イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

株式会社喜望大地 代表取締役会長   喜多 洲山(きた・しゅうざん)

「非上場株式の現金化」で少数株主とオーナー社長の悩みを解決

喜望大地が手がける、非上場株式の現金化サービスへのニーズが急増している。同社が運営する「株式買取相談センター」には、一般には流通性のない非上場会社の株式を現金化できないかという相談が多数寄せられている。 一方、株式の発行会社が分散した株式を買い集めて集約化することに、同サービスが役立つケースが増えてきた。そこで同社は、分散株式の集約化を通じて経営権を確保することを支援する新サービスを開始する。それに先立ち、代表取締役会長の喜多洲山氏が新著を8月23日に出版する。

非上場株式の現金化サービスへのニーズが3年で4倍以上に

――御社が運営する「株式買取相談センター」への問合せ件数が急増しています
非上場企業の株式や同族会社の株式、譲渡制限株式の売却および現金化のサポートを手がける「株式買取相談センター」を、2018年に開設しました。
親御さんから相談を受けたお子さんが、問題意識を持ってネットで検索した結果、わが社のサイトにたどり着いたというケースもかなりあります。「父の代理です」あるいは「母の代理ですが、親が持っている非上場株式がお金になりませんか?」と、お問い合わせをいただくことが多くなりました。
――最近は、どのぐらい問合せをいただいていますか?
直近3年でみても、「株式買取相談センター」への問合せ件数は年間110件、280件、465件と急増しています。また昨年は、弁護士からのご依頼が25件、破産管財人からの依頼も15件へと増えています。
お客様が保有している非上場株式を発行会社に買い取ってもらう際、交渉のプロである弁護士の先生が間に入っても、価格面で折り合わないケースが少なくありません。また、個人の破産者や破産会社の保有資産の中に、非上場会社の株式が含まれていることもあります。その際、当社は破産管財人からのご依頼で、非上場株式を換価(換金)し債権者に分配するためのお手伝いをさせていただいています。

株式買取相談センター」のホームページ

あなたが非上場株式を相続したときに起こり得る問題

――非上場株式の保有者、すなわち少数株主の皆さんはどんな悩みをお持ちなのでしょうか?
サービス開始当初は、財産を相続して非上場株式を保有するようになった方が、お客様の中で圧倒的多数を占めていました。創業者の方から、お子さん方が相続財産として株式を引き継がれたケースが多かったのです。
――株券がタンスの中から出てくることもあるという話ですね
そうですね。誰も知らなかったということもあります。でも非上場株式の保有者がお亡くなりになった場合、それを相続財産として申告し納税する義務が生じるリスクが高いということを、ご存じない方が多いのです。
――非上場株式の現金化サービスは、どんなことがきっかけで始まったのですか?
お金に困っていて、保有している財産の中で売れる物は売りたいというコンサルティング先のクライアント様がいらっしゃいました。その方から「これがお金に替わりませんか?」とご相談を受けたのが、非上場株式だったのです。
たまたまそれが、ご兄弟の間で揉めている、いわゆる困難案件でした。後継者が経営を支配し、それ以外の株主には株式の配当がゼロか、もしくは雀の涙ほどの金額しか支払われていませんでした。そのため、兄弟双方が弁護士を立てて「骨肉の争い」を繰り広げているような状況だったのです。
これではとても話し合いにはなりません。また私自身は弁護士資格を保有していないので、代理人交渉ができません。私にできることがあるとすれば、まずわが社が株式を買い取り、株主として手続きを進めていくしかないと考えました。
会社法を研究したところ、非上場株式の保有者が株式の発行会社に対し、第三者への株式譲渡承認請求を行い、発行会社がそれを拒否した場合、発行会社もしくは指定買取人が株式を買い取るというルールが定められていることが分かりました。
そこで、こうすればうまくいくだろうという仮説を立ててスキームを構築し、手続きを進めたところ、良い形で問題が決着したのです。
それでも当初は、このサービスにどれだけニーズがあるのかはわかりませんでした。でもそのうちに、親しくしていた弁護士の先生からも「この案件を同じような形で解決できないか」というご相談を受けるようになり、サービスが広がっていったのです。
――ご著書の『増補改訂版 少数株主のための非上場株式を高価売却する方法』(幻冬舎)をみると、非上場企業の創業者や株主が亡くなってしまったり、ご本人が自身で意思決定できなくなった場合、株式の相続がいかに大変かということも記されています
実際にそういう事態になって初めて、多くの人は問題があることを知るわけです。税理士や弁護士の先生たちは、問題が起こりうることはご存じです。しかしながら、税理士や弁護士の先生が少数株主から依頼を受けて、発行会社や会社のオーナーに株式の買い取りを持ちかけても、言い値で買い取っていただけるのは、かなりのレアケースです。
――非上場株式をどれだけの価格で買い取ってもらえるかは、株主にとっては死活問題ですね
不動産を保有していれば固定資産税がかかりますが、結局、少数株主側からいえば、株式を保有していること自体に費用はかかりません。しかし、お子さんなどが株式を相続したとき、株式の資産価値の評価によっては、高額な相続税を納付しなければならなくなる可能性があります。
そうなると、株式を売却できない限り、納税資金を工面することができなくなることが多いのです。銀行に株券を持っていっても融資してはくれません。非上場株式には流動性がないからです。
そこで株式の発行会社や会社のオーナーに買い取りを依頼しても、額面での買い取りを提示され、折り合いがつかないことがあります。
――額面での買い取りとは、どういうことですか?
2001年に商法が改正されるまで、株式には額面がありました。一昔前の老舗企業の時代は額面が50円、つまり1株50円でしたが、昭和の時代は500円の時期が長く続きました。
今は株式には額面がなく、1株1万円などというように自由に決められるようになっています。ところが今、相続されている株式は額面500円のものが圧倒的に多いのです。額面は1株500円ですが、少数株主にとっては本来、現在の会社の「純資産÷発行済株式数」で価値を算定してもらうことが一番良いわけです(純資産価値額方式)。
このやり方で計算すると1株1万円の価値がある株式を、額面500円、すなわち1株500円で買い取るといわれても、あるいは「額面の2倍の1000円で買い取ります」といわれても、少数株主としては到底納得がいきません。

