撮影、集めた2次元の写真データを点群(3D空間における点の集まりで、物体の形を立体的に表したデータ)で認識し3次元データ解析することで必要な点検を可能にする。ドローン点検に大切な飛行計画、撮影設計、ルート設定と航路解析を我々が担当することで現場に最適な業務システムを設計・開発できる。最大で人的コストを50%削減できた実例がある。
――植物や医療・健康分野でも課題解決に貢献している
植物の生育状態や間引き対象の枝を自動的に把握したいという相談に応じて開発したのが植物生育推定AI。AI、点群、iPhoneを組み合わせて生育状態を判定する。人による目視確認やチェック業務を最小限に抑えられ、将来の無人管理につなげられる。医療では、Apple Watchで術中の体位推定支援、口腔内3Dスキャンで得られるポリゴンデータから歯牙と歯肉の境界を識別し歯牙番号を判定する3DAIを開発した。
――AIを使いこなすコツは
AIはあくまでもツールであり、このためAIにすべてを任せないことが大事だ。得意なこと、人が適しないことはAIに任せ、最終的な論理判断は人が担う。こうした正しい役割分担が重要だ。これにより(得られるはずのものを取り逃がしてしまう)取りこぼしをなくせる。つまり我々の設計思想は、ひとつのAIにすべてを任せず、処理ごとに適切な技術を選定し、誤りやコストアップ、情報漏洩といったリスクを抑えることだ。数多くのAI研究開発を通じて積み重ねてきた知見を大切にしており、業務判断のすべてをAIに委ねるということは決してしない。
――進化するAIへの対応が求められる
AI時代の到来でビジネス環境は激変しており、それに合わせて商売の形態も変える必要がある。プログラムやデザインといったエンジニア業務は「AIで十分」と言う顧客も増えており、受託機会を失う恐れが出てきた。実際にはAIを信じて任せたが、結果を見ると「こんなはずではなかった」ということは少なくないのだが、それに気づいて(我々に受注機会が)戻ってくるまでの時間がどれくらいかかるか心配だ。そこでビジネスの軸を変える。攻めに出ることにした。
――どういうことか
これまではソフト開発の受託に専念。ニッチで実現困難な相談にも幅広い知見と経験を生かすことで、現場の「できない?」を「できる!」に変えてきた。どんな相談ごとにも基本的には「できない」といわない受託姿勢を取ってきたので、結果的に無駄なことも多かったし、実現可能性を検証するPoC(概念実証・実現可能性の検証)で終わっていた。これからはプロトタイプ(試作品)の提供にとどまらず、顧客と一緒になって製品化・量産・販売につなげていく。横展開だ。これにより開発した商品・サービスの新たな提供先を獲得していく。キーワードは点群物体認識、3D解析AI、完全オフラインAI、植物生育判定など。現場ドメインを理解し、現場で生きるAIをアピールしていく。
――新たな挑戦が始まる
我々は設計屋だが、AIは大規模なシステム全体の設計を一貫して行うことはまだ苦手だ。大規模になると手戻し、つまり作業の途中で問題や変更点が見つかり前工程に戻ってやり直すのは大変だ。AIにすべてを任せると手戻しの可能性が高まりかねない。AIは犬小屋を建てられても、家を建てるのは難しいのだ。AIを信頼しすぎると取りこぼしも多くなる。だからAIをコントロールし使いこなすことが求められる。設計のプロであり、AIを使いこなせる我々の出番といえる。AI時代だからこそ、AIをコントロールできることをアピールしていく。

桐生 雄洋(きりゅう・たけひろ)
株式会社ANGEWORK 代表取締役

大手電力会社・ソニーのSEを経てIT開発専門会社を設立。現在も現役エンジニアとして設計・実装に携わる。AI、ローカルLLM、画像認識、3D・点群解析、LiDAR、ドローン、光学・医療機器など幅広い分野に精通。企業の「技術の駆け込み寺」として、前例が少なく実現方法も確立されていない高難易度の研究開発案件を多数手掛ける。

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