株式会社ハッチ・ワーク     大竹弘会長、増田知平社長

月極駐車場を「付加価値を生み出す」場所に

不動産テックのハッチ・ワークは、月極駐車場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により利用価値の最大化に取り組む。目指すは「駐車する」場所から「付加価値を生み出す」場所への進化であり、モビリティーのハブとなるスペースプラットフォームだ。東京証券取引所グロース市場に上場した同社の大竹弘会長と増田知平社長に成長戦略などを聞いた。

――2024年3月26日に「革新ビジネスアワード」大賞受賞企業として最初のIPO(新規株式公開)を果たした
大竹 我々が取り組んできた「月極駐車場のDX推進」という上場企業では初めてとなる分野のビジネスモデルが認められた。上場セレモニーで鍾を鳴らすときに20人、その後の記念撮影に50人の社員が集まった。上場を喜んでくれたことが分かり「よかった」と感じた。
増田 最初に打鍾した。打ち直せないので緊張したが、達成感があった。初値は公開価格(2160円)を約30%上回る2815円を付け、3315円で引けた。投資家に注目され、ありがたい。
――上場のきっかけは
増田 2018年12月の社長就任がターニングポイントだった。月極駐車場のDX推進はスケール(規模拡大)の可能性、つまり社会ニーズをとらえていると考えていたので、社長として事業をけん引する覚悟を決めた。個人的に出資もし、上場を目指すことにした。
大竹 社長交代を機に社名も「ハッチ・ワーク」に変えた。今は2人代表としてお互い役割をわけることで成長速度と企業価値を高めることに集中している。
――社会ニーズをとらえていると感じた理由は
増田 実体験として自身で月極駐車場を借りる際に現地の看板を見て電話で問い合わせ、不動産会社に行って紙とハンコを使って契約する行為をしたとき、なぜホテルはスマホで探して申込まで行えるのに、月極駐車場ではできないのか不便に感じたことがきっかけ。月極駐車場DX推進のナンバーワン企業として、スマホで探して契約が当たり前の時代ができるだけ早く来るように力を注いでいく。
――事業内容は
増田 「月極イノベーション事業」と呼んでいるが、不動産会社向け月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」と、月極駐車場検索ポータルサイトと仲介サービス「アットパーキング」を提供している。クラウドは契約希望者が検索から契約、決済まですべてオンラインで完結できるので、不動産会社は物件情報の掲載、募集審査、契約手続き、賃料回収といった管理業務の最大95%を削減しながら、圧倒的な集客力で稼働率を向上させることができる。
――顧客の反応は
増田 全国の月極駐車場台数は約3000万台と推計されるが、そのうちクラウド登録台数は約31万台でシェアは1%だ。ほとんどが募集看板を見て紙で契約するのが実態といえる。今までは月極駐車場のオーナー、管理する不動産会社ともアナログからデジタルへのイノベーションを必要とする意識は薄かったが、DXが便利だと認識すれば変わるはずだ。サービス内容の認知と営業体制の強化などでマインドチェンジを促す。クラウドに載せる台数を増やすのが、まず取り組むべき「1丁目1番地」だ。
――売り上げ規模は
2023年12月期の月極イノベーション事業は11億1000万円だった。もう一つの貸会議室サービスなどを提供する「ビルディングイノベーション事業」の売り上げは9億4000万円。同期で売り上げが逆転した。成長エンジンは駐車場ビジネスでドライブをかけていく。ビル事業は安定的成長を見込んでおり、コツコツと継続的に利益を生むと見ている。
――今後の展開は
増田 上場したので次のステージに移る。企業価値の向上に向けて、DX推進で集めたデータを活用する戦略に乗り出す。契約のオンライン化やデータのリアルタイム運用などで月極駐車場の利用価値の最大化に取り組む。アナログからデジタルに置き換わることで、月極駐車場の利用用途や駐車車両に関する情報、契約更新にかかわる頻度など動きのあるデータが集まる。これにより月極駐車場を単なる「車を停める」場所から「付加価値を生み出す」場所に変えていくことができる。
――具体的に描いていることは
増田 EV(電気自動車)を所有する利用者数に基づいてEV充電器の設置を推奨できることから月極駐車場の付加価値が上がり、価格にも反映できる。その他、オンライン契約でリアルタイムの満空情報を得られるので1日、1週間、1か月といった短期での利用も可能だ。ダブルブッキングも防げる。リアルタイムで空いている駐車場の新たな収益源になりうる。さらには利用者の属性、車両特性などに基づいて、月極駐車場内で提携企業による自動車関連サービスを提供することも考えている。
――その先の付加価値向上策については
増田 未来構想として「ファーストワンマイルステーション構想」を掲げている。物流のラストワンマイルに対し、自宅(住宅地)から最初の一歩、つまり生活に隣接するエリア(ファーストワンマイル)にある月極駐車場をいろいろなモビリティーサービスを提供する拠点とする。キッチンカーが食事を提供するほか、車のメンテナンスを行うカーケアステーション、カーシェアリングやレンタカーの乗り捨てステーション、災害持には救護基地・電源供給基地となれるEV充電ステーションなどモビリティーを活用したサービスプロバイダーが集積、月極駐車場をハブとする新たな経済圏を創るプラットフォームの確立を目指す。
――上場できた要因を改めて振り返ると
大竹 環境変化に気づいて、何事にも「おもしろい」と挑んできた。環境変化への対応能力を持っているのが強みだ。(貸会議室などビル事業に加えて)駐車場ビジネスを始めたのも、増田が駐車場探しを面倒と感じたことから始まった。ペイン(苦痛)にフォーカスして創り上げた。「(スマホで完結できる)ホテルを予約するように」と、月極駐車場の探し方を変えていくというメッセージを発信。実現に向けて今やるべきことを追求していくことが大事だ。
増田 社員として入社したが、メッセージを出してチャレンジした。諦めなかったし、逃げなかった。
大竹 第2、第3の創業といえるようなビジネスを創れる会社が強い会社であり、伸びるベンチャーだ。こうした企業文化・風土づくりが必要だ。

大竹 弘(おおたけ・ひろし)
株式会社ハッチ・ワーク 代表取締役会長

1963年生まれ 福島県出身。大学卒業後、トーソー㈱に入社。その後、セコム㈱、㈱ビルディング不動産、グロービート・ジャパン㈱を経て2005年当社代表取締役社長、2018年に代表取締役会長に就任。
オフィスビル業界におけるサブリースのノウハウおよび飲食業界におけるフランチャイズ事業のノウハウを活かし、貸会議室事業、レンタルオフィス事業などのビジネスを立ち上げてきた。ストックビジネスに対する深い知見は「アットパーキングクラウド」にも活かされている。


増田 知平(ますだ・ともへい)
株式会社ハッチ・ワーク 代表取締役社長

1978年生まれ 神奈川県出身。大学卒業後、㈱セブンイレブン・ジャパンに入社。その後、㈱グラントコーポレーションを経て2006年、当社へ入社、2007年に取締役、2018年に代表取締役社長に就任。
自身の実体験を基に、月極駐車場検索ポータルサイト「アットパーキング」をリリース。その後、不動産会社向けの月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」を開発、現在の当社主力事業となっている。

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