仕組み経営株式会社 代表取締役 勝亦 徹

公開日:2020年11月18日

経営の「仕組み化」で社長が交代しても事業が継続する会社を作る

社長やスタープレイヤーに依存する会社から「仕組み」で成長する会社に
――経営の仕組み化は、中小企業経営者のどんな悩みの解決に役立ちますか?
勝亦 社長が交代しても会社が成長する仕組みをどう作るかという課題に対してです。最近需要が高まっているM&Aや、国も力を入れている事業承継、あるいは社内で仕事に追われる社長の労力を軽減することに至るまで、すべて仕組み化が重要になるという点で、「仕組み経営」は汎用性の高い経営のインフラとも言えます。
――経営を仕組み化することで、何がどう変わるのですか?
勝亦 会社の規模によっても異なりますが、たとえば社長が現場で忙しく働いている場合は、仕組み化が業務の見える化につながり、自分の仕事を部下に任せて社長本来の戦略的な仕事に集中できるようになります。
また、社長の価値観や会社のコアバリュー(基本的価値観)が社内に浸透し、社長がお客様に提供したい価値観を、社員が日々の行動を通じて顧客先に伝えてくれるようになります。加えて、仕組み化によって各事業の責任範囲が明確になり、自立的な組織運営が可能になるのも大きなメリットです。
さらにもう1つ、お客様に喜ばれている「仕組み経営」の隠れたメリットがあります。社長が会社の管理部門のメンバーや次期経営者候補と一緒に仕組み作りをしていく中で、「経営者のこんな思いや理念があるからこうした仕組みができていく」ということが理解され、経営教育に役立つのです。
仕組み化は「社長の思い」を起点にしなければならない
――仕組み化に取り組む際、注意すべきことは何ですか?
勝亦 仕組み化という言葉は最近かなりメジャーになり、社内でうまく情報が共有されていないとか、仕事のやり方が皆バラバラで属人化されていることから、仕組み化の必要性に気付くのが第1フェーズです。
そこで営業の仕組み化や採用の仕組み化、集客の仕組み化というように、パーツごとに仕組みが作られることが多いのですが、これが実は問題です。
経営の仕組み化のうえで重要なのはパーツの仕組み化ではなく一貫性。会社のさまざまな仕組みをつなぐ一貫性がない限り、仕組み化はうまくいきません。仕組み化に取り組んでいるのになかなかうまくいかないという会社の多くが、そこに気付いていないのです。
――経営の仕組み化に必要な一貫性とは何ですか?
勝亦 一貫性とは、始まりから終わりまですべて1つの方針や考え方でつながっていることですが、その始まりとなるのが、いわゆる社長の思いや価値観、あるいは社長が商品やサービスを通じて提供したい価値。
そこに気付いた多くの会社が今度は何をするかと言うと、理念の復唱やクレドの制作を始めるのですが、ここで社長と現場のマインドの乖離という新たな問題が生じます。実際に、社長の思いが現場に伝わらないという状況に、日本の多くの会社が陥っています。
この社長の思いをどのように現場に落とし込むのか、という問いへの答えが、経営の仕組み化のポイントでもあります。
――一貫性の原点となる社長の思いを、社内にどう伝えればいいのでしょうか?
勝亦 社長が自分の思いを一所懸命に伝えても、現場の人たちにはなかなか理解してもらえません。その思いを、自分たちがどう行動に移せばいいのかがわからないので、理念を復唱してもすぐに忘れてしまうのです。だからある意味で、現場の人たちが理念を覚えなくてもいいように、社長の思いや理念を行動に落とし込む必要があります。
「その思いとは、具体的な行動で言えばこんなこと」だということを規定しておけば、理念を行動ベースで理解でき、現場の人たちがその行動を取り続けることで、一貫性が自然に生まれます。こうした社長の設計次第によって、仕組み化が組織に活かされ、仕組み経営がうまくいくというのがおおまかな流れです。
未来のビジョン(目的地)から逆算して仕組みを作る
――社長が交代しても事業が成長する仕組みをどう作っていくのですか?
勝亦 まず、仕組み化とは一言で言えば「良い習慣」作り。この習慣が定着すれば会社全体の良い仕組みが回り出します。習慣とは行動ですから、そこが社長の思いとつながれば良い仕組みが構築できます。