譲渡制限があっても非上場株式の売却は可能

もう1つ、よくあるのは「譲渡制限のある株式は売れない」という誤解です。
譲渡制限株式とは、売買は自由ですが株式譲渡の際に、取締役会または株主総会などで、株主名義変更の承認が必要と定款で定められた株式のことです。
非上場企業の中でも、株主が同族で経営もファミリーで行っている企業は、親族(親戚関係にある人たち)以外の株主が入ってくることを嫌がる傾向があります。いわゆる「招かれざる株主」は敬遠されるので、同族以外の株式売買が困難になることが多いのです。
後述するように、株式会社は、50%を超える株式を保有していれば、取締役の選任や解任などの権利を得ることができます。つまり、株式を買い集めれば会社を乗っ取ることも可能になるのです。そこで、「招かれざる株主」が登場したり、会社経営に支障をきたす恐れのある株主の登場を阻止するために、譲渡制限という制度が設けられました。
私が、たとえばAさんが保有する非上場株式を買うという契約自体は、契約の自由の原則により成立します。でも、私が買った株式の発行会社の株主名簿に、私の名前が記載されない限り、私は株主としての権利を行使することはできません。
ですから普通は、非上場株式の保有者であるAさんと、株式を取得したい私が連名で株式の譲渡承認請求を発行会社に提出します。発行会社が株式の譲渡を認めれば、私は株主になることができます。
ところが、当社が非上場株式の買い取りの相談をいただく案件の多くが、親族間で揉めているといったトラブルを抱えているので、スムーズに事は運びません。
――問題はその、非上場株式の発行会社が株式の譲渡を認めない場合ですね
会社法140条には、株式会社は譲渡承認請求を承認しない場合、自社または自社が指定する買取人(指定買取人)が、対象となる株式を買い取らなければならないと定められています。
そこで当社では、少数株主から株式を先に取得し、委任状をいただいたうえで、その会社法の規定にもとづいて譲渡承認請求を行っているわけです。「当社がAさんから株式を取得しましたから譲渡承認をして下さい」と。そして、譲渡承認請求が認められなかった場合、株式の発行会社か指定買取人が当該株式を買い取ります。
――非上場株式の保有者が株式を売却されたあとの交渉も、御社が行うということですね
当社に株式を譲渡いただいたあと、譲渡承認請求に関しては委任状をいただき、交渉もすべて当社が行っています。

