株式会社Liquid 代表取締役 長谷川 敬起

公開日:2022年1月26日

「LIQUID eKYC」、本人確認のスタンダードへ メタバースなど新たな市場獲得目指す

2021年度の「革新ビジネスアワード」で大賞に輝いたのは、本人確認をオンラインで完結できるeKYC(イー・ケー・ワイ・シー)で国内シェアNo.1※を誇るLiquid(リキッド、東京都千代田区)だった。口座開設時の本人確認が義務づけられている金融機関の導入増に伴い、通信キャリアや古物買取、シェアリングサービス、マッチングアプリ、メタバース関連サービスなど多様な業界で利用が広がり、19年7月からサービスを提供している「LIQUID eKYC」の契約企業は100社を超えた。独自技術とそれにより獲得した信用で本人確認のスタンダードとなりつつあり、海外展開も視野に入れる。長谷川敬起代表取締役は「LIQUID eKYCの高信頼性が評価された。(インターネット上の仮想空間で交流や取引が行える)メタバースや仮想通貨、(所有権付きのデジタルデータである)NFTを扱うウォレットサービスなどでも本人確認として使われるようになる」と予想、さらなる発展を信じて疑わない。

※ITR 「ITR Market View:アイデンティティ・アクセス管理/個人認証型セキュリティ市場2021」eKYC市場:ベンダー別売上金額シェア(2019年度~2020年度予測)

――LIQUID eKYCとはどんなサービスなのか
生体認証技術により本人確認をオンラインで完結できるサービスで、ネット上での契約や口座開設時の本人確認手続きで必要な『利用者が実在する本人である』ことを確認する様々な身元確認方法を提供している。ウェブブラウザやスマートフォンアプリを使って免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を撮影、もしくはICチップの読み取りを行い、自撮りの顔写真と照合することで身元確認を行う。
――利用状況は
21年11月期末の契約企業は107社。1年前の20年11月期末の57社からほぼ倍増した。このうち金融機関など特定事業者(資金移動業やフィンテック関連を含む)は全体の6割超に当たる69社(20年11月期末は41社)だった。契約企業が1年で倍増した理由の一つが新型コロナウイルス禍。感染防止の一環としてリアル店舗からオンラインでの取引・契約が増えたことで、オンラインでの安全・安心なサービス提供のための手段としてマッチングアプリやシェアリングサービスの本人確認などに利用されている。またNTTドコモの料金プラン『ahamo(アハモ)』やKDDIの『povo(ポヴォ)』の本人確認に採用された。コロナ禍がなくてもeKYCは伸びるマーケットだが、コロナ禍が早めた。利用業種の幅も広がった。
――支持された理由は
独自のAI(人工知能)技術、生体認証技術、OCR(光学文字認識)技術などにより撮影開始から完了までの離脱率は3%以下と低い。本人確認不備率も低い。加えて、わかりやすい操作性も支持されている理由だ。個人は自撮りのしやすさを求める一方で、企業側は厳格な本人確認というクオリティーの高さを要求する。これは個人にとって撮りにくいことを意味する。つまりトレードオフの関係なのだが、これをクリアした。結果、UX観点で競合差別化を図れている。また当社独自のもので実証実験中だが、不正検知の事業者横断も支持されている。複数会社間で不正のあった利用者に関連する情報を利用し、他の事業者にそのような不正利用情報がないかを確認・検知する仕組みで、A社の不正利用者と疑わしき情報がB社にないか確認できる。賛同した97社の利用データについて、不正な情報の使い回しがないか、事業者横断で検知する。
――22年から新たなサービスも始まった
eKYCと連携した当人認証サービス『LIQUID Auth(リキッドオース)』の提供を1月から始めた。ネットバンキングやEC(電子商取引)、ATM(現金自動預払機)、オンライン試験、自動入退室管理など非対面での当人認証が必要な場合、事前にeKYCで本人確認書類との一致が確認された顔データと、取引時にスマホ端末などで新たに撮影する利用者の顔データを照合することで安全・安心な認証を実現する。照合先である身元確認済みの顔データは偽造がきわめて困難であるため、万が一、パスワードやスマホ端末など他の認証情報が詐取されても、なりすまし不正を防止できる。
――提供を始めた背景にあるのは何か
キャッシュレス化の普及やコロナ禍の影響で経済活動の非対面化が進む一方で、実在する企業やサービスを騙って個人情報を不正に取得するフィッシング詐欺が増加。コロナ禍の1年で6倍近くに膨らんでおり、本人確認におけるセキュリティ対策の強化が急務となっているからだ
――今後の展開は
22~23年にかけて金融業界における本人確認で想定される動きが3つある。1つ目は、住所や暗証番号の変更、振り込み金額の上限変更など利用者の重要情報変更時の手続き系処理に行う身元確認をeKYCによってオンライン化する動きが徐々に活発化するとみられている。2つ目は、フィッシング詐欺対策とも連動して普及が予測される次世代認証サービスの導入の機運。、ID・パスワードによる認証だけでなく、SMS(ショートメッセージサービス)認証もフィッシングによって突破されるケースが増加している。こうした中、次世代認証の本命といわれるFIDO(Fast Identity Online)などが普及するとみている。LIQUID AuthはFIDO認証と、FIDO認証の弱点になりやすい、スマホなどのFIDO認証器の初期接続時にも安全な顔認証をあわせて提供するので、不正利用を防止できる。3つ目は継続的顧客管理への取り組み。24年春を期限として完全実施が求められており、それまでに用意する必要がある。これもLIQUID Authを導入することで金融機関からの要請に応えられる
――eKYC市場は拡大の一途だ
世界的に注目が集まるメタバースやWeb3の動きにも注目している。クリエイターエコノミーとメタバースが絡んでいく中で、自分のアバター(分身)を通じて獲得したメタバース内での収益を現実世界でも利用可能な通貨に換金する場合、そのアバターに紐付く人の本人確認にLIQUID eKYCが活用されていく可能性があり、既にその文脈でのサービスの利用がミラティブ社において1/24から開始されている。また今は日本だけでサービスを提供しているが、海外展開にも乗り出す。ベトナムやフィリピン、インドネシアなどから『LIQUID eKYCを導入したい』という話が来ており、準備中だ。今期(22年11月期)中にはサービスを開始したい。

長谷川 敬起(はせがわ・ひろき)
慶應義塾大学大学院修了。2002年PwCコンサルティング入社。ドリコム取締役を経て16年ELEMENTSに入社。20年に事業子会社であるLiquid代表取締役。44歳。愛知県出身。

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