そこに到達するまでに、気付きのハードルや実行のハードルが何段階かありますが、それを1つひとつクリアしていけるように作られたのが「仕組み経営」のメソッドです。
――良い仕組みを作るためのポイントは何でしょうか?
勝亦 これはさまざまなビジネスに共通する話ですが、結局は何のための仕組み化なのか、何のために仕組みを作るのかということに尽きます。
そこで重要になるのがビジョンです。社長の思いがあって、こういう世界に私たちは行きたいという、漠然とした考え方を、いかに言語化するかが大事。「仕組み経営」では「ビジョンとはその事業の最終的な姿」と明確に定義されています。
こうしたビジョンを達成するための組織や仕組みを作るところから逆算し、必要な事柄を1つひとつ落とし込み、順番にギャップを埋めていくのが経営の仕事。そこで何が大事かと言えば、ゴールを決めることということになります。
――仕組み化にありがちな誤解にはどんなものがありますか?
勝亦 一般的に仕組み化と言うと、マニュアル化を連想すると思いますが、マニュアル化は「仕組み経営」のメソッドの最後に出てくるものです。
私たちが提供している「仕組み経営」のサポートの中では、経営者の価値観や経営者個人がどんな人生の目的を持ち、何に情熱を抱いているのかを明らかにすることが、ステップ1に登場します。
ところがじつは、その前にステップ・ゼロがあり、社長が「職人(仕事を完了させる人)の視点」から「起業家(事業の将来を見据えた展望を持つビジョナリー)の視点」に転換できているかを見極めます。「Work on your business, not in your business」、つまり会社の中で自分が働くという視点から、会社の外で自分がビジネスを創るという視点の切り替えがすべてを変える。まずは、この考え方に納得していただくことから始まります。
――仕組み化にはステップがいくつかありますね
勝亦 ステップ1は、まずは会社から離れて社長自身が自分の価値観とは何か、何に情熱を抱いているのか、自分としては人生をこう生きたい、最終的な人生の目標はこうだという個人的な夢を言語化し納得すること。
ステップ2では、社長の価値観をもとに会社のビジョンやコアバリューを構築。言い換えれば、社長個人の内面的な夢であるパーソナルドリームをベースに、ビジネスを通じてどんな価値を顧客や社会に提供していくのかという、インパーソナルドリームを描く作業になります。
ステップ2はいわば、会社としての土台作りであり、このビジョンとコアバリューを関係者全員で共有していくことが、仕組み作りの基礎になります。この部分がおろそかになると、最終的に作られるマニュアルが形骸化し、使えないものになってしまうでしょう。
ビジョンを達成するために必要な「未来の組織図」を描く
――会社のビジョンや価値観を定めたあと、仕組み化のステップはどう進むのですか?
勝亦 事業の最終的な姿であるビジョンが決まったということは、仕組み化に不可欠なゴールが定まったということになります。そこでステップ3では、そのビジョンを実現するのに必要なものとして、組織図を考えます(組織戦略)。
ここで言う組織図は現在のものではなく、ビジョン達成時の組織図。こうした未来の組織図ができあがると、現在と未来の組織や体制、人員には大きなギャップがあることに気付きます。そのギャップを埋めるには、ビジョン達成時にはどういう人材が必要で、各役職はそれぞれどんな役割を担うのかがわかっていないといけません。そこでそれぞれの役職が担う役割を、1つひとつ職務契約書を作って決めていくわけです。
先のビジョンにしろコアバリューにしろ、未来の組織図や職務契約書にしろ、一回で明確化できることはほとんどありません。それらを仮決めで作っていく中で、「これはちょっと違うな」と違和感を覚えたら、またスタートに戻るという、現在から未来をイメージする作業と、未来から現在の逆算というサイクルを回しながら、徐々に固まってくるものです。
――未来の組織図を描き、各役職も明らかになったあとは、どんな作業に入りますか?
勝亦 これはのちの採用計画にも関わってくるのですが、一連の作業を通じて、それぞれの社員がやるべき業務が、より具体的にわかってきます。そこで、組織図に記した各部門や役職、担当者ごとにどんな仕組みが必要なのかを考え、組織化すべき事柄のリストを作成します。それを仕組み化戦略と呼び、次のステップ4に位置付けています。
