■街の薬局薬店、立ち寄りやすく
気軽に漢方煎薬を飲むことができるカウンターバー(漢方Barのイメージ)
漢方煎薬・医薬品・健康食品の製造販売を手掛けるタキザワ漢方廠は、気軽に立ち寄ることができる店舗「漢方Bar(バー)」のモデル店を6月、さいたま市の大宮駅前にオープンする。店内で健康茶や煎じ薬が飲め、薬剤師に健康相談をすることもできる拠点とする。
街の薬局薬店は経営難や後継者不足で廃業に追い込まれている。既存店が新規顧客を獲得し販売促進を図るため、漢方Barへの業態転換を促していく。医療費抑制と健康長寿を促すセルフメディケーションに対する関心が高まる中、「3時間待ち3分診療」と揶揄(やゆ)される医療機関の診療体制に不満を持つ人の需要も取り込む。
漢方Barは30~40代の女性を主なターゲットとし、バーのように気軽に入れる店舗にする。例えば、風邪気味の人がその場で煎じた葛根湯を1杯数百円で飲むことができる。店舗奥は健康相談スペースで、薬剤師に健康に関する相談をすることができる。近所の人が立ち寄る地域密着型健康相談所とする。
漢方Barの事業案は昨年、さいたま市ニュービジネス大賞の奨励賞とコラボさいたま賞をダブル受賞した。
瀧沢努社長は薬局薬店の現状に「街の薬局薬店の一部は敷居が高い、相談しにくい、暗いと、消費者が敬遠したくなる要素が多い。しかし薬局薬店は当社の取引先でもあり、このままでは共倒れになってしまう」と危機感を持っていた。
活性化のアイデアとして以前から頭の中にあった漢方Bar実現のため、2012年から薬局薬店経営者と勉強会を始めた。同社営業担当者のほか、接客に関して評価が高い薬剤師などを招いて講習を開いている。
接客に力を入れるのは、店舗を運営する上で対面相談販売を重視しているからだ。通信販売では、いつでも簡単に薬を買うことができる半面、製品の情報が十分に得られないため、間違った飲み方をしたり、必要のない薬を選んでしまう可能性もある。
その点、対面販売は顧客に体の不調や生活習慣、要望を聞いた上で、一人一人に合った薬を提案するので、適切な治療につながる。また店舗と顧客との信頼関係が構築されるので、リピーターの獲得につながる。
モデル店を手始めに、運営ノウハウを蓄積してマニュアル化を進める。その後は、個人経営の薬局薬店を中心に17年までに埼玉県内中心に50店舗を業態転換し、19年までに同社が取引している全国3000店舗のうち、半数を漢方Barにする計画。
瀧沢社長は「かつては風邪をひいたら街の薬局薬店へ行っていたが、新しい形で復活させたい」と話している。(佐竹一秀)
【会社概要】タキザワ漢方廠
▽本社=さいたま市大宮区堀の内2-623-1
▽設立=1967年3月
▽資本金=1000万円
▽売上高=40億円(2013年3月期)
▽従業員数=145人(2014年2月末現在)
▽事業内容=漢方煎薬、医薬品、化粧品、清涼飲料水、健康食品の製造および販売など
「フジサンケイビジネスアイ」