【Ｎｅｘｔ　Ｓｔａｇｅ】デジタルアーツ・道具登志夫社長

　「従来型の携帯電話は画面が小さく、主な用途は文字情報による交流だった。スマホは、動画や画像を不自由なく閲覧できるので、小さなパソコンと変わらない。この携帯の進化に伴い、情報サービス事業者による子供へのアプローチ法も多彩になった。さらに、実名を公開する交流サイトのフェイスブックも普及した。まさに、負の影響を受けやすい環境となった」

　－－スマホ所有率の動向は

　「当社は６月、携帯を持つ未成年者（１０～１８歳）と保護者の計１２３６人を対象にスマホ使用実態調査を行った。スマホ所有率が最も高いのは女子高校生で５４．４％だった。一方、小学生男女のスマホ所有率は１０％台と低い。しかし、小中高を問わず、従来型携帯からスマホへの買い替えが今後約２年で一気に進むだろう」

　－－その環境下での役割は

　「親は『最低限の機能でいい』と思い、子供は『最高の機能を使いたい』と願う。両者のニーズにバランス良く応えられるフィルタリングソフト『ｉ－フィルター』を家庭に広めることが当社の役割だ。このソフトは、有害サイトへのアクセスと不適切なアプリの利用を制御できる」

　－－販売方法と役立て方は

　「子供が親と一緒に携帯ショップを訪れてスマホを購入する際、店側がｉ－フィルターの利用を薦める。親が利用を申し込むと、自身でソフトをダウンロードし、見せたくないサイトを選ぶ。月額利用料は３１５円だ。機能的には、アダルトや出会い系など有害サイトの閲覧を制限するイメージが一般化しているが、それだけでない。ネットの利用時間帯や長さを管理できるほか、通販サイトは見てもいいが購入を不許可にするといった制御までできる」

　－－課題と事業目標は

　「スマホは利便性が高いだけに、子供の間で『利用制限はいやだ』と抵抗する意識が強まるだろう。そんな中、子供が喜んで利用し、親が安心できるフィルタリングソフトの実現が課題だ。２０１２年３月期の家庭向けソフト事業の売上高は２億８０００万円。近い将来、３０億円にしたい。子供の携帯利用をめぐっては、警察庁など関係省庁がフィルタリングソフトの高い普及率を目指す一方、一部の自治体がフィルタリングソフトを義務化し、親の同意による解除を求めている。この流れには賛成だが、子供の利用意欲が高まらないと真の普及はない。その姿勢でソフトの改良を継続したい」　（臼井慎太郎）

【プロフィル】道具登志夫
　どうぐ・としお　１９８８年新日本工販（現フォーバル）入社。ＴＤＫコア（現クリエイティヴ・コア）などを経て、１９９５年６月にデジタルアーツを設立し、現職。４４歳。東京都出身。

「フジサンケイビジネスアイ」