具体的には、たとえばこの組織を「人依存」ではなく「仕組み依存」にするには、どんな業務をどう仕組み化すればいいのかを検討する。あるいは、このビジョンを達成するためにはどういう仕組みが必要なのかを考えるというように、すべての仕組みを洗い出すことが、仕組み化戦略です。
こうした作業を経て、ようやく最終ステップの、ビジョンにつながる一貫性を持ったマニュアル作り(マニュアル化)に取りかかることができるわけです。
経営者の人生を豊かにし、未来の選択肢を提供したい
――「仕組み経営」を学べるプログラムにはどんなものがありますか?
勝亦 「仕組み経営」の構築をサポートするプログラムとして、「仕組み経営実践会」と「仕組み経営導入パッケージ」を用意しています。
「仕組み経営実践会」は、日本で唯一の仕組み化に特化した会員制のコミュニティ 。経営者を対象に、「社長の働き方改革」や「年間仕組み化戦略の立案」「社長が現場から抜けるための組織戦略」「共有ビジョンの作り方」などをテーマに毎月オンライン勉強会を実施し、仕組み化のための計画作りや仲間との情報交換を行っています。
「仕組み経営導入パッケージ」では、専門知識を持つ認定コーチが、個別の企業に向けた仕組み化支援を実施。個別にカスタマイズされたプログラムで確実な仕組み化の実現をサポートします。主に「仕組み経営」に興味はあるものの、導入はまだ早いとか、導入パッケージを利用する前に内容を詳しく知りたいという方に、実践会で勉強していただいています。
今後は「仕組み経営」の普及の担い手となるコーチの育成やパートナーの拡大に取り組んでいく考えです。具体的には、仕組み経営のメソッドを習得し自社の顧客に提供できる認定制度の「仕組み経営コーチ」トレーニングに加え、税理士や会計士などの士業専用「仕組み経営パートナー」トレーニングに力を入れていきます。
――仕組み化によって社長が現場から解放されることで得られるメリットは大きいですね
勝亦 「仕組み経営」の実践を通じて、経営者の方に、未来の選択肢と選択権を持っていただきたいと、私たちは考えています。日々事業を進めていく中で「こんなことをやりたい」と思っているにもかかわらず、「この仕事をやっているからできない」というのは、社長に選択権がない状況です。
また「人生100年時代」と言われるように、個人が長い人生を過ごすようになっていく中で、1つのビジネスを展開するだけではお客様のライフサイクル全般をカバーし切れなくなるでしょう。その意味でも、既存の企業や事業を運営しながら、次の時代にマッチした新しいビジネスを創り上げていくことは、戦略的にも重要です。
加えて言えば、経営者は会社を作るとか新しいことを考えることが好きだと思います。ですから会社を作って仕組み化し、それを手放したあと、また新たに会社を作って仕組み化し、それを手放すというプロセスを繰り返していく中で、相応の収入を得ることもできるでしょう。
そこで、ある人は「もうビジネスから離れて世界一周旅行にでも行こう」と思うかもしれません。その一方で、自分は一生働くと決め、さまざまなビジネスを展開する人もいるというように、社長自身の人生の選択肢や選択権が大きく広がります。
ビジネスの観点からだけでなく、社長自身の人生という観点からも、経営の仕組み化は非常に重要だと思いますね。
「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」
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仕組み経営株式会社のホームページ

勝亦 徹(かつまた・とおる)
経営者の独自の強み(=エグゼタイム)を活かした経営戦略構築や経営の「仕組み化」支援、外注化支援のエキスパート。自ら企業を経営する中、一般財団法人日本アントレプレナー学会で「仕組み経営」のコーチングを受け、自身の社長としての労働時間を3分の1に短縮。空いた時間を活用し、経営の仕組み化に特化し普及・啓蒙に取り組むことを目的に、仕組み経営株式会社を2019年に設立。

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