株式会社ANGEWORK 代表取締役   桐生 雄洋

卓越した技術力で大手でも困難と思われるシステムを実現してしまうソフトウェア開発企業

障害物を回避して建物検査を行うドローンの自動操縦システムや世界でも数えるほどしか存在しない歯科矯正用3Dモデリングシステムの他、魚眼レンズを利用したモーションキャプチャシステムなど、ニッチな市場の高度な技術開発に挑戦してきた株式会社ANGEWORK(エンジェワーク)。今後はこれらの技術を汎用化したサービス展開を進める予定だ。

――魚眼レンズを用いたモーションキャプチャシステムとは
モーションキャプチャと言えば、CG(コンピュータグラフィック)で人の動きを再現するために、演者の身体に多数のセンサーを取り付け、グリーンバックで動く様子などを思い浮かべる人も多いと思います。現在では、映画やアニメ、ゲーム、VTuberなどにも活用されていて、様々な手法でのモーションキャプチャが行われています。
魚眼レンズを用いたモーションキャプチャは、180度以上の広域を認識するレンズ特性を活かし、レンズを通して取得した映像からモーション情報を生成する技術です。撮影するだけでキャプチャできるので、身体にセンサーを付けたり専用の撮影機材が不要で、極端に言えば秋葉原で売っているような安価な魚眼レンズカメラさえあれば、モーションキャプチャが行えるようになります。
更に2つのカメラを用いれば、深度も計測できるので、三次元の動作をキャプチャすることも可能です。

魚眼レンズ

――既存のモーションキャプチャシステムとの違い
センサーとカメラを組み合わせた専用ハードを利用したキャプチャ技術では、Microsoft社のKinectなどが有名です。任天堂のゲーム機Switchではモーションセンサーにより身体の動きを感知して遊ぶフィットネスゲームも存在します。これらは専用機器を利用して基本的に特定の対象者1名を平面的にキャプチャするもので、歩き回って自分が撮影した映像をキャプチャするようなことは当然できません。
魚眼レンズによるキャプチャは、魚眼レンズを装備したカメラだけで不特定の人や動物、モノの動きをキャプチャできる新しいモーションキャプチャシステムと言えるんじゃないかと思っています。
――世界でも開発実例が少ない技術
魚眼レンズの演算方法は、数学と立体幾何学を組み合わせた演算が必要で、個々のレンズの曲面特性を把握し、その特性を反映させる必要があります。そのため、使用レンズのキャリブレーションが必要となりますが、逆に言えば、どのような魚眼レンズでも製品に依存することなく、キャリブレーションさえ行えば利用できるように開発しています。
これらの演算のために必要な論文や資料を世界中から漁って、ようやく演算アルゴリズムを組むことができました。この調査の際に具体的な事例はまだ数が少なく、これから発展していく技術と思われます。
――このような高度な技術を要するシステムを開発することになった経緯
詳細はお話しできないのですが、とある上場企業様から「どこに頼んでもうまく行かないので、できるところを探している」というご連絡を直接いただき、開発を請け負うこととなりました。恐らくLidar(レーザー画像検出と測距)やドローンでの自動撮影システムなど、カメラや光学解析関連の実績があることを知ってご連絡くださったのだと思います。
利用用途も詳しくはお話しできないのですが、人の行動をキャプチャし、リアルタイム分析することで、行動改善や危険察知などに活用するような感じです。
――AIを活用した分析機能
モーションキャプチャにより取得したデータをAIが学習し解析することで、なんの行動をしているか、次にどのような動きを取ることが予想されるかなど、単純に行動再現のためのキャプチャではなく、キャプチャした情報を活用することができるのがこのシステムの大きな特徴となっています。
また、大雑把にAIは2系統あります。手足や体を判定する画像解析としてのAI、蓄積した連続データから次の行動を予測したり、何をしているのかを判断したりするAIで構成されます。
――応用の可能性と今後のサービス化について
モーションキャプチャ自体はVTuberやゲーム、映画などで既に多種多様な方式が存在しており需要はあると思いますが、こういった汎用的なモーションキャプチャについては、機材等にコストがかからない方が有利かなと思ったりもしています。
ですが、どちらかと言うと、行動予測などのデータの2次活用を行ったサービスの方が主目的になると考えています。例えば、監視システムにこの機能を組み込めば、行動予測による防犯などにも使えそうですし、昨今問題となっている飲食店での悪意ある行動なども行動状態の異常を察知することで対策できたりすると思います。
他には、飛行機の操縦席などに利用すれば、異常が発生する前にアラートを出せたりする可能性が高いですし、AI学習データをロボットに組み込めば、職人作業を行えるロボットなんていうのもできそうです。
サービス化については、まずは汎用的なテンプレートを用意してサービス化することを検討しています。もし、この記事を読んで使ってみたいという企業様がいらっしゃれば、是非お声がけください。

魚眼レンズ撮影例

――モーションキャプチャ以外でも高度な技術
ドローンでは緯度経度で判断してコントロールするには間隔が大きすぎるので、画像や方角などから現在位置を演算して自動操縦を可能にするアルゴリズムを独自に開発しました。
歯科矯正のシステムでは、人の口の中をキャプチャしても3次元で歯の根っこや歯茎の形状まで全部把握することはできないので、取得した画像から3次元モデリングを行い、AIを利用して1本1本の歯や歯茎の形状をパーツとして再現し、個々のパーツを自在に操作できるアルゴリズムを開発しています。
また、ブラウザで動作させ環境非依存化を実現しました。高性能なタブレットであれば種別を問わず運用可能です。
こちらの歯科矯正のシステムは、恐らく現状では海外製のソフトが1つしかなく、当然細部まで正確に判断できるものではないので、歯科矯正に従事されている方は苦労されているのではないかと思っており、こちらもサービス展開することを検討しているところです。
桐生 雄洋(きりゅう・たけひろ)
株式会社ANGEWORK 代表取締役
大手電力会社・家電メーカーのSEを経てIT開発専門会社を設立。今も現役として日々設計実装をこなし、有名企業から駆け込み寺として、AI、ドローン、LiDAR、光学・医療機器関連他のIT開発依頼を多数請け負う。
己の器を覚るため魔術・占術を幼少より独学で研究。SEとして培った知識を活かし自社サイトにて占星術自動計算システムを公開中。先の見えない現代に占術をビジネス活用の指針として実現させる事を目指す。

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