イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

株式会社Liquid 代表取締役   長谷川 敬起

高品質武器に世界で戦う

Liquid(リキッド)は、本人確認をオンラインで完結できるeKYC(イー・ケー・ワイ・シー)で市場をけん引する。2019年7月からサービスを提供している「LIQUID eKYC」の累計本人確認件数は3000万件を超え、契約事業者数は約190社に達した。長谷川敬起代表取締役は「あらゆる業界で知られるようになった。高品質を認めるグローバル企業からも支持されており、世界で戦える」と自信を深める。

――LIQUID eKYCとは
インターネット上での契約やアカウント登録、口座開設時などに必要な身元確認をオンライン完結で行うサービス。ウェブブラウザやスマートフォンアプリを使って運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を撮影、もしくはICチップで読み取りを行い、自撮りの顔写真と照合することで身元確認を行う。
――利用状況について
安全かつスピーディーに本人確認できることが知られるようになり、金融の取引時確認(犯罪収益移転防止法)、携帯電話契約(携帯電話不正利用防止法)といった『利用者が存在する本人である』ことなど身元確認をする必要がある業界だけでなく、法規制がない業界でもeKYCへの意識が高まっている。顧客の裾野は広がっている。
――最近の傾向は
金融機関の比率が高いが、通信キャリアや古物買い取りから、EC(電子商取引)や人材紹介、コンビニなどの小売り、Web3(ブロックチェーン技術を活用した分散型Web)関連サービスなどへの導入も進む。EC業者は学割利用時などに、誤った年齢で登録されるリスクがあり、LIQUID eKYCで正確な年齢確認を行う目的で導入している。小売事業者の酒/たばこの成人認証時や学生定期を扱う交通機関も同様のユースケースとして検討が進んでいる。
――Web3系とは
定義は色々あるが、誰でも発行可能な暗号資産・トークンによって成立する経済圏の中で、利用者が経済的にも利害が一致した状態で、様々なPJT(プロジェクト)により主体的・民主的に関わっていける場のことを指す。
実例として、国内だと新潟県長岡市の山古志地域の地方創生プロジェクトや、世界的にはサッカークラブのFCバルセロナなどもファントークンを発行し、コミュニティ構築を進めている。
これらのPJTの前提の一つに、暗号資産やトークンの発行があり、世界最大規模の暗号資産取引所であるバイナンスの日本法人がLIQUID eKYCを導入した。法規制へ準拠した方法で高精度かつスピーディーに本人確認できることが評価された。口座開設時の本人確認で活用されている。暗号資産取引所サービスの米コインベースが今年、日本市場から撤退すると発表したが、仮想通貨(暗号資産)がなくなるとは考えにくい。仮想通貨は幻滅と期待を繰り返しながら右肩上がりで伸長し、ボラティリティーも安定し落ち着いていく。なりすましを防ぐ必要があり、我々が支える。
――LIQUID eKYCへの支持が広がっている理由は
生体認証技術や画像処理技術によって本人確認時の離脱率や不鮮明な画像割合が低いことだ。分かりやすい操作性も受け入れられている。個人は迷わずに使える、つまり自撮りのしやすさを求めるが、企業側は厳格な本人確認というクオリティーの高さを求める。個人にとって撮影しにくいことを意味しており、これらはトレードオフの関係にある。これをクリアしており、それだけ競争力があるということだ。実際、他社からの乗り換えは多いが、こちらをやめて他社に移るケースは少ない。
――優位性の維持向上に向けた取り組みは
自動撮影による顔認証のコンピュータービジョニング技術力と自撮りする本人の使いやすさの接合を磨いている。またデータを自ら抱えるのも強みだ。他社は自ら保持しない。我々が預かるのはAI(人工知能)の機械学習のためで、画像認識技術の向上につながる。預かるデータは約1500万件を既に超えており、世界有数といえ、世界市場に出ていける。
――世界進出にあたりライバルと競争優位性は
先ほどのトレードオフの関係をクリアしたことで、UX(ユーザーエクスペリエンス)観点ではグローバルメーカーと戦える。実際、グローバル展開しているバイナンスが選んだのは我々だ。クオリティーの高さが認められたわけで、例えばバイナンスが日本以外でもLIQUID eKYCを使ったビジネスを展開すれば、良さが伝わる。日本に参入した外資系への採用が広がれば世界展開も可能になり、事実、日本参入してくるグローバルサービスベンダーへのLIQUID eKYCの導入も進んでいる。まずは東南アジアから攻める。フィリピン、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムを目指す。
――ところで22年1月に提供開始の「LIQUID Auth(リキッドオース)」の現状は
提供を始めたのは、キャッシュレス経済の普及や新型コロナウイルス禍の影響で経済活動の非対面化が進むに伴い、なりすまし不正も増加していたからだ。リキッドオースはネットバンキングやEC、ATM(現金自動預払機)、オンライン試験、自動入退室管理など幅広い場面で、サービス利用者が利用開始時に登録された利用者本人であるかを確認するサービス。徐々に顧客を増やしており、利用件数は爆発的に増加している。
――どんな使われ方をしているのか
メインは金融機関で不正防止に使っている。実在する企業やサービスをかたって個人情報を不正に取得するフィッシング詐欺はコロナ流行前に比べ数倍に増えている。最近では口座開設時にマネーロンダリングのために悪用されている。身元確認済みの顔データを事後に改ざんするのは極めて難しいため、万が一、パスワードや携帯端末など他の認証情報が搾取されてもなりすまし不正を防止できる。
――最近始めた取り組みは
昨今ECサイトのクレジットカード決済でも不正が増えており、経産省は23年3月発行のガイドラインで、全てのEC加盟店が25年3月末までにEMV3-Dセキュアを導入し、カード会社であるイシュアーは、EMV 3-Dセキュアの本人認証方法として、中リスク取引については、静的(固定)パスワードから生体認証や動的(ワンタイム)パスワード等の認証方法に移行することを通達した。この生体認証をリキッドオースで対応することが可能で、商談を進めている。
また自治体との取り組みも拡大している。Liquidの生体認証技術が評価され、石川県加賀市が推進する「加賀市版スマートパス構想」の事業者に採択された。顔認証とマイナンバーカードによる公的個人認証を活用し、市内の様々な施設やサービスを“顔パスによる手ぶら”で利用できるようにする。将来的には決済情報も紐づけて、交通機関や買い物などのユースケースを市内全域に拡大していく構想だ。まずは24年春に、医療機関、屋内遊戯施設、避難所を対象に順次本格稼働を予定している。医療機関での診察券レス化や施設での事務手続きの簡素化、また災害時に本人確認書類がなくても顔認証で避難者の迅速かつ正確な把握ができる仕組みを実現していく。
長谷川 敬起(はせがわ・ひろき)
株式会社Liquid 代表取締役
慶應義塾大学大学院修了。2002年PwCコンサルティング入社。ドリコム取締役を経て16年ELEMENTSに入社。20年に事業子会社であるLiquid代表取締役。45歳。愛知県出身。

Webサイト: https://liquidinc.asia/

イノベーションズアイに掲載しませんか?

  • ビジネスパーソンが集まるSEO効果の高いメディアへの掲載
  • 商品・サービスが掲載できるbizDBでビジネスマッチング
  • 低価格で利用できるプレスリリース
  • 経済ジャーナリストによるインタビュー取材
  • 専門知識、ビジネス経験・考え方などのコラムを執筆

詳しくはこちら