分散株式の集約化――企業にもオーナー経営者にも喜ばれる理由

――非上場株式の買い取りサービスは、株式の発行会社さんにとっても大きなメリットがあるということですが
そうですね。私たちも最初は、保有株式が現金化できずに困っている少数株主を助けたいという思いで事業に取り組んでいました。ところが、案件の数をこなしていく中で、発行会社や会社のオーナーの皆さんに喜んでいただくことが多くなったのです。
――非上場株式の買い取りサービスには、発行会社側にもメリットがあるのですか?
発行会社や会社のオーナーの皆さんにしてみれば、実は、このサービスを通じて、分散した株式が集約できるわけですね。
――それは大きいですね。分散した株式をどう集約するかということで、困っている企業が多いと聞いています
それが結構難しいのです。とくに同族会社で親族がもめている場合は、お互いに口もきけないわけです。「意地でも売るか」、「ゼニカネちゃうぞ」の世界ですから。その意味で、私たちのビジネスは、非上場株式の少数株主と発行会社の両方に喜んでいただけるサービスだと考えています。

日本の非上場会社はサントリーを目指せ

私は、日本の一定規模以上の非上場オーナー会社のお手本は、サントリーだと思っているんです。
サントリーは、非上場会社かつオーナー系で日本最大の会社です。年商は2兆9701億円、営業利益が約2765億円(サントリーホールディングス2022年12月期連結決算)で、従業員は4万人以上(2022年12月31日現在)。1899年に創業し今年で124年目を迎え、世界にも広く展開しています。2014年にはアメリカの蒸留酒最大手メーカーのBeam社を約1兆6500億円で買収し、大きな話題となりました。
同社が良い意味で、ビール事業で45年間の赤字に耐えながら念願の黒字化を果たし、『プレミアムモルツ』が人気銘柄の一角として市場で広く認知されるようになったのも、非上場かつオーナー系の会社だったからです。サントリーのDNAといわれる「やってみなはれ」は、同グループではアメリカでもヨーロッパでもそのままの言葉で通じるようですね。
――なるほど。非上場企業なり、そのオーナーにしてみれば、サントリーさんはお手本中のお手本ですね
そう、お手本中のお手本です。創業者の鳥井信治郎さんには3人の息子さんがいましたが、3兄弟の家族が喧嘩をせずに、その時代時代で一番優秀な人を後継者にして、経営をつないできたのです。
なぜ兄弟間でもめ事がなかったかというと、信治郎さんがご存命のときに、兵庫県宝塚市・雲雀丘(ひばりがおか)のご自宅に、毎週日曜日の夕方に必ず3家族が集まっていたんです。1年50週、毎週ですよ。
――なかなかできることではないですね
そうですね。3家族が1つの大きなファミリーのように親しく交流し、濃密な人間関係の中で後継者が育っていったので、親族同士の争いがなかったのです。
もう1つ、サントリーホールディングスという巨大なグローバル企業の株主は誰か、ご存じですか?
――大株主ということだと思いますが、創業家ではないのですか?
ほとんどの人がご存じないのですが、寿不動産(大阪市北区)という資産管理会社がサントリーホールディングスの親会社で、同社の株式の89.5%を保有しています(サントリーホールディングス2022年12月期連結決算)。
株式の保有比率が90%を超えた場合、残りの全ての株主に対して株式の売り渡しを請求すること(スクイーズアウト)が可能になりますから。
――株式が集約していることの強みが、どれだけ大きいかということですね
そうです。それから寿不動産の株主が保有しているのは、種類株式の1つである無議決権株式です。配当などで優遇されるかわりに議決権は与えられない。つまり、経営には参画できない。そのようにして、株式を分散させないための仕掛けが完成しているのです。
非上場なので、オーナー家が株式をしっかりおさえているわけです。上場したら、株式がどんどん希薄化しますからね。

非上場企業のオーナーは経営権を盤石にせよ

逆にいえば、非上場で株式が分散したままの状態だと、経営権を維持するのが難しくなる可能性があるということです。経営権を維持するには何が必要だと思いますか?
――まず、一定比率以上の株式の保有ですね
少なくとも、議決権のある株式の過半数を保有していることです。過半数以上の株式を保有していれば、取締役を選任・解任することができます。もし自分が49%の株式しか持っていないのに、相手が51%の株式を保有していたら、「クーデター」に遭って取締役を解任されるリスクもあります。
もう1つは、取締役会の構成メンバーの中で、自分を除いた過半数が味方になってくれること。大きな会社などの取締役会で、代表取締役の解職(解任)決議が行われることがありますが、代表取締役本人は解職決議で議決権を持つことができません。だから自分が代表取締役解職に反対の意思表示をしても、反対票としてカウントされないのです。
悪意のある人に、いつ首を切られるかどうかわからないというリスクもあります。
――たとえば、どういうことですか?
会社の株式を100%保有している創業オーナー社長が亡くなったとしましょう。奥さんと長男、次男がいて、遺言書がなければ奥さんが株式の半分を相続し、残りを兄弟で半分ずつに分けることになります。
創業者はもともと優秀な長男に経営を承継したいと思っていたとしても、長男は25%の株式しか相続できません。長男ばかりが優遇され、次男はずっと肩身の狭い思いをしてきたとしましょう。不憫に思った奥さんが次男の応援に回ると、株式の保有比率が75:25となり、長男は負けてしまうということが起こりうるのです。
あるいは、奥さんと死別したオーナーが若い女性を見初めて再婚したとします。ところがオーナーが亡くなったとたんに後妻が全権を握り、先妻の長男が会社から追い出されてしまったというような相談を受けたことも、1度や2度ではありません。

