ハート・インターナショナルのリサイクル店「ハートガレージ」(川崎市宮前区)
ハート・インターナショナル(東京都葛飾区)の物流とリサイクル事業部門は、中核の引っ越し事業にとって重要な役割を果たす。
物流事業は、全国の支店網を生かし、引っ越し荷物と法人などに依頼された荷物を組み合わせてトラックの積載量を最適化する独自手法により、低コストでの長距離引っ越しを支える。
引っ越しの際に不要な家具などを買い取るリサイクル事業は顧客満足度の向上に寄与する。両事業によって、引っ越し事業の効率化と付加価値向上を図り競争力を高めているわけだ。
物流を担当するのは、グループ会社のニッシン・ロジスティクス(埼玉県戸田市)。ハート・インターナショナルは、引っ越しはハート引越センター(東京都葛飾区)、長距離輸送はニッシンと役割分担を明確にしている。大手以外では珍しい事業構造のため、「長距離引っ越しと法人からの配送依頼の両方を低価格でこなせる強みがある」とハート・インターナショナルの澤井真昭常務は強調する。
ハートでは、引っ越しと長距離配送を組み合わせた手法を「スペース物流」と呼び、事業の効率化を追求している。長距離引っ越しの場合、倉庫のない業者は荷物を保管できず、他の運送会社などに依頼して長距離トラックを用意する必要があり、その分、コスト高になりがちだ。
対してハートは、長距離引っ越しで依頼先から引き取った荷物を支店の倉庫でいったん降ろし、長距離事業部の大型トラックに積み替える。さらに、トラックの荷台の空きスペースに企業などから引き受けた荷物を積み込んで輸送する。目的地に到着すると、引っ越し荷物は現地支店の引っ越し事業部が引き取って転居先に届ける仕組みだ。
この効率的手法により、「長距離引っ越しと物流の両方でコスト競争力が高まる」と澤井常務は自信を見せる。
一方、リサイクル事業も引っ越し事業との相乗効果をもたらす。リサイクル事業は「ハートガレージ」のブランドで展開し、引っ越しの際に顧客から買い取った中古家電や家具、冷蔵庫などを、川崎市宮前区の店舗とインターネットを通じて販売している。
通常、引っ越し事業者は顧客の不要品を引き取る場合、処分費用を要求する。だが、ハートは不要品を買い取って代金を顧客に払うため、「引っ越し費用を軽減できることから、利用者には便利な制度として評判がいい」(澤井常務)。
ハートは今後、引っ越しとリサイクル事業の相乗効果をさらに高めるため、拠点拡大も視野に入れている。(阿部賢一郎)
「フジサンケイビジネスアイ」