「駅コレカード」(左)と駅前開発を行うゲーム画面を紹介する炭谷大輔代表取締役=東京都港区
■ローカル線の地域活性化に貢献
ローカル線の駅窓口で専用カードを購入するとスマートフォン(高機能携帯電話)のゲーム内で走る「仮想車両」を獲得できる-。そんな楽しみ方を鉄道各社と連携して実現したのが、携帯電話向けコンテンツを企画・開発する電波の杜(もり)(東京都港区)。ゲーム事業を通じ、全国からの集客に苦心する沿線地域の活性化にも貢献したい考えだ。
スマホの普及を背景に、端末の衛星利用測位システム(GPS)機能を活用した「位置情報ゲーム(位置ゲー)」が人気を集めている。この分野に新風を吹き込み続ける一人が、電波の杜の炭谷大輔代表取締役だ。
炭谷氏は、2010年の起業前から個人で位置ゲーの開発実績を積んできた。その一つが、全国の駅を訪問して記録する「全駅制覇!駅コレクション(駅コレ)」だ。
◆架空の街を開発
遊び方は簡単。まずスマホで駅コレサイトにアクセスして無料登録する。次に、トップ画面の「駅を探す」ボタンに指で触れる操作(タップ)を行う。
すると、GPSで付近の駅を自動的に探し出して駅一覧が表示される。次にプレーヤーが記録したい駅をタップすると、「駅長」になって駅前に自分だけの架空の街を開発できる。
仮に教育水準の高い地域を造りたい場合、建物一覧ページから大学や図書館などを選んで街に配置する。
駅コレは、約1万に上る全国の駅をカバーしている。このため、通勤・通学時でも遠方の旅先でも楽しめる。そうした魅力が口コミでじわりと広がり、駅コレ登録者は累計約2万2000人に達した。
この実績を土台に同社はローカル鉄道3社と共同で、位置ゲーと連動する「駅コレカード」の販売を今月から始めた。
連携先は、いすみ鉄道(千葉県大多喜町)、ひたちなか海浜鉄道(茨城県ひたちなか市)、由利高原鉄道(秋田県由利本荘市)だ。この3社が、自社で運行する車両のイラストが掲載された「駅コレカード」(500円)を駅窓口で発売した。
◆登録者100万人目標
駅コレ登録者が駅に出向いてカードを購入し、裏面に印刷された「シリアルナンバー(購入証明番号)」をスマホのゲーム画面に入力すると、イラスト車両をゲーム内に保存し、自身が開発した街のレールに走らせることができる。
駅コレカードの売り上げは、3社と電波の杜の間で分け合う。炭谷氏は「カードをきっかけにローカル鉄道の乗客が増え、沿線地域が活気づくことを期待している」と話す。
今後は鉄道各社のほか、沿線地域の商店や観光施設などとも連携し、駅コレの楽しみ方を多様化する。登録者数を100万人に引き上げることが将来的な目標だ。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」