Jトラスト株式会社 グループ Jトラストグローバル証券株式会社 代表取締役社長 矢田耕一 氏
債券担保FXで長期・安定的にダブルインカム ~富裕層向けビジネスを強化~
新たなFX(外国為替証拠金取引)サービスが登場した。Jトラストグループの証券会社として富裕層向けビジネス(ウェルスマネジメント)に注力するJトラストグローバル(JTG)証券が、国内初という債券担保(証拠金)FX「WEALTH FX(ウェルスエフエックス)」を売り出した。債券の金利を受け取りながら、為替取引(ドル円)によるスワップポイント収益も獲得できるダブルインカムが魅力だ。開発を陣頭指揮した矢田耕一社長は「円安により円で資産を持つリスクに着眼した。ドル資産を持つことで日米間の縮まらない金利差を長期にわたり享受でき、安定的に収益を積み上げられる」と強調。資産1億円超を保有する富裕層にアピールしていく。
- ――サービスの特徴は
- 安定資産である債券を保有したままFXに活用できるため、債券金利を受け取りながら、日米金利差をスワップポイント収益として享受できる。つまり2階建て(ダブル)のインカムを受けられるわけだ。リスク許容度であるレバレッジは最大5倍(元手資金の5倍の取引が可能)に抑えた。為替変動を前提とした短期売買を繰り返すことで利益を追求する従来型FXと異なり、低レバレッジで建玉(未決済残高)を長期保有し持続的にスワップ収益を積み上げることができる。債券の金利収入は年2回だが、FXは毎日、スワップポイントが貯まっていく。資産が日々増えている実感がわく。
- ――開発に乗り出した背景は
- 長引く低金利・円安により、円に偏重した資産保有はリスクであり、高金利通貨のドルによる資産運用が理にかなうと判断した。また富裕層が増えていることも開発を後押しした。夫婦共働きによる世帯収入の増加やNISA(少額投資非課税制度)などを使った投資人口の拡大で、資産1億円超の「いつの間にか富裕層」が誕生している。こうした富裕層もまもなくリタイア期を迎え、ボラティリティー(価格変動)が高い株式に投資する「攻め」より「守り」に入りがちで、手元資金の流動性確保、資産保全、安定的な収益確保というニーズに応える新たな選択肢として開発した。
- ――債券担保のFXは日本初という。開発が難しかった理由は
- 債券を担保にFXでダブルインカムを得るという発想がなく、システム開発に2年かかった。債券は償還がある金融商品であり満期が来ると現金化される。担保管理態勢としてクレジット管理(格付け)も求められる。第2に、国内の多くのFX取引は現金(円)のみを証拠金としてサービスを提供しており、円以外の通貨を証拠金として提供していない。このように債券そのものが持つ仕組みへのシステム対応に加え、複数通貨を扱う仕組みを両立させるシステム開発が必要で、軽微な開発では収まらなかった。
- ――参入障壁は高いということか
- すでにFXを提供しているネット証券などはスワップではなくスプレッド(売値と買値の差額)を主な収益源としている。つまり顧客の取引頻度を増やしてスプレッドから収益を得るビジネスモデルだ。WEALTH FXは長期保有を前提としており顧客の取引頻度は多くない。このためスプレッドによる収益を多く見込めず、ビジネスの継続にはスワップによる収益を得る必要があり、既存のFX取引によるビジネスモデルとの併用が難しい。また債券の販売に力を入れておらず、担保となる債券の評価が難しい。債券管理態勢を強化するためのコストもかかる。一方、大手証券は債券残高もあって参入する可能性はあるが、富裕層向けでは債券よりファンドラップの営業に力を入れており、債券担保FXを扱うプレーヤーはないと考えている。
- ――外国債券に強いJTG証券ならではのサービスといえる
- 米ドル建て債券の預かり資産残高は4月に1000億円を突破した。高金利が魅力で、前年比2倍近くの積み上がりだ。米ドル建て債券を保有する顧客も増加しており、一定の基準を満たした債券であれば担保に活用できるので、FX口座を開設すればダブルインカムを享受できる。手応えを得ており、ドル円以外の通貨ペアの取引も追加していきたい。
- ――顧客の反応は
- 6月29日時点で口座開設は41人。このうち個人は36人で、ヒアリングによると金融資産1億円以上は16人(44%)。レバレッジは当初、1倍コースを選択し、希望により引き上げる仕様になっている。リスクを抑えて穏やかに取引し、焦らず運用をしてもらいたいからだ。
- ――WEALTH FXへの期待は大きい
- 当社は国内外で拡大する富裕層マーケットを重要な成長機会ととらえ、プライベートバンキングサービスの拡充に取り組んできた。WEALTH FXは参入障壁が高いので、金融業界全体が富裕層向けビジネスに注力する中、他社と差別化できるサービスになりうる。サービス開始から1年目で証拠金残高100億円の獲得を目指す。中長期的には1000億円まで拡大すると見ている。このため専任のプライベートバンカーによるきめ細かなフォローアップなどサービス体制を強化していく。すでに在籍する営業員のプライベートバンカー認定資格「プライマリーPB」の資格取得率は89%(26年6月末時点)に達し、業界でもトップクラスの水準となっている。優秀な人材をさらに獲得し、成長スピードを加速させていく。
- ――富裕層の獲得も進んでいるのか
- 預かり資産3000万円以上の顧客の増加に注力している。直近では富裕層の開拓として米ドル債の販売に力を入れており、WEALTH FXでさらに加速すると考えている。25年末の預かり資産は5000億円。26年末にはWEALTH FXの波及効果で7000億円近くまで増える見込みだ。29年には預かり資産1兆円を目指しているが、順調に進んでいるというより、それを待たずに前倒しで実現できると見ている。預かり資産が1兆円になると営業利益は20億~25億円が見込める。ストック収益なのでサステナブルな成長を描くことができる。
矢田 耕一(やだ・こういち)
Jトラストグローバル証券株式会社 代表取締役社長
1993年大成建設入社。ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券(現楽天証券)常務執行役員、楽天銀行常務執行役員などを経て2023年10月JTG証券社長。