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エイコム株式会社 代表取締役   飯塚 吉純

顔認識ビーサイトの機能拡充

デジタルサイネージの広告視聴効果測定などを手掛けるエイコムは、高速で手軽に導入できる顔認識マーケティングツール「BeeSight(ビーサイト)」の機能拡充を進めている。新型コロナウイルス禍で一般化したマスク着用時でも顔認識を可能にしたほか、人物のカウントや通行量の計測など人流も把握できるようにした。機能向上に積極的な飯塚吉純代表取締役は「2024年は飛躍の年にする。ビーサイト事業は右肩上がりを続ける」と確信する。

――ビーサイトの基本機能について
キーワードは手軽、しかも安全。顔認識では画期的と言われたアンドロイドOS上で、ネットワーク接続を必要としないエッジコンピューティングで運用できる事で、個人情報保護の観点からも安全だ。ネットワーク不要なため、トラフィックの費用が発生せず、本当に気軽に活用できる。例えていうなら、ヘアカラーや顔剃りなどを行う理美容院とは違い、ローコストでスピーディーな1000円ヘアカットサービスだ。
――取得できる情報は
サイネージなどの視聴者(お客さま)の顔をカメラで撮影し入力すると、年齢や性別に加え、表情から幸せや驚き、悲しみ、怒りといった感情、目の位置や頭の方向、視聴時間などもリアルタイムで計測できる。これにより広告効果などを測定できる。
――ビーサイト開発の経緯は
デジタルサイネージ事業に携わっていたが、コンテンツの価格競争を避けて勝ち残るにはどうするかを検討する中、欧州の大学のスピンアウト企業が開発したAI(人工知能)顔認識技術の開発キット(Software Development Kit)に出会った。デジタルサイネージが抱えていた課題解決に顔認識機能が最適と考え、開発に乗り出した。
――課題というのは
広告の受け手(視聴者)は本当に視聴しているのか、広告は視聴者の属性にあわせた最適なコンテンツを放映できているのかといった疑問・不安があった。またネットワーク環境がないところでも運用したい、既存のシステムは高性能だがコストがかかるので安く構築できないかといった要望などに応え切れていなかった。
――確かにビーサイトの基本機能は課題解決に十分だ
当初は認識速度が遅い、認識率が低いといった精度面でニーズに応えきれず、トライアンドエラーを繰り返しながら改善を加え、2016年6月に初期版が完成しプレスリリースを配信した。同年10月にはシーテックジャパン2016に出展した。1コマのブースだったが、予想以上の反響を呼び大盛況で終えた。ニーズはあると判断、市場開拓に乗り出した。
――その後は順風満帆だったのか
タクシー車内に設置されたサイネージにビーサイトを導入すれば、お客さまの属性にあったコンテンツを提供できると提案し採用されたが、すぐにコロナ禍に見舞われてしまった。マスクをつけると顔認識ができなかったという技術的な問題に加え、そもそも外出自粛でタクシーに乗る機会が減り、計画が頓挫した。年間1万台ずつ増えると見込んでいたので、4年間で4億円の収益を得る機会を失い、経営的には大きな打撃を受けた。
――これをどう生かしたのか
解析処理速度や精度の向上によりマスク着用時でも顔認識を可能にした。鼻を出した状態でのマスク着用も検知し、正しいマスク着用を促す警告も出す。横顔の取得もできる。ビーサイトはこれまでマーケティングデータとして扱う顔認識に特化して開発してきたが、店舗内でのスタッフも計測してしまうのでデータの精度に影響が出るとの意見を踏まえ、登録スタッフを計測データから除外する顔認証技術も新たに取り入れた。VIP判定にも使える。
――人流マーケティングにも進出した
FIELD(フィールド)は人体検知によるエリア侵入やライン通過を検知する。体の一部が隠れていても高速・高精度に検出しカウントする。このため売り場の盛況度や混雑状況をリアルタイムで把握できる。侵入禁止エリアへの立ち入り検知やアラート発信との連携も可能だ。ライン通過では、措定したラインに対し、どちらの方向に通過したかを検出する。検出数を延べ数で記録し、時間ごとの通過人数、場所ごとの人数比較などに活用できる。このため出入り口での入店カウント、通路ごとの人流把握などに使える。
――人流に進出したきっかけは
悔しい思いがあったからだ。エレベーター内にサイネージを入れる話があり、マスク着用時でも顔認識可能なビーサイトに声がかかった。最終選考にも残り、事業者から内定ももらった。しかし最後の最後の最後で『後ろ姿も顔認識できるのか』と問われ、当然ながら『無理』と答えた。事実関係は分からないが、大手の電機メーカーに決まった。この思いが人流に進出するきっかけになった。「フィールドはいいね」と引き合いも強く、人流把握ニーズは強いことが分かった。
――ビーサイトの実績は
タクシーやバスなど交通機関、スーパーマーケットやドラッグストアなどでのデジタルサイネージに使われている。クルーズ船内のレストランでは入店カウントに活用している。ビュッフェ式なので入店数に応じて料理を提供するシステムになっており、顔認識による人数カウントを行って厨房に知らせる。これにより食品ロスの削減につなげている。また大阪メトロ梅田駅にビーサイトが組み込まれた冷蔵自販機が設置されており、購入者の属性分析のマーケティングに利用され、現在、全国に約30台設置されている。
――顧客は順調に増えている
いろいろな会社とのコラボが我々のビジネスモデルといえる。縁や出会いを大事にしてきた。このため展示会にも積極的に参加する。誰がどれくらい来るか分からないが、展示会で出会ってトントン拍子でビジネスに発展するケースもある。賞にも応募する。イノベーションズアイの「革新ビジネスアワード2017」で大賞を受賞したほか、「CEATEC2017」では部門賞を受賞。東京都主催の「世界発信コンペティション2019」ではサービス部門特別賞を受賞した。受賞で知名度が上がり、主に表情認識でテレビ制作会社の撮影に協力する機会が増えた。売り上げは立たないが、PR効果は大きい。
――今後の展開は
これまでの縁と出会いを生かし、24年は飛躍の年にする。フィールドは引き合いが活発だし、新たに「インスタント・サイネージ」も投入する。インスタグラムに投稿するだけで、簡単にデジタルサイネージにコンテンツが反映されるというものだ。ビーサイト事業は機能強化などにより、今後も右肩上がりが続くと確信している。また私は24年に60歳の還暦を迎える。事業承継を考えると経営の若返りも必要だ。
飯塚 吉純 (いいづか・よしずみ)
エイコム株式会社 代表取締役
1964年 東京都出身
1985年 東放学園専門学校 放送技術科卒業
様々な映像制作会社で映像撮影技術、営業などを経て、2002年に映像、Web制作を生業とする有限会社アーツエイハンを設立、代表取締役に就任。

2011年8月 デジタルサイネージ業務に特化したエイコム株式会社設立し代表取締役に就任。コンテンツ制作、システム開発を行い2015年顔認識アプリ「BeeSight」の開発を開始する。

Webサイト: BeeSight(ビーサイト)

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