会社の経営権を確保するための「全経営者必読」の新著

そうならないためにはどうしたらいいのかということを記したのが、8月23日にダイヤモンド社から出版される予定の新著です。すべての経営者に読んでいただきたい書籍だと思っています。

8月23日に発売予定の新著『オーナー社長歴45年 洲山が語る 社長のための 分散株式の集約で経営権を確保する方法』(ダイヤモンド社)

――どんな内容の本ですか?
章立ては下記の通りです。
第1章 経営権をめぐる争い――「お家騒動」から学ぶ経営権確保の必要性と重要性
第2章 少数株主が存在するリスク
第3章 株式価値はどう計算するか?
第4章 オーナー社長の株式集約サポート事例集
第5章 経営権安定の「必要3条件・十分3条件」と事業承継
――先にお話いただいた、経営権を盤石にすることがなぜ大切なのか、具体的にはどうすればいいのかが、まとめられているのですね
たとえば、第5章に経営権安定のための必要条件、十分条件について記しました。
経営権の必要条件は、代表権を持ち、お金の決裁権と人事権をもっていることです。会社法349条に「取締役は、株式会社を代表する」、「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められています。原則的に、契約を締結する権限を持っているのは、会社の代表権を持つ代表取締役なのです。
ところが、必要条件である代表権を持ってさえいれば、会社の従業員がついてくるかというと、そうではありません。「こんな社長についていけるか」とみんなが怒って辞めたら、会社は存続できません。従業員が「この社長のためなら」とか「この社長を支えよう」と思って頑張って働いてくれなければ、会社の業務は執行できないのです。
ほかにも、お客様や取引先が、代表取締役についてきてくれないと困ります。納入先や仕入れ先が横を向いてしまったら、商品やサービスを提供することができません。あとは、代表取締役の信用力に銀行やリース会社の与信がついてくること。それらが十分条件です。

分散株式の集約化を通じて経営権の確保を支援する新サービス

――非公開株式の発行会社側にも喜ばれる新サービスを開始するとのことですが
新著の目玉となるテーマでもありますが、分散株式の集約化を通じて経営権の確保を支援するサービスを、8~9月にから新たに展開します。サービスの詳細については、新著の出版のタイミングを見計らい、改めてご紹介させていただきたいと思います。
――新サービスは、事業承継にもかなり関わってくるわけですね
そうです。まずは現役の社長が「お家騒動」などさまざまな事情で会社を追い出されたりしないように、安定した経営権を確保しましょう、というのが新サービスの趣旨です。
株式保有比率が50%を上回ることはもちろん、できれば単独で株主総会での特別決議が可能な3分の2の66.7%以上の株式を持つことを目標にしていただきたいと思います。
ところが分散した株式の集約化は難しく、多くの企業やオーナー経営者が苦労している問題です。事業承継を支援する商工団体や金融機関などの支援機関でも、ほとんど未開拓の分野です。
――御社がこの分野のパイオニア的な存在だということですね
はい。非上場株式の現金化サービスに対するニーズが急増する中で、組織体制の強化もはかりました。今年、若手の優秀な人材に代表取締役社長に就任してもらい、立命館大学MBA時代の恩師にも社外取締役、社外監査役を務めていただいています。三井住友銀行の新宿支店長経験者もスカウトし、クライアントの問題解決をサポートさせていただく体制を整えました。
経営・金融・法律に精通した外部の専門家によるアドバイザリーボードも設置し、非上場企業の経営者に安定した経営権の確保をサポートする事業を行っていきます。

