アラームボックス株式会社 取締役副社長   具志堅 功太郎氏

弥生との事業シナジー創出目指す ~得意の定性情報に、定量が加わり与信管理の精度向上~

企業取引に欠かせない与信管理サービスを提供するアラームボックスが、2016年創業からの「次の10年」を見据え、新たな成長ステージに移行した。「すべての企業取引に安心を」という企業理念の実現に向け、会計ソフト大手の弥生(東京都千代田区)の子会社化を選択した。両者の強みを生かすことで既存事業の強化と新たな顧客獲得に取り組む。具志堅功太郎 副社長に狙いなどを聞いた。

――弥生の子会社になると決めた理由は
16年6月の設立から10年を目前に、創業期からの既存株主にエグジット(投資回収)機会を提供する時期でもあった。提携の話があり、次のステージに挑戦するチャンスととらえ、25年7月に発行済み株式の過半数を譲渡した。弥生から2人を役員として迎えたが、社名や組織体制、提供するサービスなどは従来と変わらない。弥生との事業シナジーの創出に取り組む。弥生は顧客のほとんどが中小企業で、我々は大手企業が多い。補完関係にあり、互いの顧客基盤をビジネスに生かせるのは大きい。
――そうした中で弥生の狙いは
弥生は、累計登録ユーザー数が400万超という業務ソフトウエア「弥生シリーズ」を展開するほか、近年はフィンテック事業に注力。会計データ(定量データ)を活用した与信モデルを開発したものの、与信力を強化するには定性データが欠かせないと判断、定性データに基づく「中小企業の与信評価ができるデータベース」を保有する当社に声を掛けた。これで課題だった与信力を強化でき、フィンテック事業の拡大につなげるという。
――両社がこれまで蓄積してきたデータを相互に生かす
弥生は定量、我々は定性という異なるデータを互いに大量に持っている。どう生かすかが問われるが、それぞれの強みをかけ合わせることでシナジーを生み出せるはずだ。我々も弥生との連携を通じて、中小企業への与信評価の精度を高め、事業成長を加速できると考えている。中小企業向けサービスを開発して、新たな顧客開拓にも生かす。
――アラームボックスが得意とする定性データはどのように収集しているのか
AI与信管理サービス「アラームボックス」はニュースやSNS、ブログなどインターネット上の膨大な情報から、企業の風評や信用情報をリアルタイムで収集している。ネット上には企業業績に影響を与える情報があふれており、AIを使って解析し重要な兆候を見つけ、顧客に取引判断に必要な情報を提供する。顧客は送られてきた情報をチェックするだけなので、売掛金などを回収できないといったリスクを未然に防ぐことができ、それだけ事業に前向きに取り組める。
――成長が著しい生成AIの影響は
「アラームボックスと生成AIによる与信管理はどう違うのか」と聞かれるようになった。ネット上で取れる情報をそのまま提供するならAIで十分かもしれない。我々も業務効率化の一環としてAIを使っているが、独自情報の取得に力を入れており差別化できる。人が情報を届けるので、顧客に安心と信頼を提供できる。生成AIは脅威だが、恩恵も得ている。与信管理サービスの高度化につなげていく。
――事業は伸びている
与信管理サービスは顧客数も売り上げも順調に成長を遂げている。提供しているサービスは3つ。新規取引先の与信管理「パワーサーチ」は、新規取引先の風評や口コミといった定性情報のほか、支払い状況などの財務情報をAIが収集・分析し、取引開始前の判断材料として提供する。最近はコンプライアンス問題についてのチェック機運が高まっている。2つ目は既存取引先の与信管理「モニタリング」で、既存取引先の状況変化やリスクを継続的に見る。ネット上の評判や信用情報からリスクが高いと判断するとアラーム情報を鳴らす。評判急降下や給与未払い、支払い遅延などの情報が入ると「要警戒」、行政処分や閉店撤退、退職者増加などは「注意」、開店・移転や新商品発売、役員人事などは「チェック」とレベル分けして伝える。顧客は大手企業が多い。例えば加盟店管理が必要なカード会社。大手は取引先を大量に抱えており、自前ですべてをチェックできないため我々のサービスを利用している。
――3つ目は
売掛金の入金保証「ギャランティ」(保全回収)。取引を開始したいが、売掛金は絶対に逃したくないというニーズに応える。取引先の倒産などで回収不能になったとき、その損害を保証する。例えば、マーケットプレイスを使って商売を始めるときの不安を取り除くことができる。取引を活性化させるために利用するのも有効だ。このほかにオフィスや店舗など事業用物件を専門に扱う「ビジネス家賃保証」を手掛けている。入居者の信用を保証するサービスで、家賃などの支払いが間に合わなかった場合、家賃を立て替える。保証事業は信用・信頼が欠かせないので弥生のネームバリューを生かして収益を高めていきたい。
――与信管理から日本経済をどう見ているか
物価高や人手不足から倒産件数は確実に増えている。特に中小企業が顕著で、先行き不透明感も強く、ますます苦しくなっている。「あの企業はどうなの」という不安から、景気後退時には与信ビジネスは追い風とみられがちだが、そうではない。やはり取引が活発なほうがニーズはある。一方で起業も増えている。直近は15万~16万社で推移しており、7万~8万の倒産・廃業と差し引きすると企業は増えている。それだけ新陳代謝が進んでいるわけだ。企業取引にリスクはつきものとはいえ、運や勘といった根拠のない自信ではやっていけない。中小企業が生き残っていくには債権の未回収を未然に防ぐ与信管理が重要になる。この大切さを訴えていく。

具志堅 功太郎 (ぐしけん・こうたろう)
アラームボックス株式会社 取締役副社長

2000年に大手ノンバンク入社。子会社にて売掛保証事業の立ち上げに従事。事業責任者時代に事業部を分社化し取締役に就任。その後上場企業グループ入り後も継続して保証事業の審査・営業・事業開発を担当。前職の経営メンバーとともに2016年にアラームボックス株式会社を創業。

2025年7月に弥生株式会社のグループ入り。2025年8月に取締役副社長に就任し、売掛保証事業および与信事業の責任者を担当。

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