【飛躍カンパニー】ウイングル、米ウィルに出資
ウイングルが出資した米WHILL製の電動車いす。時速20キロで走行できる
ウイングル(東京都港区)は、次世代型パーソナルモビリティメーカーのWHILL(ウィル、米カリフォルニア州)に出資し、開発支援に乗り出した。ウィルが開発した機器は、車いすに取り付けるだけで時速20キロまでの走行が可能。行きたい方向に力をかけると、その向きに進むことができる点が売り物だ。国内では現時点で走ることができないが、規制が緩和された場合には取り扱いも検討するほか、将来的には東南アジアでの事業化も視野に入れる。
ウイングルは障害者対象の就労支援センターや、発達障害のある子供を支援する学習塾を運営している。こうした事業特性から、就労支援センターに通う人や同社の関係者には、車いすを利用する人が少なくない。
しかし、長谷川敦弥社長の車いすに対するイメージは「デザインが格好良くないし、速度も遅い。結果として乗りたくなくなる人が多い」。このため、新たなタイプの車いすを活用できないかという議論が、4年ほど前から生じた。
その過程で参考にしたのが眼鏡の歴史。機能重視からファッション性に力を入れた結果、おしゃれの一環として眼鏡をかける人が増えたからだ。また、素早く走行できる“ジェット車いす”への関心も高まった。
ただ、車いすは何よりも安全性が要求されるため規制が厳しく、こうした斬新な発想に基づくタイプの開発は難しい。そう痛感していた2年前に出合い、衝撃を受けたのが、ウィルが開発した機器だ。「前傾姿勢で楽しく、かっこよく乗ることができる」-。デザイン、機能性にほれ込んだ長谷川社長は「福祉機器にイノベーションを起こすことができる」と判断。ウィルへの出資、開発支援を決定した。
ウイングルでは電動車いすが普及していけば、将来は10万円を大幅に下回る価格で提供できると予測。「日本の誇れる文化として輸出にも挑戦し、途上国での普及を目指す」(長谷川社長)としている。
同社は事業を積極的に拡大。5年後には現在に比べ約4倍に当たる全国100カ所に教室を開設する計画を進めている。ウィルへの出資も事業を推進する上で重要な役割を果たす。長谷川社長は「ものづくりが格好いいといった新しい価値観を切り口に、才能を伸ばすプログラムを充実させたい」と話している。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」