2011年の大洪水被害の影響で、移転してからまもなく2年となるカネパッケージのアユタヤ工場
カネパッケージ(タイランド)
現地素材を加工し納入
多くの日系企業が大被害を受けた2011年の大洪水。梱包(こんぽう)材メーカーのカネパッケージ(埼玉県入間市)もその一社だ。現地子会社の「カネパッケージ(タイランド)」は、壊滅的な被害を受けたアユタヤのロジャナ工業団地内にあった工場を、同じアユタヤでも比較的安全な地域に移転し、12年1月から稼働を始めた。
同社は現在、アユタヤに加えて、今年1月に操業を開始したサラブリ工場(サラブリ)の2拠点で、現地企業から調達した梱包材を元に緩衝材や小箱を組み合わせて最終製品として、日系精密機器メーカーに納入している。1日当たりの生産量は、2工場あわせて約3万5000箱。合計で220人が従事している。サラブリ工場では客先の製品も入れ込んだ形で出荷している。
国内のほか海外5カ国・10拠点をもつカネパッケージだが、タイでは梱包材の生産はせずに、部材の組み立てのみだ。その理由について、長谷川武隆社長は、「タイには先発メーカーも多く、モノづくり企業は飽和状態。後発で進出してメーカーをやるメリットは少ない。ローカルメーカーも多く、梱包材自体は現地企業から調達できるソースが多い」と説明する。
生産拠点として海外メーカーの進出が加速したタイでは、日系をはじめとする外資企業との取引などを通じて、技術力を高めた企業も少なくないため、「特にタイでは、当社の技術と設計を売ることを目標にしている」と長谷川氏は力を込める。現地企業の積極採用によって、コスト削減を実現している。
ただ、洪水によって有力取引先がタイから撤退し、現在は売り上げの約9割を日系精密機器メーカー1社に依存する“一本足打法”という厳しい状態だ。
このため、新たな取引先の開拓は急務で、長谷川氏も「当面の課題としては1社依存からの脱却をしなくてはいけない。残り1割の部分のシェアをもっと広げていきたい」と話す。
タイでは洪水の影響もあって、日系企業の工場がアユタヤなどの中部からチョンブリやラヨンといった南部地域に移っており、営業するにも距離的に遠いというネックもあるが、「それでもしっかりと営業はやるし、もっと強化していかなくてはいけない」と意気込む。
「フジサンケイビジネスアイ」