黒字企業の廃業率低下に貢献したい

――株式の相続にしても分散株式の集約化にしても、事業承継に大きく関わってくる問題ですね
そうなんです。事業承継は、日本の中小企業経営者の共通の悩みではないかと思います。
中小企業の2022年版「小規模企業白書」によれば、経営者の平均年齢の上昇とともに会社の休廃業・解散件数が増加する傾向にあり、2021年は黒字倒産が全体の56.5%を占めています。
赤字で会社がなくなってしまうのは、ある意味仕方がないことです。でも会社自体は儲かっているにもかかわらず、後継者がいないために廃業を余儀なくされるのは、非常にもったいない話です。私たちは、この事業を通じて、日本の黒字企業の廃業率低下に貢献したいと考えています。
団塊世代が全員後期高齢者になる2025年には、日本の人口の5人に1人が後期高齢者となり、労働力の減少や医療・福祉分野に大きな影響が現れると見られています。
――もう2年後に迫っていますね
経済産業省が2017年10月に発表した試算によれば、事業承継を放置し続けた場合、後継者不在のために中小企業・小規模事業者の休廃業が増加し、2025年頃までの10年間累計で、約22兆円のGDPと約650万人の雇用が失われる可能性があるということです(経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」)。
2022年度の日本のGDP(名目)が561.9兆円ですから、約4%が失われます。また2022年の平均就業者数は6723万人ですから、その9.7%にあたる雇用がなくなるのです。これは大変な事態です。そういった意味からも、当社が新しく手がける事業は社会的に意義が大きいと考えています。
――分散した株式の集約化は、廃業率の低下と雇用の確保にどう役立ちますか?
たとえば後継者がいない企業で事業を承継し、従業員の雇用を守る1つの手段として、今後ますますM&Aが活用されていく機会が増えると思います。ところが事業承継にM&Aを活用するための第1条件は、株式が集約できているということです。株式が分散したままでは、交渉のテーブルに就くこともできません。

少数株主・発行会社・買取会社・日本経済に貢献する「四方(しほう)よし」のスキーム

――非上場株式の現金化、分散株式の集約化は社会貢献の要素も大きいということになりますね
少数株主の皆さんは、保有株式を現金化することで収入を得ます。それを原資にモノやサービスを購入したり、中にはお子さんのマイホーム資金、お孫さんの海外留学資金に充てたりする人もいるでしょう。日本経済の6割は個人消費で支えられていますから、個人消費の底上げの一翼を担えるビジネスになるのではないかと期待しています。
――「四方(しほう)よし」のビジネスを目指しているということですが
ご承知のように「三方よし」は、「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」という、近江商人の経営理念を表す言葉です。非上場株式の現金化サービスは、少数株主、株式の発行会社、日本経済の「三方」に、その仲立ちを務める当社を加えていただいた「四方よし」のビジネスであるということです。
少数株主にとっては株式がお金に替わり、発行会社にとっては分散株式の集約化ができる。少数株主が株式売却で得たお金が消費に回ることで、日本経済の成長にもつながる。少数株主の幸せ、発行会社の幸せのお手伝いをさせていただくことで、私たちも利益を得ているということですね。
みんながハッピーになるビジネスは、よいビジネスだということだと思います。
「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷 貢樹」

喜多 洲山
(きた・しゅうざん)
喜望大地 会長、オーナー

社長歴 45 年。社長の経営安定化と安定した経営権の事業承継をミッションとする。ローカル小売業の 3 代目として年商 1 億円から50 億円まで拡大し、SBI などベンチャーキャピタル4社から出資を受けIPOを目指すも、負債 30 億円を抱え、破綻寸前の経営危機に陥る。内容証明郵便300 通、特別送達100 通、所有不動産の競売9物件、数え切れない差押など、筆舌に尽くせぬ艱難辛苦を経験する。修羅場体験の中で事業継続に奔走し、組織再編とスポンサーへの M &Aで事業を再生。その経験を生かして、18年間で約1100社の事業再生・変革に成功する。

「社長に笑顔と勇気を与え続ける!」を旗印に、悩める社長の救世主として、事業承継に重要な経営権の承継コンサルを日本全国で展開する。認定事業再生士(CTP)、立命館大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。

著書に『少数株主のための非上場株式を高価売却する方法』『あなたの会社をお救いします――事業再生総合病院』(共に幻冬舎)、『社長最後の大仕事。借金があっても事業承継』(ダイヤモンド社)、『ハイリスク金融商品に騙されるな!(共著、PHP 研究所 』 )などがある。

Webサイト:https://gmmi.jp/

イノベーションズアイに掲載しませんか?

  • ビジネスパーソンが集まるSEO効果の高いメディアへの掲載
  • 商品・サービスが掲載できるbizDBでビジネスマッチング
  • 低価格で利用できるプレスリリース
  • 経済ジャーナリストによるインタビュー取材
  • 専門知識、ビジネス経験・考え方などのコラムを執筆

詳しくはこちら